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Ⅵ章 衰亡
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エルルの居たプラベリア辺境の魔王ダンジョンから、ところ変わり。
サドラン帝国、首都サドランにて沢山の人々が集まる厳かな装飾の為された一室。
これまた厳かな扉には会議室と金色で書かれたプレートが貼り付けてある。
そして、その一室に立ち並ぶ顔ぶれはサドラン帝国に住む人はもちろんのこと、周辺諸国の一般市民ですら知っているような有名人…すなわちメディア露出しやすく覚えられやすい、特にお偉い人たちが一堂に会していた。
ギィ、と。
出入り口となる扉が開く。
今回の集まりにおける最後の1人、サドラン帝国皇帝、サドランの入室と同時に居並ぶ人全てが頭を下げた。
「面を上げよ。今は火急の時。挨拶は省略で良い。席につき、すぐに話を進めよう」
サドラン皇帝の言葉と共に、皆が着席する。
サドラン帝国は帝国の名がつく前からの歴史を含めると非常に長い歴史を持つ。
その上、サドラン帝国の前身にあたる小国の頃に即位した初代サドラン帝国皇帝から現在に至るまでに皇帝の血筋は絶え間なく10000年以上の歴史を持ち、その家系図は過去に大きな内戦が起きた際に紛失したために分からなくなった過去の代を省いてもなお500代ほどが続くと言われている。
紛失した分も含めれば軽く4桁に達すると言う歴史学者もいるほどだ。
実際には地球に比べて魔力というエネルギーがある分、寿命が長い傾向にあり、結果4桁には行かないというのが通説である。地球において長く続くお偉い血筋の一つに日本における天皇一族の例を考えれば分かることだが、2700年ほどの歴史で120代と少しといったところなので、10000年程度では紛失した分を含めてもせいぜいが600~700代くらいだとのことだ。
何はともあれ、10000年以上をかけて600~1000世代ほどに至るまで長く続いてきた貴族の血統の末裔。
それが現在のサドラン帝国皇帝であった。
それだけ長い間、淘汰されずに生き残ってきた血統なだけあり、人よりも頭ひとつ分優秀な者が生まれやすい血筋でもある。
「では僭越ながら、軍部総括最高責任者たる私、アルブマが司会進行を務めさせていただきます」
その声と共に、1人の40代半ばほどに見えるアルブマと名乗る男が立ち上がり、他の人間の目線が合いやすい場所へと歩き出した。
そして助手らしき若い青年がホワイトボードを引き連れてアルブマの横へと配置する。
ちなみにお偉い人たちが立ち並ぶこの会議室内にて、軍部のトップである彼が立場が1番低いことから、この集まりがいかに豪勢なメンツを揃えていることが窺える。
「まずは此方の写真をご覧いただきたい」
そう言ってアルブマはあらかじめホワイトボードに貼り付けてあった写真へ指をさした。
写真は10枚ほど。
大まかに二種類の写真があり、ジョンくんが創ったサドラン帝国ダンジョンの崩壊した後の様子が映っているものと、魔王キノコが巨大化した姿がいくつかの角度で撮影されているものと合わせて10枚である。
「改めて見てもこれは…」
「なんなのだこいつは」
「せっかくの資源回収の機会が失われたのはコイツのせいか?ログマントマンドラゴラは非常に希少かつ需要が高かったのに、もったいないな」
「洞窟は魔女が潰したという話だが…」
「人的被害はいかほどか報告は見ていたが…全くもって死傷者がゼロというのは幸運だったな」
ざわざわと思わずとばかりに飛び交うさざめき。
しかし、サドラン帝国のヒエラルキーにおける頂点周りの人々なだけはあり、一分と経たずにすぐに静かになる。
話を促す空気が作られたところでアルブマが再度口を開いた。
「すでに報告書を目に通した方々もおられるでしょうが、認識を共有するべく、改めて説明させていただきます。
まずこちらの…」
アルブマは巨大化した魔王キノコの写真数点を指して
「この未確認巨大生物ですが、一昨日に突如発生。いくつかの目撃情報から眉金《びきん》の魔女の持つ装具によって倒されたそうです」
「眉金の魔女?まだ生きていたのか?ここ数百年確認されていなかったために流石に死んだと判断していたが…いや…彼女が今更ながらに死ぬはずもないか。ということは彼女は現在、この国に住んでいる?」
「そうだと分かる報告は情報部にも上がっておりません。眉金の魔女は最古参の魔女達の1人。転位魔術で別の国…おそらくは1番住みやすく、転位できるプラベリアあたりからやってきたと思われます」
「ふむ。些か腑に落ちんな。いくら眉金の奴とてプラベリアからダンジョンが発生した超大都市アズール跡地に突如として出現した怪物を察知できるものか?」
「眉金の魔女が密かにダンジョンに通っていた可能性もありますが…」
「だとしても伝え聞く過去の彼女の性格からしてわざわざ倒していくというのは…不自然であろう。力があるからと関係のない見ず知らずの人間や街を守るような正義漢とは思えん。魔女の気まぐれであろうか?気まぐれと言うには大それたことであるが」
「なに、なんにせよ我々からすれば助かるというもの。今はそれよりもコイツが何なのか?再出現はあるか?ダンジョンから得られていた資源の回収事業はどうなったのか?それらを話し合うべきでしょう」
「然り。ローグル殿の言う通り、今はひとまず…」
その後も彼らの話し合いは粛々と勧められ、概ね話し合うべきことを話し終えるまでに約3時間ほどを必要としたのであった。
エルルの居たプラベリア辺境の魔王ダンジョンから、ところ変わり。
サドラン帝国、首都サドランにて沢山の人々が集まる厳かな装飾の為された一室。
これまた厳かな扉には会議室と金色で書かれたプレートが貼り付けてある。
そして、その一室に立ち並ぶ顔ぶれはサドラン帝国に住む人はもちろんのこと、周辺諸国の一般市民ですら知っているような有名人…すなわちメディア露出しやすく覚えられやすい、特にお偉い人たちが一堂に会していた。
ギィ、と。
出入り口となる扉が開く。
今回の集まりにおける最後の1人、サドラン帝国皇帝、サドランの入室と同時に居並ぶ人全てが頭を下げた。
「面を上げよ。今は火急の時。挨拶は省略で良い。席につき、すぐに話を進めよう」
サドラン皇帝の言葉と共に、皆が着席する。
サドラン帝国は帝国の名がつく前からの歴史を含めると非常に長い歴史を持つ。
その上、サドラン帝国の前身にあたる小国の頃に即位した初代サドラン帝国皇帝から現在に至るまでに皇帝の血筋は絶え間なく10000年以上の歴史を持ち、その家系図は過去に大きな内戦が起きた際に紛失したために分からなくなった過去の代を省いてもなお500代ほどが続くと言われている。
紛失した分も含めれば軽く4桁に達すると言う歴史学者もいるほどだ。
実際には地球に比べて魔力というエネルギーがある分、寿命が長い傾向にあり、結果4桁には行かないというのが通説である。地球において長く続くお偉い血筋の一つに日本における天皇一族の例を考えれば分かることだが、2700年ほどの歴史で120代と少しといったところなので、10000年程度では紛失した分を含めてもせいぜいが600~700代くらいだとのことだ。
何はともあれ、10000年以上をかけて600~1000世代ほどに至るまで長く続いてきた貴族の血統の末裔。
それが現在のサドラン帝国皇帝であった。
それだけ長い間、淘汰されずに生き残ってきた血統なだけあり、人よりも頭ひとつ分優秀な者が生まれやすい血筋でもある。
「では僭越ながら、軍部総括最高責任者たる私、アルブマが司会進行を務めさせていただきます」
その声と共に、1人の40代半ばほどに見えるアルブマと名乗る男が立ち上がり、他の人間の目線が合いやすい場所へと歩き出した。
そして助手らしき若い青年がホワイトボードを引き連れてアルブマの横へと配置する。
ちなみにお偉い人たちが立ち並ぶこの会議室内にて、軍部のトップである彼が立場が1番低いことから、この集まりがいかに豪勢なメンツを揃えていることが窺える。
「まずは此方の写真をご覧いただきたい」
そう言ってアルブマはあらかじめホワイトボードに貼り付けてあった写真へ指をさした。
写真は10枚ほど。
大まかに二種類の写真があり、ジョンくんが創ったサドラン帝国ダンジョンの崩壊した後の様子が映っているものと、魔王キノコが巨大化した姿がいくつかの角度で撮影されているものと合わせて10枚である。
「改めて見てもこれは…」
「なんなのだこいつは」
「せっかくの資源回収の機会が失われたのはコイツのせいか?ログマントマンドラゴラは非常に希少かつ需要が高かったのに、もったいないな」
「洞窟は魔女が潰したという話だが…」
「人的被害はいかほどか報告は見ていたが…全くもって死傷者がゼロというのは幸運だったな」
ざわざわと思わずとばかりに飛び交うさざめき。
しかし、サドラン帝国のヒエラルキーにおける頂点周りの人々なだけはあり、一分と経たずにすぐに静かになる。
話を促す空気が作られたところでアルブマが再度口を開いた。
「すでに報告書を目に通した方々もおられるでしょうが、認識を共有するべく、改めて説明させていただきます。
まずこちらの…」
アルブマは巨大化した魔王キノコの写真数点を指して
「この未確認巨大生物ですが、一昨日に突如発生。いくつかの目撃情報から眉金《びきん》の魔女の持つ装具によって倒されたそうです」
「眉金の魔女?まだ生きていたのか?ここ数百年確認されていなかったために流石に死んだと判断していたが…いや…彼女が今更ながらに死ぬはずもないか。ということは彼女は現在、この国に住んでいる?」
「そうだと分かる報告は情報部にも上がっておりません。眉金の魔女は最古参の魔女達の1人。転位魔術で別の国…おそらくは1番住みやすく、転位できるプラベリアあたりからやってきたと思われます」
「ふむ。些か腑に落ちんな。いくら眉金の奴とてプラベリアからダンジョンが発生した超大都市アズール跡地に突如として出現した怪物を察知できるものか?」
「眉金の魔女が密かにダンジョンに通っていた可能性もありますが…」
「だとしても伝え聞く過去の彼女の性格からしてわざわざ倒していくというのは…不自然であろう。力があるからと関係のない見ず知らずの人間や街を守るような正義漢とは思えん。魔女の気まぐれであろうか?気まぐれと言うには大それたことであるが」
「なに、なんにせよ我々からすれば助かるというもの。今はそれよりもコイツが何なのか?再出現はあるか?ダンジョンから得られていた資源の回収事業はどうなったのか?それらを話し合うべきでしょう」
「然り。ローグル殿の言う通り、今はひとまず…」
その後も彼らの話し合いは粛々と勧められ、概ね話し合うべきことを話し終えるまでに約3時間ほどを必要としたのであった。
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本当に、ありがとうございます。
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小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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