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Ⅰ章 予兆
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そもそもとして、そんな行為が近所で起きていれば止めてやろうと言うのが人情というものだ。
人類の間引きをしている僕が人情を語ろうというのはヘソで茶を沸かしかねないふざけた言い分ではあるが、ほら、超常の存在に脅迫されてのことだから。やむを得ないというか、重ねて言うけど、別に僕がやらなくても別の人間、もしくは何かに依頼されるだけだし。それなら平和的な元日本人がやる方がまだ良い……はず?多分。
閑話休題。
話を戻すが、リアちゃんの母親の酷さを見れば誰もが見兼ねて説教の一つでも喰らわせてやろうと考える。が、彼女に下手に物申せない理由があった。
それは彼女の名前から察せる。
彼女の名前はレムザ・ホホイと言うのだが、このホホイと言う家名が問題だ。
この世界では日本のように誰もが家名を持つし、なんならミドルネームもある。名前を複雑にしないと人口が沢山なこの世界では、同姓同名が沢山出てきてしまうために。
それらの名前は重複することも珍しくない。なにせ人口が多いからね。
が、ホホイと言う名は重複しない。
何故ならこの辺境の領主の家名だからである。
そう、リアちゃんの母親であるレムザは貴族令嬢なのだ。
しかもこのホホイ家。あまり評判が良くない。ハッキリそうだと分かるようだと沢山の人々によって物量的にアレされてしまうので貴族だからとなんでもかんでも無茶が通るわけではないため、あそこは悪徳領主だと確定するほどの不祥事はない…かと言って良い噂を聞く訳でもない。レムザ・ホホイを見ればさもありなん。
むしろ悪い噂を良く聞く。逆に言うと噂レベルでしかないのだが、その噂に一つ。民衆が恐れるものがある。
「レムザに睨まれたらここでは生きていけない」
という噂だ。もちろんその噂に明確な証拠はない。が、噂話が立つに足る、なんらかの事件やら不可解な点が見られたからこそそんな噂話が出たと考えられる。そしてそれを恐れてかこの辺境で明確に彼女に逆らう人間はいない。
重ねて言うが領主だからと好き勝手にできるわけではない。好き勝手にはできないが、噂程度で反逆できるほど軽い存在でもない。
ついでに言えば、ある程度の悪いことならやってもみ消すくらいは出来なくもないと言うことだ。
タチの悪いのが彼女は悪辣ではあるものの、別に犯罪行為にふける訳ではない。近所の鼻につく高慢ちきな美人という立ち位置でしかないために、過剰にああだこうだと言うほどではないところがまた、いやらしい。
いっそのこと犯罪でも犯してくれれば即座に追放ないしは牢屋に打ち込めるものを。とはうちの反対側に住んでいるちょっと見た目がアレな、陰気なお姉さんの言葉である。
嫉妬かな?
長々と語ったが、レムザが目の敵にしている娘であるリアちゃんに下手に味方しようとするとレムザに睨まれる。
そのために、リアちゃんは周りの住民に気の毒に、薄々虐待を受けていると思われていても放置されているのだ。
我が家の母もその1人。なんとかしてやりたいと思うものの、やはり我が身が大切なもの。母の場合、まだ幼い息子である僕がいるのだからなおさら下手なことはできない。
残念なことに日本ほど人権意識が高い社会ではないため、虐待行為は犯罪とはならないのもまたそれらの傍観行為を助長していた。
なおのこと可哀想な話となる。
そんな中、救いの手を差し伸べるヒーローがいた。
僕だ。
僕には特殊な力がある。
魔王クリエイターと言う名の力が。
これによって、まず僕はレムザ・ホホイに対して魔王クリエイターを使用した。
彼女を優しい母親に変えてしまおうと思ってのこと。
ぶっちゃけ洗脳行為でしかない。
悪辣だから洗脳行為をしていい、とはならないがまあ、人類の間引きをしている僕が今更何をという感じで、やってしまった。
結果。
なんの成果も得られませんでした。
魔王クリエイターの容量が性格部分を変えるのに、足らなかったためだ。
どうも魔王クリエイターの能力制限の一つ。極端に違う存在へは弄れないという縛りに引っかかったようである。
より厳密に言えば可能ではあるが、それをしようとするとかなりの容量を喰うということだ。
例えば、その辺で捕まえた虫を人間にして身の回りの世話をさせるということはできない。
本来、人間の容量はかなり余裕がある。その容量全てを使っても矯正が出来ないとは、どれほど性格が悪いのか。
しかしここで諦めたら、リアちゃんは救われない。ということでアプローチの仕方を変える事にした。
リアちゃん側を魔王化して、虐待に対して何ら痛痒も感じないようにしてやろうとのことだ。
早速僕は、リアちゃんに声を掛けて友達になりつつも彼女の体をいじり倒した。
結果、こうなる。
名前 リア
生物強度 32
スキル 超頑健 超再生 美容 聡明 膂力増大 魔力増大 気配察知
驚異の魔王ヨトウガ越えである。
いや、まあ人間なら大体30前後になると思う。
スキルも恐らく特別多かったり、珍しかったりするわけではないはず。
小さなヨトウムシと、かなり体の大きな人間と比較するのが間違っているのさ。
スキル構成は物理的なダメージを気にしなく済むように、かつより健やかに過ごせるようにと考えてのことだ。
聡明、膂力増大、魔力増大、気配察知の四つはこれから綺麗に育った後に悪漢から襲われやすくなるであろう彼女が身を守りやすいようにと与えたもの。
なんなら母親に対しても使える。
生物強度を上げるだけでかなり身体能力が上がるが、それに合わせて腕力やら魔法やらを使えるようになったのだから将来は一端の戦士にだってなれる。
実に満足な出来であった。
こうして彼女は救われた、少なくとも虐待に怯える日々に終止符が打たれ、今までより格段に過ごしやすくなったと思われたのも束の間。
些か看過出来ない問題があった。
スキル聡明の効果が意外と高くて、僕の力がバレた。
7歳の子供相手なら特に何しようとバレないだろう、見た目に出るわけではないのだからなおのこと。仮にバレても適当にすっとぼけて仕舞えばいい。そう考えていた。
ところが、まるで誤魔化しが通じなかった。聡明の効果がやばすぎた。
人類の間引き云々までは流石にバレなかったものの、僕の特殊な力はバレてしまったわけだ。
当初の予定ではこの力は誰にもバラさないつもりであった。
だって、そんな力があると分かれば魔王ヨトウガと僕の力を結びつけてくる人が出てくる。
なんならリアちゃんが魔王ヨトウガのことを知れば人類の間引きに関する話すら推理するかも。そう思わせるほどに簡単にバレてしまった。
苦肉の策として、僕の力は人間のみに作用すると口にしておいたが、誤魔化せたかは分からない。
いずれ彼女が僕の前に立ち塞がるかも知れないと思うと夜しか眠れない。
もとい、あまり気にしないで後回しにした。
だってせっかく救ったのに、知ってはならない秘密を知ったがゆえに「恨みはないが死んでもらう」をするのは些か以上に気が引けた。
まあ、バレないかも知れないし、あまり深く考えないでおこう。
彼女への対処は未来の自分に任せる。
長々と話したが、その間に彼女の家に着いた。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
「ひぇっ」
玄関に入った瞬間、すでに間近にいた彼女。
可愛らしいオカッパ頭に無表情でありながらも整い過ぎて現実味を感じさせない相貌からは、何の感情も伺えない。
この無表情は初めて会った時から今に至るまで未だに治っておらず、何某かの精神的な問題かなと下手に弄ろうにも弄れないのが悩ましいところ。
まあ、母親から貰えない分も含めて僕がたっぷり愛情をこめて接していればいずれ良くなるんじゃないかな?と信じたい。
「えと、玄関でずっと待ってたの?」
「うん」
「あっ、そう…」
今日来るかは分からなかったと思うのだが、まあ行く日や時間は大体決まっている。
待ってたとしても不思議ではない。
…ことはない。なんでこの子待ってたん?
人類の間引きをしている僕が人情を語ろうというのはヘソで茶を沸かしかねないふざけた言い分ではあるが、ほら、超常の存在に脅迫されてのことだから。やむを得ないというか、重ねて言うけど、別に僕がやらなくても別の人間、もしくは何かに依頼されるだけだし。それなら平和的な元日本人がやる方がまだ良い……はず?多分。
閑話休題。
話を戻すが、リアちゃんの母親の酷さを見れば誰もが見兼ねて説教の一つでも喰らわせてやろうと考える。が、彼女に下手に物申せない理由があった。
それは彼女の名前から察せる。
彼女の名前はレムザ・ホホイと言うのだが、このホホイと言う家名が問題だ。
この世界では日本のように誰もが家名を持つし、なんならミドルネームもある。名前を複雑にしないと人口が沢山なこの世界では、同姓同名が沢山出てきてしまうために。
それらの名前は重複することも珍しくない。なにせ人口が多いからね。
が、ホホイと言う名は重複しない。
何故ならこの辺境の領主の家名だからである。
そう、リアちゃんの母親であるレムザは貴族令嬢なのだ。
しかもこのホホイ家。あまり評判が良くない。ハッキリそうだと分かるようだと沢山の人々によって物量的にアレされてしまうので貴族だからとなんでもかんでも無茶が通るわけではないため、あそこは悪徳領主だと確定するほどの不祥事はない…かと言って良い噂を聞く訳でもない。レムザ・ホホイを見ればさもありなん。
むしろ悪い噂を良く聞く。逆に言うと噂レベルでしかないのだが、その噂に一つ。民衆が恐れるものがある。
「レムザに睨まれたらここでは生きていけない」
という噂だ。もちろんその噂に明確な証拠はない。が、噂話が立つに足る、なんらかの事件やら不可解な点が見られたからこそそんな噂話が出たと考えられる。そしてそれを恐れてかこの辺境で明確に彼女に逆らう人間はいない。
重ねて言うが領主だからと好き勝手にできるわけではない。好き勝手にはできないが、噂程度で反逆できるほど軽い存在でもない。
ついでに言えば、ある程度の悪いことならやってもみ消すくらいは出来なくもないと言うことだ。
タチの悪いのが彼女は悪辣ではあるものの、別に犯罪行為にふける訳ではない。近所の鼻につく高慢ちきな美人という立ち位置でしかないために、過剰にああだこうだと言うほどではないところがまた、いやらしい。
いっそのこと犯罪でも犯してくれれば即座に追放ないしは牢屋に打ち込めるものを。とはうちの反対側に住んでいるちょっと見た目がアレな、陰気なお姉さんの言葉である。
嫉妬かな?
長々と語ったが、レムザが目の敵にしている娘であるリアちゃんに下手に味方しようとするとレムザに睨まれる。
そのために、リアちゃんは周りの住民に気の毒に、薄々虐待を受けていると思われていても放置されているのだ。
我が家の母もその1人。なんとかしてやりたいと思うものの、やはり我が身が大切なもの。母の場合、まだ幼い息子である僕がいるのだからなおさら下手なことはできない。
残念なことに日本ほど人権意識が高い社会ではないため、虐待行為は犯罪とはならないのもまたそれらの傍観行為を助長していた。
なおのこと可哀想な話となる。
そんな中、救いの手を差し伸べるヒーローがいた。
僕だ。
僕には特殊な力がある。
魔王クリエイターと言う名の力が。
これによって、まず僕はレムザ・ホホイに対して魔王クリエイターを使用した。
彼女を優しい母親に変えてしまおうと思ってのこと。
ぶっちゃけ洗脳行為でしかない。
悪辣だから洗脳行為をしていい、とはならないがまあ、人類の間引きをしている僕が今更何をという感じで、やってしまった。
結果。
なんの成果も得られませんでした。
魔王クリエイターの容量が性格部分を変えるのに、足らなかったためだ。
どうも魔王クリエイターの能力制限の一つ。極端に違う存在へは弄れないという縛りに引っかかったようである。
より厳密に言えば可能ではあるが、それをしようとするとかなりの容量を喰うということだ。
例えば、その辺で捕まえた虫を人間にして身の回りの世話をさせるということはできない。
本来、人間の容量はかなり余裕がある。その容量全てを使っても矯正が出来ないとは、どれほど性格が悪いのか。
しかしここで諦めたら、リアちゃんは救われない。ということでアプローチの仕方を変える事にした。
リアちゃん側を魔王化して、虐待に対して何ら痛痒も感じないようにしてやろうとのことだ。
早速僕は、リアちゃんに声を掛けて友達になりつつも彼女の体をいじり倒した。
結果、こうなる。
名前 リア
生物強度 32
スキル 超頑健 超再生 美容 聡明 膂力増大 魔力増大 気配察知
驚異の魔王ヨトウガ越えである。
いや、まあ人間なら大体30前後になると思う。
スキルも恐らく特別多かったり、珍しかったりするわけではないはず。
小さなヨトウムシと、かなり体の大きな人間と比較するのが間違っているのさ。
スキル構成は物理的なダメージを気にしなく済むように、かつより健やかに過ごせるようにと考えてのことだ。
聡明、膂力増大、魔力増大、気配察知の四つはこれから綺麗に育った後に悪漢から襲われやすくなるであろう彼女が身を守りやすいようにと与えたもの。
なんなら母親に対しても使える。
生物強度を上げるだけでかなり身体能力が上がるが、それに合わせて腕力やら魔法やらを使えるようになったのだから将来は一端の戦士にだってなれる。
実に満足な出来であった。
こうして彼女は救われた、少なくとも虐待に怯える日々に終止符が打たれ、今までより格段に過ごしやすくなったと思われたのも束の間。
些か看過出来ない問題があった。
スキル聡明の効果が意外と高くて、僕の力がバレた。
7歳の子供相手なら特に何しようとバレないだろう、見た目に出るわけではないのだからなおのこと。仮にバレても適当にすっとぼけて仕舞えばいい。そう考えていた。
ところが、まるで誤魔化しが通じなかった。聡明の効果がやばすぎた。
人類の間引き云々までは流石にバレなかったものの、僕の特殊な力はバレてしまったわけだ。
当初の予定ではこの力は誰にもバラさないつもりであった。
だって、そんな力があると分かれば魔王ヨトウガと僕の力を結びつけてくる人が出てくる。
なんならリアちゃんが魔王ヨトウガのことを知れば人類の間引きに関する話すら推理するかも。そう思わせるほどに簡単にバレてしまった。
苦肉の策として、僕の力は人間のみに作用すると口にしておいたが、誤魔化せたかは分からない。
いずれ彼女が僕の前に立ち塞がるかも知れないと思うと夜しか眠れない。
もとい、あまり気にしないで後回しにした。
だってせっかく救ったのに、知ってはならない秘密を知ったがゆえに「恨みはないが死んでもらう」をするのは些か以上に気が引けた。
まあ、バレないかも知れないし、あまり深く考えないでおこう。
彼女への対処は未来の自分に任せる。
長々と話したが、その間に彼女の家に着いた。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
「ひぇっ」
玄関に入った瞬間、すでに間近にいた彼女。
可愛らしいオカッパ頭に無表情でありながらも整い過ぎて現実味を感じさせない相貌からは、何の感情も伺えない。
この無表情は初めて会った時から今に至るまで未だに治っておらず、何某かの精神的な問題かなと下手に弄ろうにも弄れないのが悩ましいところ。
まあ、母親から貰えない分も含めて僕がたっぷり愛情をこめて接していればいずれ良くなるんじゃないかな?と信じたい。
「えと、玄関でずっと待ってたの?」
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