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Ⅱ章 進撃
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「ターゲット発見。攻撃許可を」
『許可する。軍上層部は市民の被害を考慮しないことを決定した。C区画からF区画までは周辺被害を考慮しないものとする。侵入者をそれ以外の区画に入れるな』
「了解」
大都市アルファニカ。
魔王ゾウムシによる無視できないほどの被害を受け、アルファニカの軍人達はまだ生きている市民ををある程度無視してでも魔王ゾウムシを殺すことを決定した。
その結果、魔王ゾウムシの元には特殊な鎧を着込んだ特殊部隊が派遣されたのだ。
この世界では地理条件や気風、歴史などによって7つある大国それぞれがそれぞれの発展を遂げた。
エルルが住まう農業国家プラベリアは農業に特に力を入れて、生き残った大国であり、魔王ヨトウガが攻め込んだプラベリアから北にあるサドラン帝国は巨大兵器を開発、製造した。
南のアルマ共和国では携行兵器たる魔科学武器が発展しており、現在、魔王ゾウムシが攻め込んでいる西のユミール公国は鎧を発展させた。
魔法技術と科学技術をふんだんに使ったその鎧を公国ではアームズシェルと呼んだ。
このアームズシェルだが、鎧とはいったが見た目は完全にロボットのソレで、装着者である人間より2回りほど大きいものとなっている。
SFアニメや小説に良く登場するパワードスーツのようなものであり、ユミール公国はこれを量産、一部の特殊な訓練をした兵士に装備させていたのである。
大都市アルファニカは国境をぐるりと囲うように農業国家プラベリアからサドラン帝国に向けて建設された城塞都市に近い側面もあって、アームズシェルを使用する特殊部隊が常駐していた。
そんな彼らは街に攻め入った魔王ゾウムシ確認。
破壊活動を続けている魔王ゾウムシへと攻撃を開始した。
「全員で一気に叩く。準備はいいな?
…発射」
彼らは5人いて、5人全員が多少距離のある場所から魔王ゾウムシを視認。
5人は両腕から巨大な銃身を出現させる。
アームズシェルに標準搭載されている電磁誘導狙撃銃である。
もちろん魔法と科学の二つの技術が使われているそれは地球のそれよりコンパクトでありながらも威力、精度ともに上であり、やろうと思えば一度に4発の弾丸を連射できるという恐ろしい兵器である。
一度発射すると、新たに弾を込めるのに両腕の装甲ごと銃機構を取りはずさないとならないため、戦闘中は4発のみ撃てる使い捨てに近い兵装ではある。
しかし1発1発の威力が非常に高く、今までは第2射を必要としなかった。
人間相手ならば1発だけでも当てれば即死、ないしは致命傷な上、精度も高いため両腕合わせて8発もあれば十分だったのである。
しかし。
「はぁっ!?まじかよ…攻撃失敗。指示は?」
『なんだと?避けられたのか?』
「いんや。弾かれた。初めて見たぜ。電磁誘導狙撃銃が通じなかった相手をよ」
『なん…だと?対象は本当に生物か?』
「さて。どうだかね」
五人の電磁誘導狙撃銃の一斉射撃。
総数にして40発分の電磁誘導弾を食らっておきながら全てを弾き、ケロリとして彼らの方へ視線を向ける魔王ゾウムシ。
明らかに生物でない見た目に少々戸惑っているのか魔王ゾウムシは動かないまま。
攻撃をしてこない彼女を警戒しながらも頭部を覆う鎧兜兼ヘルメットから指揮者の指示を待つ、特殊部隊の隊長。
『白兵戦兵装に切り替える。全員、狙撃銃は分離破棄しろ。…オメガとベータは大腿部に収納してある超振動ロングナイフを接続して使え。隊長とガンマ、アルファは肩に収納してある魔科学武器の魔導ナイフを接続して使う。
電磁誘導弾を弾くなど普通では考えられん。…小型化するにあたって、電磁誘導狙撃銃は魔法技術がかなりの割合を占めている…おそらくだが魔力に対する撥水性のようなものが奴には備わっていてソレで弾かれたのだろう。コレでそれを見極めろ』
「了解。各自指示は聞こえたな?
準備できたら攻撃を開始する」
隊長らしき人物の言葉に頷く、4人の兵士達。
それを見て5人は魔王ゾウムシへ接近を始めた。
魔王ゾウムシは依然として動かなかった。
彼女は…彼女に限らず、エルルによって魔王にされた生物は知能が跳ね上がる。
スキルではなく、生物強度が上がることで発生する身体能力補正が知能にまで作用するためだ。
しかし、あくまで上がるのは知能であって知識ではない。
知らないことは知らないままで、元が植物の害虫の一種であるヤサイゾウムシに過ぎない魔王ゾウムシは目の前に出てきた全身に鎧を纏った人間達を見て、人間なのかが分からなかった。
魔王化処理を施された魔王ヨトウガ、芝犬もどき、魔王蝶々、魔王ゾウムシ達には、人間以外は襲ってはいけない、捕食してはいけないとエルルに言われている。
これは魔王達がその辺の動植物を好き勝手に食べるとただでさえ、さまざまな動物が絶滅ないしは絶滅が危惧されているというのに其れを助長しかねないからである。
だからこそ魔王ゾウムシは目の前に現れた5人の人間達を襲っていいのかが判断つかなかったのである。
その迷いが特殊部隊の5人に先制攻撃を許してしまった。
彼らが振るうのは両腕にあった銃身を取り外して、取り外した部分に付けた特殊な剣。
非常に微細にかつ凄まじい速度で震えながら振るわれる超振動ロングナイフは、微細な振動によって対象の細胞や分子の結合そのものを破砕するように設計された原理上、切れないものはない科学技術の極地にあるナイフである。
その一方で魔導ナイフは魔法の極地にある兵器で、刀身に非常に高密度の魔力を纏いながら振るわれる。
魔力は別種の魔力同士で反発し合い、相殺するという性質を持つ。魔法由来の防御膜に魔導ナイフを振るえば非常に高密度の魔力によって切り裂くことができる。
おまけにアームズシェルによって発揮される膂力は厚さ5センチの鋼鉄を素手で楽にネジ切れるほど。
その膂力から繰り出される超振動ロングナイフと魔導ナイフが魔王ゾウムシに襲いかかる。
すわ魔王ゾウムシの危機、かに思われた。
きぃん。
5人が振るう武器が弾かれ、折れて飛んだ。
「はぁっ!?」
「っ!?ありえねぇっ!!」
「折れやがったぞ!?」
「硬過ぎだろっ!?こいつっ!!」
「がっでむっ!!」
残念ながら彼らの武器では刃が立たない。
なぜならば魔王ゾウムシのスキルによって発達した外骨格は複合タイプである。
彼女の持つスキル超外骨格は外骨格を発達させて物理的な衝撃や傷に強くなる。
大砲を受けたとしても弾くことができる装甲を誇るがこれだけであれば超振動ロングナイフで切り裂けたであろう。
スキル超魔力皮膜は皮膜とある通り、表面を覆うだけであれば超振動ロングナイフで切り抜く、ということが出来たかもしれない。
「こいつは…やばいな」
『どうした?何があった!?どちらも通じなかったのか!?』
「…通じず。装備は破損した」
『ばかなっ…魔力に対して高い反発率を持つ皮膜のようなもので電磁誘導弾を弾いたのではないのか?魔導ナイフは通じないとは予想していたが…超振動ロングナイフも弾かれたというのか?』
「…奴の表皮は物理的に硬いのはもちろんだが、魔力を反発…相殺する性質も併せ持つらしい。どちらもそもそもの初撃が通じなかった」
超魔力皮膜は体に魔力でできた攻撃を減衰させる皮膜を付ける、というスキルではなかった。被膜が体を包む、と言うわけではないのだ。元からあるに魔力皮膜にあたる機能を追加する、という表現が正しい。
つまり魔王ゾウムシの外骨格は物理的攻撃にも魔力的攻撃にも区別なく高い防御力を発揮する。と言うことである。
『なんてこった…そんなのをどう倒せば良いんだ』
5人と通信していた指揮官の嘆きが虚しく響いた。
『許可する。軍上層部は市民の被害を考慮しないことを決定した。C区画からF区画までは周辺被害を考慮しないものとする。侵入者をそれ以外の区画に入れるな』
「了解」
大都市アルファニカ。
魔王ゾウムシによる無視できないほどの被害を受け、アルファニカの軍人達はまだ生きている市民ををある程度無視してでも魔王ゾウムシを殺すことを決定した。
その結果、魔王ゾウムシの元には特殊な鎧を着込んだ特殊部隊が派遣されたのだ。
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南のアルマ共和国では携行兵器たる魔科学武器が発展しており、現在、魔王ゾウムシが攻め込んでいる西のユミール公国は鎧を発展させた。
魔法技術と科学技術をふんだんに使ったその鎧を公国ではアームズシェルと呼んだ。
このアームズシェルだが、鎧とはいったが見た目は完全にロボットのソレで、装着者である人間より2回りほど大きいものとなっている。
SFアニメや小説に良く登場するパワードスーツのようなものであり、ユミール公国はこれを量産、一部の特殊な訓練をした兵士に装備させていたのである。
大都市アルファニカは国境をぐるりと囲うように農業国家プラベリアからサドラン帝国に向けて建設された城塞都市に近い側面もあって、アームズシェルを使用する特殊部隊が常駐していた。
そんな彼らは街に攻め入った魔王ゾウムシ確認。
破壊活動を続けている魔王ゾウムシへと攻撃を開始した。
「全員で一気に叩く。準備はいいな?
…発射」
彼らは5人いて、5人全員が多少距離のある場所から魔王ゾウムシを視認。
5人は両腕から巨大な銃身を出現させる。
アームズシェルに標準搭載されている電磁誘導狙撃銃である。
もちろん魔法と科学の二つの技術が使われているそれは地球のそれよりコンパクトでありながらも威力、精度ともに上であり、やろうと思えば一度に4発の弾丸を連射できるという恐ろしい兵器である。
一度発射すると、新たに弾を込めるのに両腕の装甲ごと銃機構を取りはずさないとならないため、戦闘中は4発のみ撃てる使い捨てに近い兵装ではある。
しかし1発1発の威力が非常に高く、今までは第2射を必要としなかった。
人間相手ならば1発だけでも当てれば即死、ないしは致命傷な上、精度も高いため両腕合わせて8発もあれば十分だったのである。
しかし。
「はぁっ!?まじかよ…攻撃失敗。指示は?」
『なんだと?避けられたのか?』
「いんや。弾かれた。初めて見たぜ。電磁誘導狙撃銃が通じなかった相手をよ」
『なん…だと?対象は本当に生物か?』
「さて。どうだかね」
五人の電磁誘導狙撃銃の一斉射撃。
総数にして40発分の電磁誘導弾を食らっておきながら全てを弾き、ケロリとして彼らの方へ視線を向ける魔王ゾウムシ。
明らかに生物でない見た目に少々戸惑っているのか魔王ゾウムシは動かないまま。
攻撃をしてこない彼女を警戒しながらも頭部を覆う鎧兜兼ヘルメットから指揮者の指示を待つ、特殊部隊の隊長。
『白兵戦兵装に切り替える。全員、狙撃銃は分離破棄しろ。…オメガとベータは大腿部に収納してある超振動ロングナイフを接続して使え。隊長とガンマ、アルファは肩に収納してある魔科学武器の魔導ナイフを接続して使う。
電磁誘導弾を弾くなど普通では考えられん。…小型化するにあたって、電磁誘導狙撃銃は魔法技術がかなりの割合を占めている…おそらくだが魔力に対する撥水性のようなものが奴には備わっていてソレで弾かれたのだろう。コレでそれを見極めろ』
「了解。各自指示は聞こえたな?
準備できたら攻撃を開始する」
隊長らしき人物の言葉に頷く、4人の兵士達。
それを見て5人は魔王ゾウムシへ接近を始めた。
魔王ゾウムシは依然として動かなかった。
彼女は…彼女に限らず、エルルによって魔王にされた生物は知能が跳ね上がる。
スキルではなく、生物強度が上がることで発生する身体能力補正が知能にまで作用するためだ。
しかし、あくまで上がるのは知能であって知識ではない。
知らないことは知らないままで、元が植物の害虫の一種であるヤサイゾウムシに過ぎない魔王ゾウムシは目の前に出てきた全身に鎧を纏った人間達を見て、人間なのかが分からなかった。
魔王化処理を施された魔王ヨトウガ、芝犬もどき、魔王蝶々、魔王ゾウムシ達には、人間以外は襲ってはいけない、捕食してはいけないとエルルに言われている。
これは魔王達がその辺の動植物を好き勝手に食べるとただでさえ、さまざまな動物が絶滅ないしは絶滅が危惧されているというのに其れを助長しかねないからである。
だからこそ魔王ゾウムシは目の前に現れた5人の人間達を襲っていいのかが判断つかなかったのである。
その迷いが特殊部隊の5人に先制攻撃を許してしまった。
彼らが振るうのは両腕にあった銃身を取り外して、取り外した部分に付けた特殊な剣。
非常に微細にかつ凄まじい速度で震えながら振るわれる超振動ロングナイフは、微細な振動によって対象の細胞や分子の結合そのものを破砕するように設計された原理上、切れないものはない科学技術の極地にあるナイフである。
その一方で魔導ナイフは魔法の極地にある兵器で、刀身に非常に高密度の魔力を纏いながら振るわれる。
魔力は別種の魔力同士で反発し合い、相殺するという性質を持つ。魔法由来の防御膜に魔導ナイフを振るえば非常に高密度の魔力によって切り裂くことができる。
おまけにアームズシェルによって発揮される膂力は厚さ5センチの鋼鉄を素手で楽にネジ切れるほど。
その膂力から繰り出される超振動ロングナイフと魔導ナイフが魔王ゾウムシに襲いかかる。
すわ魔王ゾウムシの危機、かに思われた。
きぃん。
5人が振るう武器が弾かれ、折れて飛んだ。
「はぁっ!?」
「っ!?ありえねぇっ!!」
「折れやがったぞ!?」
「硬過ぎだろっ!?こいつっ!!」
「がっでむっ!!」
残念ながら彼らの武器では刃が立たない。
なぜならば魔王ゾウムシのスキルによって発達した外骨格は複合タイプである。
彼女の持つスキル超外骨格は外骨格を発達させて物理的な衝撃や傷に強くなる。
大砲を受けたとしても弾くことができる装甲を誇るがこれだけであれば超振動ロングナイフで切り裂けたであろう。
スキル超魔力皮膜は皮膜とある通り、表面を覆うだけであれば超振動ロングナイフで切り抜く、ということが出来たかもしれない。
「こいつは…やばいな」
『どうした?何があった!?どちらも通じなかったのか!?』
「…通じず。装備は破損した」
『ばかなっ…魔力に対して高い反発率を持つ皮膜のようなもので電磁誘導弾を弾いたのではないのか?魔導ナイフは通じないとは予想していたが…超振動ロングナイフも弾かれたというのか?』
「…奴の表皮は物理的に硬いのはもちろんだが、魔力を反発…相殺する性質も併せ持つらしい。どちらもそもそもの初撃が通じなかった」
超魔力皮膜は体に魔力でできた攻撃を減衰させる皮膜を付ける、というスキルではなかった。被膜が体を包む、と言うわけではないのだ。元からあるに魔力皮膜にあたる機能を追加する、という表現が正しい。
つまり魔王ゾウムシの外骨格は物理的攻撃にも魔力的攻撃にも区別なく高い防御力を発揮する。と言うことである。
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