有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』

ぴえ

文字の大きさ
72 / 76
第五章:祭囃子

虹河原_5-2

しおりを挟む
「どういう意味ですか?」
「言った通りの意味だ。キミが短い時間と少ない情報でそこまでの『推察』に至ったのは賢い。しかし、それをべらべらと話すのは単なる時間の無駄だ」
 アース博士は真っ黒な目を真っ直ぐに虹河原に向ける。
「おそらく、あの一色、という男も同じ『推察』にたどり着いているだろう。しかし、きっと彼は話さない。何故なら、パソコンが破壊された時点で証拠はなく、キミの話は『推察』、いや、『妄想』の域を出れないからだ」
「くっ……」
「それを理解しているのに話すか、話さないか。それで充分、その人物の能力が解る。
 キミがきっと優秀なのだろう……では、キミは私が何故、天才と呼ばれるか解るか?」
「…………」
「ここでの沈黙は答えではない。無能の証明だ。
 教えてやろう。私が天才と呼ばれるのは幾つものゼロからイチを生み出せるからだ。
 イチをヒャクにする方法は時間を要すれば誰でも出来る。だが、ゼロからイチを生み出すのは限られた者だ。そして、それを幾つも生み出すから私は天才なんだ」
 アース博士はあざ笑うように、話を続けた。
「キミの言ったことはこの会社の技術者ならソリューションさえ考えつけば誰でも実行可能だ。なのに、キミは私だと決めつけて話す。証拠もないのに」
「…………」
「単に知識を自慢したいだけの自己満足のスピーチは耳障りだ。思わず、作業を止めてしまうほどにね。もう一度、聞こう。キミは証拠もないのに、何を長々と、仕事もせずに、『妄想』を話しているんだ? 何がしたいんだ?」
「……失礼しました」
 アース博士の言葉に、反論出来ない虹河原は、歯を食いしばり、一礼してから部屋を出て行った。
 怒りと悔しさを自分の中に閉じこめて。

「虹河原――いつだって自分が正しい、間違っていない、と思うだろう。だが、そうではない、と学ぶのは多くは激しい後悔の後だ。願わくば――キミにはその後悔が無いことを祈るよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第八話。 『過去』は消せない だから、忘れるのか だから、見て見ぬ振りをするのか いや、だからこそ―― 受け止めて『現在』へ そして、進め『未来』へ 表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

処理中です...