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第一章:緞帳を前に

飛田_1-1

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 虹河原と飛田は別の任務で護衛対象となる人物と顔合わせに行く為、その人物が貸し切っている棟へと向かっていた。そして、その出入口が見えたとき、
「聖先輩、イチさんです!」
 飛田が一色の姿を認識し、そう言った。
「そうですね」
 うんざりした表情でそう答えた虹河原には、合同で任務を行うユースティティア側の人材が彼等だと察したのだろう。
「ちょっと、行ってきます」
「え?」
「イチさーーーーん」
 そう告げて、飛田は虹河原を置いて一色達に駆け寄った。
「おう、飛田。警察側で対応するのはお前等か?」
 一色の視線には虹河原も当然入っていた。
「はい! イチさんと一緒の任務だなんて感動です!」
 飛田は素直に感情を包み隠さず全力で伝える。
「まぁ、俺だけやなく、他の二人もおるけどな」
 その言葉を聞いて、飛田は有栖と反保を一瞥する。そして、嫌悪の表情をこれまた包み隠さず顔に出した。
「イチさんも大変ですね。面倒そうな部下を持って」
 そして、哀れみの表情へと変えて一色に向き直ると、その発言に有栖が噛みついた。
「誰が面倒そうな部下よ」
「お前等だよ、パイナップルにたれ目マッシュルーム」
 飛田と有栖が睨み合うと、そこに反保が割って入った。
「有栖先輩。この人、キノコに負けましたよ」
「ダサっ」
「何だと、この野郎!」
 一触即発で喧嘩になりそうな雰囲気に一色が頭を抱える。すると、そこに呆れた表情で近づいてきたのは虹河原だった。
「飛田くん。明日から忙しくなるのに、ここで無駄な体力を使わないでください。嫌でもユースティティアとは合同での任務になるんですから、ここで争うのは無意味です」
 虹河原にそう言われ、飛田は不服そうに向き合っていた二人から一歩引いた。
 少しだけ場が落ち着いたところで、再び諍いが始まらないように、一色が切り出す。
「せっかくやから、全員で顔合わせに行こうや。今回の護衛対象である重要人物――アース博士のところに」
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