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水槽の子ども
アンジーとアダムス
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この国の小学校の教科書に、載っている物語があります。
『ビックスたち』あるいは『大きな猿のアンジーと中くらいに大きいアダムス』という不思議なお話です。
二ひきの猿は、果物の果樹園で、退屈な毎日をのどかに過ごしていました。
けれどもつきに数日、エキサイトな日がおとづれます。
その日は、特別な日でした。
水道の栓が外れ、空の上の配管からたんぱく質が流れ落ちる日だったのです。その日は、肥えた魚が三びき、そしてげっ歯がかご一杯、ぽとりと一体、ひとがたが落ちてきたのです。
中くらいの大きいアダムスはひとがたを頭にのせてのっしのっしとそこら中を歩き回ってみました。頭にのせても落っこちないそれは乾くとアダムスよりも熱をもていました。
アンジーは、子どもの鳴き声のようなひとがたをとても心配しましたが、乳が出る果汁ですら受け付けない死にかけの子どもの臭いに怯えて泣き出しました。
中くらいに大きいアダムスはまだ若くて脇のポケットに入れたり、みみの裏に寝かせてみたりしてみては居心地の悪いぬるっとしたとしゃぶつを吐き出すひとがたの面倒をいつまでもいつまでもみていました。
楽園の管理をするひとがたがアンジーとアダムスの大事なものをやっと見てくれましたが、ほとんど興味がないのでいつもひとがたの調子が良くなると小屋の外に投げ捨ててしまうのです。
ひとがたは不自由な足と手で四六時中傾いて真っ直ぐ立つことができませんでしたが、きれいな声で歌を奏でることはできるようでした。アンジーとアダムスと同じように果樹園の看板も読むことができるようになりました。
けれども、ひとがたはとても弱く、もろいので、アンジーとアダムスが数回目を離しただけで、倒れこんで高熱を出すものですから、その度に、楽園の管理をする小さいひとがたに身ぶり手振りで頼るしかありませんでした。
アダムスはひとがたに柔らかいこよりの服を着せてあげ、いつも自分の首のそばで眠らせたがりました。少し年寄りのアンジーは、空から落ちるたんぱく質を綺麗に解体し、食べられる部分と致死する毒物を捨てて見せては、長い爪でひとがたに指し示しました。
活きたり、死んだ目をしたりのとてもたいへんなひとがたが二ひきにはいとおしいものでした。
けれども、楽園の閉鎖が決まって、次々に弱い樹木が枯れていくのを見て、食料も固形物とバケツの水になったときにアンジーは泣き出しました。
アダムスは声帯を持っていませんでしたが、手話とタッチすると出る、コンソールキーを打つことができます。
『僕らのたいせつなひよこちゃん、僕らの支えなしで両足で立って歩けるようになった。僕らの蜜月はもうすぐ終わる、最後に楽しいパーティーをしてお別れしよう。今日はアンジーが面白いことをするよ、楽しんでね』
ひとがたは昔付けられていた病院内の識別色のひよこちゃんが自分の名前だと思って最後まで喜んでいました。
アンジーはその日、機械操作室でコンロを使いました。
調理器具の音にひよこちゃんは泣き出しましたが、肉の焼ける匂いとわずかな調味料がパラパラ落ちて跳ねてバチバチいうとこの子が満面の笑みで笑ったのです。
『お前はすぐに具合が悪くなるたちみたいだからよく火を通して食べるんだよ、わずかに少食に、そしてゆっくりと味わってお食べ』
それよりもひよこちゃんは、一瞬でブレーカーが落ちて地が揺れたことにビックリしました。
「沈黙の時間……補助電力が切り替わって主電力までのタイムラグ」
ひよこちゃん、ひとがたのひよこちゃんは楽園の門を堂々と抜ける決心がついた日でした。
『ビックスたち』あるいは『大きな猿のアンジーと中くらいに大きいアダムス』という不思議なお話です。
二ひきの猿は、果物の果樹園で、退屈な毎日をのどかに過ごしていました。
けれどもつきに数日、エキサイトな日がおとづれます。
その日は、特別な日でした。
水道の栓が外れ、空の上の配管からたんぱく質が流れ落ちる日だったのです。その日は、肥えた魚が三びき、そしてげっ歯がかご一杯、ぽとりと一体、ひとがたが落ちてきたのです。
中くらいの大きいアダムスはひとがたを頭にのせてのっしのっしとそこら中を歩き回ってみました。頭にのせても落っこちないそれは乾くとアダムスよりも熱をもていました。
アンジーは、子どもの鳴き声のようなひとがたをとても心配しましたが、乳が出る果汁ですら受け付けない死にかけの子どもの臭いに怯えて泣き出しました。
中くらいに大きいアダムスはまだ若くて脇のポケットに入れたり、みみの裏に寝かせてみたりしてみては居心地の悪いぬるっとしたとしゃぶつを吐き出すひとがたの面倒をいつまでもいつまでもみていました。
楽園の管理をするひとがたがアンジーとアダムスの大事なものをやっと見てくれましたが、ほとんど興味がないのでいつもひとがたの調子が良くなると小屋の外に投げ捨ててしまうのです。
ひとがたは不自由な足と手で四六時中傾いて真っ直ぐ立つことができませんでしたが、きれいな声で歌を奏でることはできるようでした。アンジーとアダムスと同じように果樹園の看板も読むことができるようになりました。
けれども、ひとがたはとても弱く、もろいので、アンジーとアダムスが数回目を離しただけで、倒れこんで高熱を出すものですから、その度に、楽園の管理をする小さいひとがたに身ぶり手振りで頼るしかありませんでした。
アダムスはひとがたに柔らかいこよりの服を着せてあげ、いつも自分の首のそばで眠らせたがりました。少し年寄りのアンジーは、空から落ちるたんぱく質を綺麗に解体し、食べられる部分と致死する毒物を捨てて見せては、長い爪でひとがたに指し示しました。
活きたり、死んだ目をしたりのとてもたいへんなひとがたが二ひきにはいとおしいものでした。
けれども、楽園の閉鎖が決まって、次々に弱い樹木が枯れていくのを見て、食料も固形物とバケツの水になったときにアンジーは泣き出しました。
アダムスは声帯を持っていませんでしたが、手話とタッチすると出る、コンソールキーを打つことができます。
『僕らのたいせつなひよこちゃん、僕らの支えなしで両足で立って歩けるようになった。僕らの蜜月はもうすぐ終わる、最後に楽しいパーティーをしてお別れしよう。今日はアンジーが面白いことをするよ、楽しんでね』
ひとがたは昔付けられていた病院内の識別色のひよこちゃんが自分の名前だと思って最後まで喜んでいました。
アンジーはその日、機械操作室でコンロを使いました。
調理器具の音にひよこちゃんは泣き出しましたが、肉の焼ける匂いとわずかな調味料がパラパラ落ちて跳ねてバチバチいうとこの子が満面の笑みで笑ったのです。
『お前はすぐに具合が悪くなるたちみたいだからよく火を通して食べるんだよ、わずかに少食に、そしてゆっくりと味わってお食べ』
それよりもひよこちゃんは、一瞬でブレーカーが落ちて地が揺れたことにビックリしました。
「沈黙の時間……補助電力が切り替わって主電力までのタイムラグ」
ひよこちゃん、ひとがたのひよこちゃんは楽園の門を堂々と抜ける決心がついた日でした。
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