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Ⅴ章
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⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
場面は変わり。
サドラン帝国の南西部にて奇妙な報告が上がった。
魔王ヨトウガを多大な犠牲を払いつつも1匹残らず討滅したのち、復興作業が始まって2週間ほどが経過したある日の話だ。
聖女と名乗る集団による子供たちへの保育行動の報告。
さらには死体の数が合わないなど不可解な報告が霞むほどに、とびっきりの奇々怪界な報告が復興作業を行なっていた軍部の上層部へと届いたのだ。
「穴?」
「はい、明らかに存在していなかったであろう巨大な穴が街の中心部に出現しているんです」
報告を受けていたのは復興作業の責任者であるベニック少佐だ。
つるりと光る禿頭に、物々しい眼帯が左目を覆い、筋骨隆々な体が特徴的な彼は部下から上げられた報告に少し考えたあと、穴の調査を命じることにした。
「昆虫型魔獣の生き残りが隠れ潜んでいるかも知れん。あれだけの被害を出して再度大量発生なんてことになれば目も当てられん。殖える前に仕留め切るためにも、調査は急務だ。至急、偵察を送れ。
幸い、携行火器でも仕留めきれないことはない。穴の中という閉所ならば尚更だ。アサルトライフルでも持たせておけ。あくまでも調査を優先、急務とし、交戦は控えるように言い含めておけ。偵察隊が戻ってきた際の報告から援軍を送るかどうかを決める」
「それが、すでに調査を行った後なようで…」
「なんだと?独断専行を許した覚えはないが…まあ、いい。それで?何があった?」
「兵士曰く、箱があったとのことです」
「はぁ?箱だ?」
奇妙な穴から箱が見つかった。
この報告を受けたベニック少佐は更なる調査を命じ、その結果、サドラン帝国に大きな変化を強いることをベニック少佐は思いもしなかった。
箱の内部から見つかったのは瓶に入った液体で、後に『ポーション』と名付けられたソレは「なぜそんなものが?」「そもそもこの穴は何で、何のために作られたのか?」「誰が用意したのか」などなど、様々な疑問点を吹き飛ばすほどの効能があった。
そして、1つ見つけたとなれば2つ3つと見つかってもおかしくはない。
復興作業中に見つかった穴は瞬く間にサドラン帝国、いや世界中に知られ、穴を中心に街が作られ栄えていく。
人は「穴」を迷宮と呼び、それが存在する街を迷宮都市と呼んだ。
それから、一年後。
迷宮都市にやってきた2人組の少年がいた。
「ルービィ。ようやく、辿り着いたな!」
「ああ、本当にようやくって感じだよ。それもこれもフォルフォーがいく先々で面倒ごとに巻き込まれにいくからだよ」
赤髪のフォルフォーと呼ばれた少年は答えた。
「俺が巻き込まれに行ったってのは言い過ぎだろ?
ふつーに巻き込まれたんだよ。ふかこーりょくってやつさ」
フォルフォーの言葉に何を言っても無駄だと長い付き合いから分かってはいても文句を言わずにはいられない青髪の少年ルービィ。
バカに対する処方箋はないなと改めて考えつつ、ルービィは答えた。
「はいはい。そういうことにしておいてあげるから早く宿を取ろうよ。僕は休みたいよ」
「宿を?まずは噂の迷宮ってやつを覗くのが先だろ?」
「バカなことを言うなよっ!?何日も歩き通しだぞ!?休んでからに決まってるだろっ!?」
「どのみち宿を取る金だってないぞ?」
「ぇっ?」
「赤ん坊の頃からの付き合いなんだ。ルービィがそう言うだろうってことくらいは俺も分かってた。だから有り金全部、あの村に置いてきたんだ。これで宿には泊まれない。泊まれない以上、金を稼ぐために迷宮に潜らなくてはいけない。どうだ?賢いだろ?」
「あ、有り金全部?
100万くらいあったはずだが…」
「ああ、100万全部置いてきた」
「ば、ば、ばばばばっ、バカやろぉおおぉぉおっ!!何が賢いものかっ!バカだバカだとは思っていたが、これほどのバカだとは思わなかったぞ!?100万丸々置いていく奴がいるか!?」
「何言ってんだ?ルービィはバカだなぁ。ここにいるじゃないか」
と言って自分を指差すフォルフォーをどうしてやろうかと怒り狂うルービィ少年はフォルフォーの次の言葉で、言葉に詰まった。
「それにあの村はあのままじゃ餓死者が出てただろうしな。100万くらいあれば今年を凌ぐくらいはできるだろ?そうすりゃ生き残る目も出てくる」
「…はぁ。またか。そっちがメインの動機だろう?付き合わされる身にもなってほしいんだよね」
「そ、そんなことねぇし。迷宮にすぐに行きたかったからだし!!」
「そんな嘘が通じると思わないでくれ。それこそ赤ん坊の頃からの付き合いなんだからさ」
「…へへへ、わりぃな」
「…まぁいいさ今更だ。まずは迷宮ギルドに行こう。そこで探索者としての手続きをすれば自由に迷宮に入ったりが出来るらしいからな」
「ああ。ようやくだ。ようやく俺たちの夢を叶えることが出来そうだ」
「ああ。世界を救って英雄になる。小さな頃からの夢が叶うかもしれない…いくぞ、フォルフォー」
「珍しく熱くなってるじゃねぇかよ、ルービィ」
こうしてサドラン帝国、迷宮都市街に2人の少年が新たに訪れたのである。
迷宮が狡猾極まりない魔王の罠であることを知らないまま。
場面は変わり。
サドラン帝国の南西部にて奇妙な報告が上がった。
魔王ヨトウガを多大な犠牲を払いつつも1匹残らず討滅したのち、復興作業が始まって2週間ほどが経過したある日の話だ。
聖女と名乗る集団による子供たちへの保育行動の報告。
さらには死体の数が合わないなど不可解な報告が霞むほどに、とびっきりの奇々怪界な報告が復興作業を行なっていた軍部の上層部へと届いたのだ。
「穴?」
「はい、明らかに存在していなかったであろう巨大な穴が街の中心部に出現しているんです」
報告を受けていたのは復興作業の責任者であるベニック少佐だ。
つるりと光る禿頭に、物々しい眼帯が左目を覆い、筋骨隆々な体が特徴的な彼は部下から上げられた報告に少し考えたあと、穴の調査を命じることにした。
「昆虫型魔獣の生き残りが隠れ潜んでいるかも知れん。あれだけの被害を出して再度大量発生なんてことになれば目も当てられん。殖える前に仕留め切るためにも、調査は急務だ。至急、偵察を送れ。
幸い、携行火器でも仕留めきれないことはない。穴の中という閉所ならば尚更だ。アサルトライフルでも持たせておけ。あくまでも調査を優先、急務とし、交戦は控えるように言い含めておけ。偵察隊が戻ってきた際の報告から援軍を送るかどうかを決める」
「それが、すでに調査を行った後なようで…」
「なんだと?独断専行を許した覚えはないが…まあ、いい。それで?何があった?」
「兵士曰く、箱があったとのことです」
「はぁ?箱だ?」
奇妙な穴から箱が見つかった。
この報告を受けたベニック少佐は更なる調査を命じ、その結果、サドラン帝国に大きな変化を強いることをベニック少佐は思いもしなかった。
箱の内部から見つかったのは瓶に入った液体で、後に『ポーション』と名付けられたソレは「なぜそんなものが?」「そもそもこの穴は何で、何のために作られたのか?」「誰が用意したのか」などなど、様々な疑問点を吹き飛ばすほどの効能があった。
そして、1つ見つけたとなれば2つ3つと見つかってもおかしくはない。
復興作業中に見つかった穴は瞬く間にサドラン帝国、いや世界中に知られ、穴を中心に街が作られ栄えていく。
人は「穴」を迷宮と呼び、それが存在する街を迷宮都市と呼んだ。
それから、一年後。
迷宮都市にやってきた2人組の少年がいた。
「ルービィ。ようやく、辿り着いたな!」
「ああ、本当にようやくって感じだよ。それもこれもフォルフォーがいく先々で面倒ごとに巻き込まれにいくからだよ」
赤髪のフォルフォーと呼ばれた少年は答えた。
「俺が巻き込まれに行ったってのは言い過ぎだろ?
ふつーに巻き込まれたんだよ。ふかこーりょくってやつさ」
フォルフォーの言葉に何を言っても無駄だと長い付き合いから分かってはいても文句を言わずにはいられない青髪の少年ルービィ。
バカに対する処方箋はないなと改めて考えつつ、ルービィは答えた。
「はいはい。そういうことにしておいてあげるから早く宿を取ろうよ。僕は休みたいよ」
「宿を?まずは噂の迷宮ってやつを覗くのが先だろ?」
「バカなことを言うなよっ!?何日も歩き通しだぞ!?休んでからに決まってるだろっ!?」
「どのみち宿を取る金だってないぞ?」
「ぇっ?」
「赤ん坊の頃からの付き合いなんだ。ルービィがそう言うだろうってことくらいは俺も分かってた。だから有り金全部、あの村に置いてきたんだ。これで宿には泊まれない。泊まれない以上、金を稼ぐために迷宮に潜らなくてはいけない。どうだ?賢いだろ?」
「あ、有り金全部?
100万くらいあったはずだが…」
「ああ、100万全部置いてきた」
「ば、ば、ばばばばっ、バカやろぉおおぉぉおっ!!何が賢いものかっ!バカだバカだとは思っていたが、これほどのバカだとは思わなかったぞ!?100万丸々置いていく奴がいるか!?」
「何言ってんだ?ルービィはバカだなぁ。ここにいるじゃないか」
と言って自分を指差すフォルフォーをどうしてやろうかと怒り狂うルービィ少年はフォルフォーの次の言葉で、言葉に詰まった。
「それにあの村はあのままじゃ餓死者が出てただろうしな。100万くらいあれば今年を凌ぐくらいはできるだろ?そうすりゃ生き残る目も出てくる」
「…はぁ。またか。そっちがメインの動機だろう?付き合わされる身にもなってほしいんだよね」
「そ、そんなことねぇし。迷宮にすぐに行きたかったからだし!!」
「そんな嘘が通じると思わないでくれ。それこそ赤ん坊の頃からの付き合いなんだからさ」
「…へへへ、わりぃな」
「…まぁいいさ今更だ。まずは迷宮ギルドに行こう。そこで探索者としての手続きをすれば自由に迷宮に入ったりが出来るらしいからな」
「ああ。ようやくだ。ようやく俺たちの夢を叶えることが出来そうだ」
「ああ。世界を救って英雄になる。小さな頃からの夢が叶うかもしれない…いくぞ、フォルフォー」
「珍しく熱くなってるじゃねぇかよ、ルービィ」
こうしてサドラン帝国、迷宮都市街に2人の少年が新たに訪れたのである。
迷宮が狡猾極まりない魔王の罠であることを知らないまま。
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