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第四章:三極-3-

伏見_4-2

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 ――コイツは強い!

 伏見もこれまでに強敵と戦ってきた経験はある。だからこそ有栖の強さを認めるしかなかった。
 素早く、巧い。重い攻撃も彼を倒すだけの威力がある。
 女性だからといって油断する気はなかったが、有栖自体が伏見の想像よりも上だった。
 ふと、いつの日か自分の部下がユースティティアの女性隊員に負けたことがあった。もしかしたら、彼女が相手だったのならその結果も納得がいく。

 ――それにコイツ、冷静だ。こっちに時間がないことを解って戦ってやがる。

 有栖の戦法にも、彼女の強さは表れていた。チャンスにも関わらず、時間をかけて、じっくりと戦おうとしているのは――時間がないのは伏見側だと解っているからだ。
 長引けばユースティティアにしろ、警察にしろ援軍がくる可能性がある。そうなれば不利になるのは伏見であり、誘拐も失敗に終わってしまう。

 ――失敗だけは出来ないんだ。
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