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Ⅲ章 討滅
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「ジェイクッ!」
「わかってらっ!!ズラかるぞ!!」
双眼鏡越しに目が合うなど明らかに普通ではない。
彼らは瞬時に逃げ出すことを選択した。
一見するとただのエロい体つきの美人集団であるが、ただの美人集団が数キロ離れた自分たちを察知できるはずもなし。
このことを知れただけでも十分な成果と言ってもいい。
2人はなんの未練もなくその場を離れたが、しかし、その選択は遅かった。
すでに彼らの存在は聖女達に捕捉されている。
彼らの見立て通り聖女達はただの人ではない。
聖女とは名ばかりの人間の死体から創り出された魔王クリエイター産の異生物なのだ。
いや、神らしき超常の存在から与えられた魔王クリエイターの力で創られた彼女達は正しく聖女と言えるかも知れない。
聖女シリーズに備わっている超聴力のスキルは数十キロ先の赤子の泣き声すら聴き取ることができる。
当然ながら数キロ先の男達の会話もまた聞こえていた。
さらに併せ持つ超視力のスキルは高高度から小さなネズミを見つけ出す猛禽類以上の視力を発揮できるようになる。
つまり数キロ先の人間くらいであれば見つけるのは造作もない。
聖女アリアが口を開く。
「丁度いいですね。思いの外、子供が多く生き残っていて人手が足りないと思っていたんです。彼らの死体を使ってあの方に聖女見習いを追加してもらいましょう。そうすればまた声が聞けますし」
彼女の目には聖女の名に相応しくない強い情欲が見られたが、それを注意する者は誰もいない。
周囲の聖女見習い達も同感だからである。
「では、お行きなさい」
「えっ、また私ですかぁ?ついさっき外に出て子供達を回収してきたばかりじゃないですか。子供達の世話しながらここまで来るのに疲れて、休みたい気分なのですけど?」
「だからでしょう?外行きの服を着ているのですからついでに仕留めてきなさい」
「アリアさんは人使いが荒いんですよねぇ」
「づべこべ言わずに行ってきなさい。逃げられますよ?」
「オバサンはせっかちですねぇ」
「…ボコボコにしますよ?」
思わずの聖女見習いの呟きにアリアが殺してやろうか?と言う聖女に似つかわしくない目つきで睨む。
エルルの聖女のイメージは25~30半ばくらいの大人のお姉さんと言うものである。
そのイメージの元創り出された聖女達は全てお色気ムンムン、包容力たっぷりなお母さん系美人達であった。
美人であり、胸も巨乳ながら微塵も垂れておらず、肌もモッチモチな彼女達ではあるが周りの美少女な見た目の聖女見習い達に比べてどうしてもオバサン扱いされがちであり、しかもこの世界の結婚適齢期は15前後。この世界は地球を凌駕する技術力がままあるものの人口が多すぎて、医療の手が物理的に足らずに割と人死が多い。
結果、平均寿命は意外と低く、約40と少しくらい。
ゆえにそうした世界の価値基準を持つ聖女見習い達から、どうしても聖女達は行き遅れのように見られがちである。
「ボ、ボコボコは勘弁してください」
「…まったく、うまく仕留めてこれたら私からもあの方に名付けをお願いしましょう。これでいかがです…って、いない。
現金すぎませんかね?」
聖女見習いは数が多すぎるためにエルルによる名付けは行われず、適当に自分たちで決めて良いとされていた。
しかし、創造主たるエルルに過剰なまでの愛欲を抱いている彼女達はいずれは彼に名前をつけて貰えることを夢見て誰一人名前を付けていないと言う始末。
そして、今回の一件はその名付けの絶好のチャンス。
となれば彼女達にとって、今も逃げつつある2人組の男達を仕留めるのは至上の課題となる。
アリアの話半ばに飛び出すのは無理もない。
そうでなければ他の聖女見習い達に先を越されかねない。
聖女見習いでも超聴力ではないが、聴力スキルを持っているため、盗み聞きされて先を越されてしまえばせっかくの名付けのチャンスを失いかねないと言う事情もあった。
が、しかし。
「もう少し、行儀良くはいきませんかね?」
話の途中で放置されたアリアとしては面白くなかった。
「ねぇ」
一方、逃げ切れたかと半ば安堵しつつ、足を止めたスタークとジェイクのもとに、一つの声がかけられた。
即座に腰にかけていた銃を構える2人。
そこには先程の話半ばに飛び出した聖女見習い。
彼女が彼ら2人に立ち塞がる。
先手必勝だとばかりにジェイクが銃を放とうとしたが、それをスタークが手で制した。
「…なんで、とめんだよスターク。美人でおっぱいがデカいからって、撃ちたくないのか?」
冗談半分でジェイクがスタークに意図を聞く。
「落ち着け。そんなわけがないだろう?
ここで引き鉄を引けば敵対が確実になる。それは避けたい。色々な意味で疑わしく、不気味ではあるが…だからこそ下手に敵対するのは不味い。子供の世話をしているくらいだ。少なくとも会話は可能だろう。ひとまずは話し合いでどうにかしたい」
聖女見習いに聞こえないように小声でジェイクを諭す、スターク。
たしかに、とジェイクは銃を下ろしてひとまずは会話の姿勢を示した。
小声であろうと目の前の聖女見習いには聞こえていたが。
ゆえに。
「話し合いは無理ですよ」
「なに?」
「貴方達にはここで死んでもらいますから」
聖女見習いの唐突な死刑宣告と同時に彼女が2人に対して急接近。
鋭い貫手を放つ。
それを辛くも避けるスターク。
避けた貫手は背後の木を貫通した。
貫手とは拳ではなく指先を相手に突き出す技のことで、拳に比べて相手に当たる面積が狭い分、力が面積の小さい指先に集まる分、より威力が高くなる格闘術だが、それでも木を打ち抜くなど普通ではない。
その人間離れした技を見て、僅かに怯みながらもジェイクが即座に銃を構え放つが、それを聖女見習いは銃を蹴り上げることで強引に回避する。
「ちぃっ!?こいつ、本当に女かっ!?
接近してくる動きは洒落にならない速さだし、木を素手で打ち抜くは、銃を撃たれた際の行動があまりに見た目とかけ離れて、ギャップ萌えってレベルじゃねぇぞっ!!」
蹴り上げられた銃はあらぬ方向へ吹き飛び、森の中へ消えた。回収は難しそうだ。
逃げる際に少しでも姿を隠せるようにと街道から逸れた雑木林に逃げ込んだのが災いした。
即座にスタークも銃を構え、放つ。
だが、それは射線を見切られ避けられた。
「こいつならどうだ!!」
スタークは銃を避けるために体勢を崩した聖女見習いに対して、渾身の前蹴りを繰り出した。
が。
「ふむふむ。貴方達、妙ですね?
ただの人間にしては…私の貫手を避けたことといい、この蹴りの威力といい身体能力が高すぎます」
渾身の前蹴りは目の前の彼女にダメージを与えるどころか、なんら意に介さぬ様子で受け流された。
彼女が腕をかざして、そこに足が触れた瞬間、引っ掛かりのないすべすべした物体を蹴って滑ったかのような感触にスタークは眉を顰めながら、これならどうだと間髪入れずに回し蹴りを繰り出す。
しかし、これもまた受け流される。
化勁と呼ばれる中国武術における技の一つで、自らに向かう力の方向を変えて都合の良いようにいなす技術のことを言う。
「次はこちらの番です」
「ぐはぁっ!?」
再度、鋭い貫手を繰り出す聖女見習い。
回し蹴りによって大きな隙を作ったスタークは避けることができずにそのまま貫手を喰らい、軽くのけぞった。
「むっ?」
「捕まえたぞっ!!やれっ!ジェイクッ!!」
「応ともよっ!!」
しかし、聖女見習いの貫手はスタークを貫くことはできずに、指先が多少沈み込むだけで止まる。
自身の体に食い込み止まった、聖女見習いの腕をすかさず掴み、ジェイクが腰に吊るしていた大型のナタを聖女見習いに振り下ろした。
「死に晒せやぁっ!!!」
掴みかかった超近距離状態でなら女の腕力で抜け出すことは出来まい。
確実に殺った。
そう2人は確信した。
が、それには気が早い。
「ごばぁっ!??」
「スタークッ!?ごぶはっ?!」
捕まえていたスタークの身に前触れなく凄まじい衝撃が走る。
超近距離状態であっても聖女見習いは慌てず、寸勁と呼ばれる体の節々に備わる力を連携させて、瞬時に発した力によって止まった貫手を強引に押し出した。
血反吐を撒き散らしながら吹き飛ぶスターク。
そうして自由になった聖女見習いはジェイクのナタの振り下ろしを避けると同時に蹴り飛ばす。
ジェイクは蹴られたことで折れた歯をばら撒きながら悶絶した。
「わかってらっ!!ズラかるぞ!!」
双眼鏡越しに目が合うなど明らかに普通ではない。
彼らは瞬時に逃げ出すことを選択した。
一見するとただのエロい体つきの美人集団であるが、ただの美人集団が数キロ離れた自分たちを察知できるはずもなし。
このことを知れただけでも十分な成果と言ってもいい。
2人はなんの未練もなくその場を離れたが、しかし、その選択は遅かった。
すでに彼らの存在は聖女達に捕捉されている。
彼らの見立て通り聖女達はただの人ではない。
聖女とは名ばかりの人間の死体から創り出された魔王クリエイター産の異生物なのだ。
いや、神らしき超常の存在から与えられた魔王クリエイターの力で創られた彼女達は正しく聖女と言えるかも知れない。
聖女シリーズに備わっている超聴力のスキルは数十キロ先の赤子の泣き声すら聴き取ることができる。
当然ながら数キロ先の男達の会話もまた聞こえていた。
さらに併せ持つ超視力のスキルは高高度から小さなネズミを見つけ出す猛禽類以上の視力を発揮できるようになる。
つまり数キロ先の人間くらいであれば見つけるのは造作もない。
聖女アリアが口を開く。
「丁度いいですね。思いの外、子供が多く生き残っていて人手が足りないと思っていたんです。彼らの死体を使ってあの方に聖女見習いを追加してもらいましょう。そうすればまた声が聞けますし」
彼女の目には聖女の名に相応しくない強い情欲が見られたが、それを注意する者は誰もいない。
周囲の聖女見習い達も同感だからである。
「では、お行きなさい」
「えっ、また私ですかぁ?ついさっき外に出て子供達を回収してきたばかりじゃないですか。子供達の世話しながらここまで来るのに疲れて、休みたい気分なのですけど?」
「だからでしょう?外行きの服を着ているのですからついでに仕留めてきなさい」
「アリアさんは人使いが荒いんですよねぇ」
「づべこべ言わずに行ってきなさい。逃げられますよ?」
「オバサンはせっかちですねぇ」
「…ボコボコにしますよ?」
思わずの聖女見習いの呟きにアリアが殺してやろうか?と言う聖女に似つかわしくない目つきで睨む。
エルルの聖女のイメージは25~30半ばくらいの大人のお姉さんと言うものである。
そのイメージの元創り出された聖女達は全てお色気ムンムン、包容力たっぷりなお母さん系美人達であった。
美人であり、胸も巨乳ながら微塵も垂れておらず、肌もモッチモチな彼女達ではあるが周りの美少女な見た目の聖女見習い達に比べてどうしてもオバサン扱いされがちであり、しかもこの世界の結婚適齢期は15前後。この世界は地球を凌駕する技術力がままあるものの人口が多すぎて、医療の手が物理的に足らずに割と人死が多い。
結果、平均寿命は意外と低く、約40と少しくらい。
ゆえにそうした世界の価値基準を持つ聖女見習い達から、どうしても聖女達は行き遅れのように見られがちである。
「ボ、ボコボコは勘弁してください」
「…まったく、うまく仕留めてこれたら私からもあの方に名付けをお願いしましょう。これでいかがです…って、いない。
現金すぎませんかね?」
聖女見習いは数が多すぎるためにエルルによる名付けは行われず、適当に自分たちで決めて良いとされていた。
しかし、創造主たるエルルに過剰なまでの愛欲を抱いている彼女達はいずれは彼に名前をつけて貰えることを夢見て誰一人名前を付けていないと言う始末。
そして、今回の一件はその名付けの絶好のチャンス。
となれば彼女達にとって、今も逃げつつある2人組の男達を仕留めるのは至上の課題となる。
アリアの話半ばに飛び出すのは無理もない。
そうでなければ他の聖女見習い達に先を越されかねない。
聖女見習いでも超聴力ではないが、聴力スキルを持っているため、盗み聞きされて先を越されてしまえばせっかくの名付けのチャンスを失いかねないと言う事情もあった。
が、しかし。
「もう少し、行儀良くはいきませんかね?」
話の途中で放置されたアリアとしては面白くなかった。
「ねぇ」
一方、逃げ切れたかと半ば安堵しつつ、足を止めたスタークとジェイクのもとに、一つの声がかけられた。
即座に腰にかけていた銃を構える2人。
そこには先程の話半ばに飛び出した聖女見習い。
彼女が彼ら2人に立ち塞がる。
先手必勝だとばかりにジェイクが銃を放とうとしたが、それをスタークが手で制した。
「…なんで、とめんだよスターク。美人でおっぱいがデカいからって、撃ちたくないのか?」
冗談半分でジェイクがスタークに意図を聞く。
「落ち着け。そんなわけがないだろう?
ここで引き鉄を引けば敵対が確実になる。それは避けたい。色々な意味で疑わしく、不気味ではあるが…だからこそ下手に敵対するのは不味い。子供の世話をしているくらいだ。少なくとも会話は可能だろう。ひとまずは話し合いでどうにかしたい」
聖女見習いに聞こえないように小声でジェイクを諭す、スターク。
たしかに、とジェイクは銃を下ろしてひとまずは会話の姿勢を示した。
小声であろうと目の前の聖女見習いには聞こえていたが。
ゆえに。
「話し合いは無理ですよ」
「なに?」
「貴方達にはここで死んでもらいますから」
聖女見習いの唐突な死刑宣告と同時に彼女が2人に対して急接近。
鋭い貫手を放つ。
それを辛くも避けるスターク。
避けた貫手は背後の木を貫通した。
貫手とは拳ではなく指先を相手に突き出す技のことで、拳に比べて相手に当たる面積が狭い分、力が面積の小さい指先に集まる分、より威力が高くなる格闘術だが、それでも木を打ち抜くなど普通ではない。
その人間離れした技を見て、僅かに怯みながらもジェイクが即座に銃を構え放つが、それを聖女見習いは銃を蹴り上げることで強引に回避する。
「ちぃっ!?こいつ、本当に女かっ!?
接近してくる動きは洒落にならない速さだし、木を素手で打ち抜くは、銃を撃たれた際の行動があまりに見た目とかけ離れて、ギャップ萌えってレベルじゃねぇぞっ!!」
蹴り上げられた銃はあらぬ方向へ吹き飛び、森の中へ消えた。回収は難しそうだ。
逃げる際に少しでも姿を隠せるようにと街道から逸れた雑木林に逃げ込んだのが災いした。
即座にスタークも銃を構え、放つ。
だが、それは射線を見切られ避けられた。
「こいつならどうだ!!」
スタークは銃を避けるために体勢を崩した聖女見習いに対して、渾身の前蹴りを繰り出した。
が。
「ふむふむ。貴方達、妙ですね?
ただの人間にしては…私の貫手を避けたことといい、この蹴りの威力といい身体能力が高すぎます」
渾身の前蹴りは目の前の彼女にダメージを与えるどころか、なんら意に介さぬ様子で受け流された。
彼女が腕をかざして、そこに足が触れた瞬間、引っ掛かりのないすべすべした物体を蹴って滑ったかのような感触にスタークは眉を顰めながら、これならどうだと間髪入れずに回し蹴りを繰り出す。
しかし、これもまた受け流される。
化勁と呼ばれる中国武術における技の一つで、自らに向かう力の方向を変えて都合の良いようにいなす技術のことを言う。
「次はこちらの番です」
「ぐはぁっ!?」
再度、鋭い貫手を繰り出す聖女見習い。
回し蹴りによって大きな隙を作ったスタークは避けることができずにそのまま貫手を喰らい、軽くのけぞった。
「むっ?」
「捕まえたぞっ!!やれっ!ジェイクッ!!」
「応ともよっ!!」
しかし、聖女見習いの貫手はスタークを貫くことはできずに、指先が多少沈み込むだけで止まる。
自身の体に食い込み止まった、聖女見習いの腕をすかさず掴み、ジェイクが腰に吊るしていた大型のナタを聖女見習いに振り下ろした。
「死に晒せやぁっ!!!」
掴みかかった超近距離状態でなら女の腕力で抜け出すことは出来まい。
確実に殺った。
そう2人は確信した。
が、それには気が早い。
「ごばぁっ!??」
「スタークッ!?ごぶはっ?!」
捕まえていたスタークの身に前触れなく凄まじい衝撃が走る。
超近距離状態であっても聖女見習いは慌てず、寸勁と呼ばれる体の節々に備わる力を連携させて、瞬時に発した力によって止まった貫手を強引に押し出した。
血反吐を撒き散らしながら吹き飛ぶスターク。
そうして自由になった聖女見習いはジェイクのナタの振り下ろしを避けると同時に蹴り飛ばす。
ジェイクは蹴られたことで折れた歯をばら撒きながら悶絶した。
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