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Ⅳ章
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「っ!!?」
異形のヒトはふと気づく。
自身が瓦礫に埋もれていたことに。
そして、鋭い痛みを感じて顔に手を当てる。
絶対に殺す、その殺害予告を耳に入れた瞬間、自身の体が瓦礫に埋もれていたのを認識した。
顔が変形し、血がダラリと垂れている。
どうやら自身の認識を遥かに超える速度で殴られたらしい。
周りを見渡すと先程まで立っていた場所から数百メートルは離れている。
幾つかの家屋を貫通しながら吹き飛んだようだ。
立ち上がろうとして、足が震えて立てないことに気づく。
「どうやら殴られてから数秒だが意識が飛んでいたらしいな…」
たった一撃で立ち上がるのが困難なレベルのダメージを受けた。
今まで何度も致命傷に近い傷を負った彼女は超進化スキルによって傷に対する適応力が高くなっている。
もとい、傷の治るスピードは普通の生命体と比較して比べ物にならないほどに高い。
そんな彼女の体を持ってしても足腰が立たないまま、未だに動けずにいる。
「1番堅い頭でこれだと、体に受ければ吹き飛ぶかもしれんな…やむを得ないか。私も切り札を使うとしよう」
彼女の超進化スキルは度重なる戦闘と捕食を経て、独自の能力を得るに至った。
捕食した対象の記憶と一緒に技能までも取り込むという能力を。
英雄アストルフと彼が用いた特殊な魔科学武器を取り込んだ彼女もまた、アストルフとその武器の力が使える。
「制御盤を解除する」
魔科学武器の魔力増幅効果を彼女も使用することができるのだ。
さらには制御盤無しで魔力を制御できていたアストルフのように、異形のヒトもまた尋常ならざる魔力を全て制御下に置くことに成功する。
すると。
彼女の尾先についた大剣が赤熱し、赫く輝く。
急激な高熱の発生に、大気が揺らめき、周囲にあった僅かな湿気が全て飛んでいった。
「ふははは、素晴らしい力だ!全く、人間は狡いよなぁっ!!こんなに素晴らしい武器を使っていたのだからっ!!!」
あまりの力の増幅ぶりに上機嫌に笑い始めてしまう異形のヒト。
いくら超進化スキルでアストルフの技能を学んでいたとしても、さすがに制御盤無しの魔科学武器を扱えるかは分からなかった。
だからこそあまり使いたくなかったのだが、いざ使ってみると思いの外、容易に扱えることに驚きと喜びの声を上げる。
跳ね上がった魔力によって体の生理機能、すなわち自然治癒力も増加した結果、早送りしたかのようにアニーから受けた傷の一つ一つが完治していく。
そこにアニーがやってくる。
「…っまさか…」
「くくく、畳み掛ければ私を殺せたやも知れぬのに、追いかけてくるのが遅かったな。随分と呑気なものだ、アニーよ」
「っ、気安く呼ぶんじゃないわよ」
「どうした?汗が凄い上に、呼吸も荒い。既に死に体のように見えるぞ?
追い討ちをしなかったのではなく、出来なかったのか?」
アニーとしてはすぐに仕留めたかったのだが、残念ながら彼女は異形のヒトを殴り飛ばした際に全身に走る激痛で悶えて、それどころではなかった。
拵解、という機能の体に対する負担はアニーの思っていた数倍はあったのだ。
その負担は、異形のヒトのいる場所まで歩くだけで、力を振り絞らなければならないくらいに。
「まだ…まだ60倍程度なのに…このざまなんてね…」
アニーは異形のヒトが言うように死に体であった。いたる場所の皮膚から血を流し、魔力や聖剣によって強化された身体機能がなければ既に失血死していただろう。
魔力はエネルギーである。
電気の量が増えれば感電する。
熱が高まれば火傷をする。
あまりにも多いエネルギーは害となる。
魔力が過剰に集まると物質化する性質を持つ。
そうして高濃度の魔力が物質化した物を人は『魔石』と呼んだ。
つまり、制御しきれず体内に滞り始めた大量の魔力が細かい石や砂のようなものになって異物として体内を抉り始めた結果、アニーは血まみれになっていた。
魔力を辛うじて制御下に置いているために、なんとか主要な血管や内臓周りに石を出すことはしてないが、それも時間の問題であった。
「ガイはどうした?」
「気安く呼ぶなって言ってるでしょっ」
「くく、嫌われたものだ。まあ、大方これからの戦いについて来れないから避難…いや、ガイの性格からしてお前を放って、逃げはすまい。不意打ちのために潜伏中と言ったところかな?
今の私に通用するとは思えないが」
「…っづ…ふぅ、ふぅ、ふぅ……なんど言えば分かるのかしらね?気安く呼ぶな、分かったふうな口を聞くな、ついでに話しかけるんじゃない」
「そう言わずにもっと会話を楽しもうじゃないか。余裕がないなぁ…それに私の言葉が聞きたくないというならば力ずくで黙らせたらどうだ?」
「…ふぅふぅ、ふぅぅううっ…っお望み通り、力づくで黙らせてやるよ」
「ははは…やってみろ」
アニーの超高速の踏み込み。
渾身の回し蹴りが炸裂するかと思いきや、それを避けた上で、反撃する異形のヒト。
彼女は反撃として剣を振るった。
「ウィンドキャッスルっ!!」
アニーは魔法を使った。高密度の大気を壁として、攻撃を逸らしたり弾いたりする防御魔法を腕という小さな範囲に集中させて、その腕で振われた大剣を防御する。
途端に。
爆音。
凄まじい爆音と共にアニーが吹き飛び、周囲の家屋をいくつかぶち抜いていく。
「ヴォルカニックバーン」
もちろんそれだけで終わらない。終わらせてくれない。
彼女は尾先の大剣を大きく振るった。
「っ…ウィンドキャッスルッ!」
先に放ったヴォルカニックバーンとは比べ物にならないほどの高熱と共に炎の斬撃が高速でアニーに迫る。
吹き飛ばされてる最中というのもあって、防御魔法で弾く、までは無理でも逸らせればと大気の壁を張ったが、突き破られてアニーに直撃。
そのまま炎の斬撃は地面に大きな傷跡を残しながら街を横断。
人のいない大都市ランブルを突き抜けてなお、斬撃は突き進み、地平線まで届くのでは?と思う頃に消失した。
街には、まるで大怪獣の爪で街中を引っ掻かれたような大きな傷跡が残る。
「おっと、力み過ぎてもう殺してしまったかな?
フフ、いかんな。加減が分からぬぞ?」
「らぁっ!!」
「おおっ、今のはヒヤッとしたぞ。その調子だ、ほれほれっ」
「ぐぅっ!?」
「ははは、さすがに人間のような小さい的にアレは大技過ぎたか。強化されたウィンドキャッスルで僅かに逸れたのもあって、直撃は免れたようだな。良い良い!まだ会話が出来そうだ」
アニーは異形のヒトのヴォルカニックバーンを避けて、異形のヒトの背後に周り、スパーキングウィンドを放つが大剣で切り飛ばされ、そのままの勢いで大剣から加減したヴォルカニックバーンを放った。
加減されたためにウィンドキャッスルで弾くことはできた。
が、自身の間近に高熱源の物体が迫ってきたのだ。
直撃せずとも、火傷を負うし、負わなくても体力を消耗する。
アニーは追い詰められていた。
異形のヒトはふと気づく。
自身が瓦礫に埋もれていたことに。
そして、鋭い痛みを感じて顔に手を当てる。
絶対に殺す、その殺害予告を耳に入れた瞬間、自身の体が瓦礫に埋もれていたのを認識した。
顔が変形し、血がダラリと垂れている。
どうやら自身の認識を遥かに超える速度で殴られたらしい。
周りを見渡すと先程まで立っていた場所から数百メートルは離れている。
幾つかの家屋を貫通しながら吹き飛んだようだ。
立ち上がろうとして、足が震えて立てないことに気づく。
「どうやら殴られてから数秒だが意識が飛んでいたらしいな…」
たった一撃で立ち上がるのが困難なレベルのダメージを受けた。
今まで何度も致命傷に近い傷を負った彼女は超進化スキルによって傷に対する適応力が高くなっている。
もとい、傷の治るスピードは普通の生命体と比較して比べ物にならないほどに高い。
そんな彼女の体を持ってしても足腰が立たないまま、未だに動けずにいる。
「1番堅い頭でこれだと、体に受ければ吹き飛ぶかもしれんな…やむを得ないか。私も切り札を使うとしよう」
彼女の超進化スキルは度重なる戦闘と捕食を経て、独自の能力を得るに至った。
捕食した対象の記憶と一緒に技能までも取り込むという能力を。
英雄アストルフと彼が用いた特殊な魔科学武器を取り込んだ彼女もまた、アストルフとその武器の力が使える。
「制御盤を解除する」
魔科学武器の魔力増幅効果を彼女も使用することができるのだ。
さらには制御盤無しで魔力を制御できていたアストルフのように、異形のヒトもまた尋常ならざる魔力を全て制御下に置くことに成功する。
すると。
彼女の尾先についた大剣が赤熱し、赫く輝く。
急激な高熱の発生に、大気が揺らめき、周囲にあった僅かな湿気が全て飛んでいった。
「ふははは、素晴らしい力だ!全く、人間は狡いよなぁっ!!こんなに素晴らしい武器を使っていたのだからっ!!!」
あまりの力の増幅ぶりに上機嫌に笑い始めてしまう異形のヒト。
いくら超進化スキルでアストルフの技能を学んでいたとしても、さすがに制御盤無しの魔科学武器を扱えるかは分からなかった。
だからこそあまり使いたくなかったのだが、いざ使ってみると思いの外、容易に扱えることに驚きと喜びの声を上げる。
跳ね上がった魔力によって体の生理機能、すなわち自然治癒力も増加した結果、早送りしたかのようにアニーから受けた傷の一つ一つが完治していく。
そこにアニーがやってくる。
「…っまさか…」
「くくく、畳み掛ければ私を殺せたやも知れぬのに、追いかけてくるのが遅かったな。随分と呑気なものだ、アニーよ」
「っ、気安く呼ぶんじゃないわよ」
「どうした?汗が凄い上に、呼吸も荒い。既に死に体のように見えるぞ?
追い討ちをしなかったのではなく、出来なかったのか?」
アニーとしてはすぐに仕留めたかったのだが、残念ながら彼女は異形のヒトを殴り飛ばした際に全身に走る激痛で悶えて、それどころではなかった。
拵解、という機能の体に対する負担はアニーの思っていた数倍はあったのだ。
その負担は、異形のヒトのいる場所まで歩くだけで、力を振り絞らなければならないくらいに。
「まだ…まだ60倍程度なのに…このざまなんてね…」
アニーは異形のヒトが言うように死に体であった。いたる場所の皮膚から血を流し、魔力や聖剣によって強化された身体機能がなければ既に失血死していただろう。
魔力はエネルギーである。
電気の量が増えれば感電する。
熱が高まれば火傷をする。
あまりにも多いエネルギーは害となる。
魔力が過剰に集まると物質化する性質を持つ。
そうして高濃度の魔力が物質化した物を人は『魔石』と呼んだ。
つまり、制御しきれず体内に滞り始めた大量の魔力が細かい石や砂のようなものになって異物として体内を抉り始めた結果、アニーは血まみれになっていた。
魔力を辛うじて制御下に置いているために、なんとか主要な血管や内臓周りに石を出すことはしてないが、それも時間の問題であった。
「ガイはどうした?」
「気安く呼ぶなって言ってるでしょっ」
「くく、嫌われたものだ。まあ、大方これからの戦いについて来れないから避難…いや、ガイの性格からしてお前を放って、逃げはすまい。不意打ちのために潜伏中と言ったところかな?
今の私に通用するとは思えないが」
「…っづ…ふぅ、ふぅ、ふぅ……なんど言えば分かるのかしらね?気安く呼ぶな、分かったふうな口を聞くな、ついでに話しかけるんじゃない」
「そう言わずにもっと会話を楽しもうじゃないか。余裕がないなぁ…それに私の言葉が聞きたくないというならば力ずくで黙らせたらどうだ?」
「…ふぅふぅ、ふぅぅううっ…っお望み通り、力づくで黙らせてやるよ」
「ははは…やってみろ」
アニーの超高速の踏み込み。
渾身の回し蹴りが炸裂するかと思いきや、それを避けた上で、反撃する異形のヒト。
彼女は反撃として剣を振るった。
「ウィンドキャッスルっ!!」
アニーは魔法を使った。高密度の大気を壁として、攻撃を逸らしたり弾いたりする防御魔法を腕という小さな範囲に集中させて、その腕で振われた大剣を防御する。
途端に。
爆音。
凄まじい爆音と共にアニーが吹き飛び、周囲の家屋をいくつかぶち抜いていく。
「ヴォルカニックバーン」
もちろんそれだけで終わらない。終わらせてくれない。
彼女は尾先の大剣を大きく振るった。
「っ…ウィンドキャッスルッ!」
先に放ったヴォルカニックバーンとは比べ物にならないほどの高熱と共に炎の斬撃が高速でアニーに迫る。
吹き飛ばされてる最中というのもあって、防御魔法で弾く、までは無理でも逸らせればと大気の壁を張ったが、突き破られてアニーに直撃。
そのまま炎の斬撃は地面に大きな傷跡を残しながら街を横断。
人のいない大都市ランブルを突き抜けてなお、斬撃は突き進み、地平線まで届くのでは?と思う頃に消失した。
街には、まるで大怪獣の爪で街中を引っ掻かれたような大きな傷跡が残る。
「おっと、力み過ぎてもう殺してしまったかな?
フフ、いかんな。加減が分からぬぞ?」
「らぁっ!!」
「おおっ、今のはヒヤッとしたぞ。その調子だ、ほれほれっ」
「ぐぅっ!?」
「ははは、さすがに人間のような小さい的にアレは大技過ぎたか。強化されたウィンドキャッスルで僅かに逸れたのもあって、直撃は免れたようだな。良い良い!まだ会話が出来そうだ」
アニーは異形のヒトのヴォルカニックバーンを避けて、異形のヒトの背後に周り、スパーキングウィンドを放つが大剣で切り飛ばされ、そのままの勢いで大剣から加減したヴォルカニックバーンを放った。
加減されたためにウィンドキャッスルで弾くことはできた。
が、自身の間近に高熱源の物体が迫ってきたのだ。
直撃せずとも、火傷を負うし、負わなくても体力を消耗する。
アニーは追い詰められていた。
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