43 / 132
Ⅲ章 討滅
43
しおりを挟む
ユーリ君と戯れあったり、畑仕事をしたり、リアちゃんとほのぼの話したりしながら過ごしていると、段々とやりたい事が増えてくる。
なまじ様々な娯楽を経験した前世の記憶がある分、その思いはなおさらのこと。
まず考えたのは前世での趣味である、アクアリウムだ。
前に少し話したが、メダカを飼い始めたのをきっかけにアクアリウム趣味に目覚めた。
しかしソレは少々厳しそうだ。
まず水槽がない。
僕が住んでいるのがプラベリアの端っこの辺境だから流通していない、と言うわけではない。
この半年で視覚と聴覚を共有できる魔王蝶々を飛ばしてプラベリア中を探したり、街頭の会話などに耳を傾けて情報を集めたりしたが、そもそもの製造会社がないようである。
製造技術自体は存在していそうなのだが、どうも食料難な世界であるためか、そうした製造技術を開発する手間暇があるくらいならば
食料難に対する何かしらの対応策に注力すると言う状況だ。
もちろんのこと仮に水槽が用意できても、アクアリウムを始めるための様々な器具なんてものもない。なんなら水槽に入れる魚自体が手に入りにくい。全部食材として利用されるからだ。
なんなら簡単に手に入れられそうな魚は軒並み食利用目的で絶滅している。
趣味は無理そうと判断した。
次はゲームやテレビだろうか。
言うまでもない。
これもまたそれらを開発、販売する暇があるなら食材確保関連の技術などの開発などに時間を使うために存在しない。
今ほど人口がいなかった時代には存在していたらしいが、かなり昔のことで骨董品扱いとして流通する事がちらほらあると言ったところか。
魔王蝶々を骨董品屋に潜ませて、確認してみたがまあ、動きそうになかった。
テレビに至っては、魔法を使った異世界版の携帯があってそれで見る事が出来るのだが、少し申し訳なく思いながら魔王蝶々に他人のものを覗かせて見たのを見る限りでは、バラエティの類は一つも無く、ニュース的なものや他の人との通話で使うだけのようだ。
後の娯楽といえば賭博や酒、スポーツや劇場あたりかな?
賭博や酒は前世から興味なかったので、僕にとっては娯楽になりえないし、スポーツはあっても殺しありの殴り合いなどがメジャーらしく、もちろんジャパニーズとしてはちょっと過激すぎて楽しめなかった。人によってはむしろ過激な方が良いという人も少なからずいるかもしれないが殺しあり、と言う言葉から受ける殺伐さより、実際の戦いはさらに3割増しくらいは過激だった。
普通に内蔵やら腕やらが吹き飛ぶのはちょっと。あれです。
魔王を創っといて何言ってんだと言われるかもしれないが、毎度言ってるけど強いられてるだけだからね?
フィクションとかだとそうした何かしら理不尽なことを強いてくる存在に反旗を翻して最終的に勝つとかあるけど、今回の場合、普通に考えて無理だよね。
魔王クリエイターを使えばと?
いや、与えられた力で勝てるわけがないし、そもそもあの声の主がどこにいるのかすら分からん。
殺せるかわからないし、殺せたところで生き返るかもしれない。
そもそも、それが出来る存在相手なら逃げるかもしれないしと、少し考えるだけで無理な理由が次から次へと思いつく。
となれば長いものに巻かれるしかないのだ。
幸いなことに、絶滅させろと言われてるわけではないし報酬としてノルマを達成したらそれ以上は殺さなくていいとなっているわけだし。
従うのが結局はベターではないベストなのである。
などと湧いてくる罪悪感を宥めつつ。
あ、劇場は存在してなかったです。
過去にはあったかもしれないけど、それを見に行く暇があれば畑仕事をするのが一般市民のデフォルトなのだ。
中には見に行けるだけの余裕がある人もいるかもしれないけれど当然ながら、見に行く人が少数では劇場を運営できるはずもなし。
ゆえにそもそも劇場をやろうと言う人々が集まらない。
なんて無体な世界か。
地球が懐かしいぜ。
魔法というロマンありきでも地球の方が俄然良かったよ、これ。
となればできる娯楽など限られる。
食生活だ。
食生活を充実させよう。
今の食卓は虫と野菜とネズミが大半だ。
ちょっとこれはない。
虫と言っても時期などによって種類が異なったり、野菜は農業国家なだけあって様々なものが栽培されているが、もう少し食卓に彩りを添えたい。
具体的には魚や肉が欲しい。
いっそのことバレてしまったリアちゃんだけではなく、母にも魔王クリエイターの力を話して食肉利用目的の魔王、いや、家畜を作ってしまおうかと思ったがやはりいざと言う時のことを思うと気がひける。
というか今更だが過去に芝犬を作ろうとして失敗したのは正解だった。
どこから連れてきたんだと違和感を持たれるところだ。
カマキリのゼルエルちゃんならたまたま巨大化したカマキリがうんたらと納得させることはできても、さすがに犬サイズの動物がポッとやってくるのは違和感が大きすぎる。
せめて味を変えたい。
調味料が欲しい。
僕はそう考え、とある閃きが頭に灯る。
そうだ、醤油を作ろう。
と。
なまじ様々な娯楽を経験した前世の記憶がある分、その思いはなおさらのこと。
まず考えたのは前世での趣味である、アクアリウムだ。
前に少し話したが、メダカを飼い始めたのをきっかけにアクアリウム趣味に目覚めた。
しかしソレは少々厳しそうだ。
まず水槽がない。
僕が住んでいるのがプラベリアの端っこの辺境だから流通していない、と言うわけではない。
この半年で視覚と聴覚を共有できる魔王蝶々を飛ばしてプラベリア中を探したり、街頭の会話などに耳を傾けて情報を集めたりしたが、そもそもの製造会社がないようである。
製造技術自体は存在していそうなのだが、どうも食料難な世界であるためか、そうした製造技術を開発する手間暇があるくらいならば
食料難に対する何かしらの対応策に注力すると言う状況だ。
もちろんのこと仮に水槽が用意できても、アクアリウムを始めるための様々な器具なんてものもない。なんなら水槽に入れる魚自体が手に入りにくい。全部食材として利用されるからだ。
なんなら簡単に手に入れられそうな魚は軒並み食利用目的で絶滅している。
趣味は無理そうと判断した。
次はゲームやテレビだろうか。
言うまでもない。
これもまたそれらを開発、販売する暇があるなら食材確保関連の技術などの開発などに時間を使うために存在しない。
今ほど人口がいなかった時代には存在していたらしいが、かなり昔のことで骨董品扱いとして流通する事がちらほらあると言ったところか。
魔王蝶々を骨董品屋に潜ませて、確認してみたがまあ、動きそうになかった。
テレビに至っては、魔法を使った異世界版の携帯があってそれで見る事が出来るのだが、少し申し訳なく思いながら魔王蝶々に他人のものを覗かせて見たのを見る限りでは、バラエティの類は一つも無く、ニュース的なものや他の人との通話で使うだけのようだ。
後の娯楽といえば賭博や酒、スポーツや劇場あたりかな?
賭博や酒は前世から興味なかったので、僕にとっては娯楽になりえないし、スポーツはあっても殺しありの殴り合いなどがメジャーらしく、もちろんジャパニーズとしてはちょっと過激すぎて楽しめなかった。人によってはむしろ過激な方が良いという人も少なからずいるかもしれないが殺しあり、と言う言葉から受ける殺伐さより、実際の戦いはさらに3割増しくらいは過激だった。
普通に内蔵やら腕やらが吹き飛ぶのはちょっと。あれです。
魔王を創っといて何言ってんだと言われるかもしれないが、毎度言ってるけど強いられてるだけだからね?
フィクションとかだとそうした何かしら理不尽なことを強いてくる存在に反旗を翻して最終的に勝つとかあるけど、今回の場合、普通に考えて無理だよね。
魔王クリエイターを使えばと?
いや、与えられた力で勝てるわけがないし、そもそもあの声の主がどこにいるのかすら分からん。
殺せるかわからないし、殺せたところで生き返るかもしれない。
そもそも、それが出来る存在相手なら逃げるかもしれないしと、少し考えるだけで無理な理由が次から次へと思いつく。
となれば長いものに巻かれるしかないのだ。
幸いなことに、絶滅させろと言われてるわけではないし報酬としてノルマを達成したらそれ以上は殺さなくていいとなっているわけだし。
従うのが結局はベターではないベストなのである。
などと湧いてくる罪悪感を宥めつつ。
あ、劇場は存在してなかったです。
過去にはあったかもしれないけど、それを見に行く暇があれば畑仕事をするのが一般市民のデフォルトなのだ。
中には見に行けるだけの余裕がある人もいるかもしれないけれど当然ながら、見に行く人が少数では劇場を運営できるはずもなし。
ゆえにそもそも劇場をやろうと言う人々が集まらない。
なんて無体な世界か。
地球が懐かしいぜ。
魔法というロマンありきでも地球の方が俄然良かったよ、これ。
となればできる娯楽など限られる。
食生活だ。
食生活を充実させよう。
今の食卓は虫と野菜とネズミが大半だ。
ちょっとこれはない。
虫と言っても時期などによって種類が異なったり、野菜は農業国家なだけあって様々なものが栽培されているが、もう少し食卓に彩りを添えたい。
具体的には魚や肉が欲しい。
いっそのことバレてしまったリアちゃんだけではなく、母にも魔王クリエイターの力を話して食肉利用目的の魔王、いや、家畜を作ってしまおうかと思ったがやはりいざと言う時のことを思うと気がひける。
というか今更だが過去に芝犬を作ろうとして失敗したのは正解だった。
どこから連れてきたんだと違和感を持たれるところだ。
カマキリのゼルエルちゃんならたまたま巨大化したカマキリがうんたらと納得させることはできても、さすがに犬サイズの動物がポッとやってくるのは違和感が大きすぎる。
せめて味を変えたい。
調味料が欲しい。
僕はそう考え、とある閃きが頭に灯る。
そうだ、醤油を作ろう。
と。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる