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Ⅴ章
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ぐるり、と
血塗れで倒れていたアルルの顔だけが動き出し、2人の少年を視界に収めながら口を動かした。
「なかなかどうして。実に優秀ですね。敵と判断した途端、見た目に惑わされず、多少なりとも会話した相手にも関わらず容赦なく殺しにくるとは。才気はもちろん、努力を怠らず精神的にも戦士として適性を示した貴方たちを殺すことにして良かったと改めて思います」
死んだはずの、ないしは死にかけとは思えないほどに軽い調子でアルルの声が響いた。
瞬時に距離を取り、武器を構える2人の少年。
「貴方たちは我らの大きな障害になりうる。だからこそ、改めて言いましょう」
今までも落とし穴から生き残った人間はいた。
元々、特別有能な人間を狙ったがゆえに突然の落とし穴に対応できた人間もそれなりにいたのだ。
が、ここまで完璧に対応されたのは初めてであった。
しかもそれを為したのが、経験を経た熟練者というわけではない、未だ20にもなっていない若者と来た。
これからさらに成長することも加味すれば、捨て置くという選択肢はない。
だからこそ。
「死ね」
倒れ込み、血に沈んだまま顔だけを2人に向けて彼女の両目が怪しく輝いた。
「……っ!」
「ちっ!」
何か来ると身構えるものの
「……………っ」
「……うん?」
10秒ほどが経過しても何も起こらなかった。
「まさかっ…」
それに対して、本当に驚いた顔を見せるアルル。
びっくりさせたい彼女の方がびっくりさせられたカタチになった。
「ま、まさか…貴方たち、今までにポーションを使ったことがない…?」
「…それが今の妙な真似と関係あるのかよ?」
「フォルフォー、…余計なことは喋るな。よく分からないが、彼女の表情を見るに想定していた攻撃が使えないらしい。たたみかけるぞ。死に体の相手だからって容赦はするなよ」
なぜ彼女が驚きの表情を見せたのか。
それを説明する前に、今回の一件に関するタネを明かすとしよう。
実のところ、この不思議なダンジョンはエルルの新たな人類への攻撃への布石であった。
その名も「便利アイテムを人類へ布教して、それが浸透した頃に全部無くしちゃえ大作戦」である。
エルルは普通の生物にはありえないほどに強力な性質を持つ魔王達といえど叡智を武器とする人類には分が悪いと考えた。
いや、考えたというよりは考え直した。
人類は魔王クリエイターという神から与えられたささやかな力程度で舐めてかかって良い相手ではないことに。
最初期の魔王ヨトウガを初め、全て返り討ちにあった魔王達。
人類は魔王を倒しうると認識し直し、ゆえの絡め手。
ゆえの何らかの形で人類に物資を供給してからそれに頼り切りなったところで、それらの供給を断つどころか一転して害悪極まりないアイテムに変貌させたら一気に人類の間引きが進むのではないか?と言う作戦を立てたのである。
この作戦のメリットは何と言っても神の都合に振り回されるエルル自身と魔王達の命を失うリスクが低いこと、対策を立てられづらいこと、準備が終われば大打撃を与えられそうなこととメリットが盛りだくさん。
ダンジョンと言う形での普及は魔法がある世界といえども些か不自然極まりなく、警戒させた部分はあっただろうが、その不信感を吹き飛ばすほどの素晴らしいアイテムの数々を前に人間が理性的に我欲を抑えられるはずもなし。
必ず。
必ず、怪しいのは元々だとそれでも欲しいんだと、手を伸ばす奴が出てくる。
そうなればそれを呼び水にさらに普及が広まる。
それら普及したアイテムは全てが、魔王クリエイターによって生み出されたダンジョンメイカーのジョンくんのスキル、ダンジョンクリエイトによって産み出されたものであり、とある条件はあれども、それさえクリアすれば好きなタイミングで消したり変質したりすることが可能だ。
ある日頼っていたダンジョン産の武器が消えたら?
致命傷を癒すための薬の中身が毒物になっていたら?
ゴブリンの毛皮を始めとするダンジョン産の魔獣の素材を元にした防具や道具が急に紙同然の耐久性になったら?
ダンジョン産の様々な物品が広まれば広まるほど、その時が来た時に与える人間社会へのダメージは甚大なものとなる。
今回の作戦に至り、サドラン帝国にダンジョンを作成したのはエルルの住まうプラベリアにて魔王達の住処としてのダンジョンを作っていたダンジョンメイカーとは別個体だ。
その詳細は以下のようになる。
名前 ダンジョンメイカー
個体名 ジョンくん
生物強度 20
スキル ダンジョンメイキング ダンジョンクリエイト ダンジョンワープ 掘削 俊敏 可変型巨体
個体名以外はミミズのような容姿からスキル構成に至るまでプラベリアにいるダンジョンメイカーのダンちゃんと全て一緒となっており、ジョンくんは毎日毎日、今回の大規模な作戦にあたり肝となるスキル、ダンジョンクリエイトを使用して、せっせとアイテムやダンジョンに出現させる魔獣達を作り続けた。
スキルの名前から勘違いしたかもしれない。
ダンジョンメイカーのダンジョンクリエイトというスキルはダンジョンをクリエイトするスキルではなく、ダンジョンでクリエイトする…厳密に言えばダンジョン内、かつ材料があれば何であろうと創り出せるというとんでもスキルなのである。
ダンジョン内限定ではあるが、ダンジョンメイカー達は神の如きスキルを所持しているのだ。
そう、例えば喋りたいからと、喋れないミミズのような体を喋れるように、女の子の体へ造り替えることだって出来てしまうのである。
血塗れで倒れていたアルルの顔だけが動き出し、2人の少年を視界に収めながら口を動かした。
「なかなかどうして。実に優秀ですね。敵と判断した途端、見た目に惑わされず、多少なりとも会話した相手にも関わらず容赦なく殺しにくるとは。才気はもちろん、努力を怠らず精神的にも戦士として適性を示した貴方たちを殺すことにして良かったと改めて思います」
死んだはずの、ないしは死にかけとは思えないほどに軽い調子でアルルの声が響いた。
瞬時に距離を取り、武器を構える2人の少年。
「貴方たちは我らの大きな障害になりうる。だからこそ、改めて言いましょう」
今までも落とし穴から生き残った人間はいた。
元々、特別有能な人間を狙ったがゆえに突然の落とし穴に対応できた人間もそれなりにいたのだ。
が、ここまで完璧に対応されたのは初めてであった。
しかもそれを為したのが、経験を経た熟練者というわけではない、未だ20にもなっていない若者と来た。
これからさらに成長することも加味すれば、捨て置くという選択肢はない。
だからこそ。
「死ね」
倒れ込み、血に沈んだまま顔だけを2人に向けて彼女の両目が怪しく輝いた。
「……っ!」
「ちっ!」
何か来ると身構えるものの
「……………っ」
「……うん?」
10秒ほどが経過しても何も起こらなかった。
「まさかっ…」
それに対して、本当に驚いた顔を見せるアルル。
びっくりさせたい彼女の方がびっくりさせられたカタチになった。
「ま、まさか…貴方たち、今までにポーションを使ったことがない…?」
「…それが今の妙な真似と関係あるのかよ?」
「フォルフォー、…余計なことは喋るな。よく分からないが、彼女の表情を見るに想定していた攻撃が使えないらしい。たたみかけるぞ。死に体の相手だからって容赦はするなよ」
なぜ彼女が驚きの表情を見せたのか。
それを説明する前に、今回の一件に関するタネを明かすとしよう。
実のところ、この不思議なダンジョンはエルルの新たな人類への攻撃への布石であった。
その名も「便利アイテムを人類へ布教して、それが浸透した頃に全部無くしちゃえ大作戦」である。
エルルは普通の生物にはありえないほどに強力な性質を持つ魔王達といえど叡智を武器とする人類には分が悪いと考えた。
いや、考えたというよりは考え直した。
人類は魔王クリエイターという神から与えられたささやかな力程度で舐めてかかって良い相手ではないことに。
最初期の魔王ヨトウガを初め、全て返り討ちにあった魔王達。
人類は魔王を倒しうると認識し直し、ゆえの絡め手。
ゆえの何らかの形で人類に物資を供給してからそれに頼り切りなったところで、それらの供給を断つどころか一転して害悪極まりないアイテムに変貌させたら一気に人類の間引きが進むのではないか?と言う作戦を立てたのである。
この作戦のメリットは何と言っても神の都合に振り回されるエルル自身と魔王達の命を失うリスクが低いこと、対策を立てられづらいこと、準備が終われば大打撃を与えられそうなこととメリットが盛りだくさん。
ダンジョンと言う形での普及は魔法がある世界といえども些か不自然極まりなく、警戒させた部分はあっただろうが、その不信感を吹き飛ばすほどの素晴らしいアイテムの数々を前に人間が理性的に我欲を抑えられるはずもなし。
必ず。
必ず、怪しいのは元々だとそれでも欲しいんだと、手を伸ばす奴が出てくる。
そうなればそれを呼び水にさらに普及が広まる。
それら普及したアイテムは全てが、魔王クリエイターによって生み出されたダンジョンメイカーのジョンくんのスキル、ダンジョンクリエイトによって産み出されたものであり、とある条件はあれども、それさえクリアすれば好きなタイミングで消したり変質したりすることが可能だ。
ある日頼っていたダンジョン産の武器が消えたら?
致命傷を癒すための薬の中身が毒物になっていたら?
ゴブリンの毛皮を始めとするダンジョン産の魔獣の素材を元にした防具や道具が急に紙同然の耐久性になったら?
ダンジョン産の様々な物品が広まれば広まるほど、その時が来た時に与える人間社会へのダメージは甚大なものとなる。
今回の作戦に至り、サドラン帝国にダンジョンを作成したのはエルルの住まうプラベリアにて魔王達の住処としてのダンジョンを作っていたダンジョンメイカーとは別個体だ。
その詳細は以下のようになる。
名前 ダンジョンメイカー
個体名 ジョンくん
生物強度 20
スキル ダンジョンメイキング ダンジョンクリエイト ダンジョンワープ 掘削 俊敏 可変型巨体
個体名以外はミミズのような容姿からスキル構成に至るまでプラベリアにいるダンジョンメイカーのダンちゃんと全て一緒となっており、ジョンくんは毎日毎日、今回の大規模な作戦にあたり肝となるスキル、ダンジョンクリエイトを使用して、せっせとアイテムやダンジョンに出現させる魔獣達を作り続けた。
スキルの名前から勘違いしたかもしれない。
ダンジョンメイカーのダンジョンクリエイトというスキルはダンジョンをクリエイトするスキルではなく、ダンジョンでクリエイトする…厳密に言えばダンジョン内、かつ材料があれば何であろうと創り出せるというとんでもスキルなのである。
ダンジョン内限定ではあるが、ダンジョンメイカー達は神の如きスキルを所持しているのだ。
そう、例えば喋りたいからと、喋れないミミズのような体を喋れるように、女の子の体へ造り替えることだって出来てしまうのである。
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本当に、ありがとうございます。
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小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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