有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

ぴえ

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「情報ありがとな、マスター」
 事前に連絡があったとおり、閉店後にバーにやってきた久慈は最初の一杯に注文していたベイリーズミルクが手元に届くと、そう言った。
「上手くいったようで何よりです」
 奉日本も笑顔でそう答える。
「詳細を聞いてもいいですか?」
「あぁ、もちろん。今日は報告と祝勝会みたいなもんだからな」
 コーポ松下の件、これが全て上手くいき、落ち着いたら色々教えて欲しい――そのように奉日本は久慈にお願いしていた。可能であれば、という条件だったので反故されることも彼は考慮していたが、久慈は有栖が突撃した日から一週間経った今日、律儀にも護ってくれた。一応、彼の場合は久慈以外から情報を収集するルートを当然のように確保していたが。
「コーポ松下の権利は詩島組に渡った。マスターがユースの人間経由で松下優也にウチの弁護士を紹介してくれたから、スムーズに不当な借金はチャラになったよ。相手もこちらの存在に気づいたみたいで余計な争いを避けたんだろうな」
「コーポ松下の建物と土地代で完済の価格まで相手が譲歩した、ということですか」
「あぁ。でも、相手方が本当に欲しかったものはもう、コーポ松下には無いけどな」
 そう言って、口元を緩ませると久慈はグラスの酒を一口飲んだ。
「ということは無事回収した、ということですね」
「あぁ、マスターが言っていた通りだ。角部屋なのに、角を削ったような部屋の形状――そこだった」
 コーポ松下の詩島組と警察が取引を行っていた部屋は角部屋なのに、他の部屋と同様に直方体の部屋ではなかった。それを奉日本は有栖から聞いていたのだ。そして、その不自然さに気づいた。
 部屋の角を削ったような三角柱のような箇所――そこが何かしらのスペースではないのかと。
 その情報と裏で入手していた詩島組の当日の予定を奉日本は久慈に提供したのだ。
「やはり、そこにありましたか」
「あぁ、あったよ。詩島組と警察が繋がっていた証拠が山ほどな」
 詩島組がコーポ松下を欲しがった理由がこれだった。本来なら松下優也の父からそれごと引き継ぐ予定だったのだが……それが上手くいかなくてこのような事態になってしまった。
 一方で高良組も可能であればその証拠が欲しかった。それがあれば、公になって欲しくない警察は詩島組との関係を完全に切る為に動く。いや、その証拠の意味を失わせる為に詩島組を潰す可能性すらある。そうなれば、その関係性を厄介に感じていた高良組とすれば万々歳だ。
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