火星のこどもたち

ふしきの

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火星から来た少年

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 昔の海には沢山の広告が広げられていたと、おばあちゃんから聴きました。
 宇宙飛行士たちは、帰還したときに、地位と名誉と、的に降りれば景品がもらえたと聴きます。
 私たち子どもは、食べ物屋のスポンサーに降りるように願っていました。

 脱出ポットから地上に出て、近場のトローリングに見つかり、網で捕まり、引きずられ、牢獄に投獄されるまで始終喋りまくっていました。
「地上熱い、おおこれが熱い大地。そして、重力でからだが重たい。大気が濃すぎて眠い」
 
 牢獄にいる少し年長の女の子が薄目を開けて連れてこられた男の子を見つめていました。彼は見たこともないケミカルな服を着ていたのか、散々な目に遭ってボロボロにされていました。
 ここにいる子たち同様、何一つまともなものは与えられず、心も体も病んでは捨てられたり入れ換えられたりするだけでした。
「本当に欲しいものは祈っているばかりでは手に入らないよ」と、あの時のおばあちゃんがあきれて言った言葉を思い出してはしくしくと泣くだけでした。
「この子たちは、せめて親よりいいところにもらわれることだけ夢見て売られてきた子なの」

「本当に助けが欲しいとき祈っても誰も助けには来ないよ。絶望からはなにも産まれない」
 さっきまで、痛みで低い呼吸をしていた、その男の子は言ったのでした。
「だめよ、そんなことを軽々しく言ったら。小さい子はそれでも祈ることがじぶんにできる精一杯の限界なの。祈りがつかれたら、この子たちは眠るの。夜明けにはもう心が消えてなぅなっちゃう」

「そうか、そういうことか」
「なに」
「ははは、地上の重力で血がまわりすぎて、頭が知恵熱起こしたんだ。なんだこれ、かんたんなことじゃないか」


「実は弟と喧嘩しちゃったんだよね」
「は」
「なんか理由つけるのにちょうどよかった系の」
「馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの。それだけでこの長くて絶望的な所に死ぬのわかってて来るの」
「僕が未来人ならなにかできるかもだし、僕が前近代人のオールドだったら過去のデータがいかせるかもだし、なにより、僕らの父たちの産まれた大地にどんなことをしても降りてみたかったんだ」
彼は、最初の子供で父親似とても似ていて絶対に諦めない力と電算力を持っていました。



「僕は弟ほど才能がなかった。けれどもその代わり、四六時中AI先生と知恵くらべをしていた。アステロイドより、宇宙ゴミで退路と交信が普通になったことは最悪のトラブルだったけれど悪運は僕にも少しはひきついでいるらしぞ、さて、最悪を回避しながら進もう」
「何処に、安全である保証はないわ」
「なら子どものまま祈って助けを待つの、果てしない絶望と恐怖に震えて」彼は真っ直ぐ立っています。
「知恵、知識、五感と最後に残る僕らの動物的本能全部をおぎなえあえばどおってことないよ。僕の父はそうした。僕のもうひとりの父も絶望に独りで立ち向かった。独りじゃできないから二人で最後まで立ち向かった」



「名前? 幼名で発音も綺麗じゃないけど、たぶん、エスペロていったかな。280日の先祖がえりの子宮もどきで初産して、待ち疲れた父がよく言っていたから」
「は」
「僕はここに残るよ。君、僕に名前をつけてくれないか。幼年期は終わった」
 その意図を彼は知っているのかしら。名前を恋人がつけるという習わしを。だって、彼の父親は歴史に名高いトリックスターじゃなくて。
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