魔王クリエイター

百合之花

文字の大きさ
130 / 132
Ⅵ章 衰亡

130

しおりを挟む
ドーラのドラゴンブレスは超巨大都市ゴモランの防壁に直撃した。
瞬間、轟音が鳴り響く。
凄まじい閃光を放ち、数秒してドラゴンブレスは8つ又に弾けて分かれ、周囲を焼き払うに留まった。

「うわ、初めてまともに防がれたかも…これは苦戦しそうだな」とはエルルの談。

ゴモランの防壁は中心部が融解し、何枚もの分厚い装甲を重ねた防壁がひしゃげて、斜めに傾いていた。
ところどころにヒビが入り、一部からは煙が上がっている。
周囲の地面は抉れ、吹き飛んだ土砂が周りに飛び散っている様子は満身創痍という言葉がふさわしい。
決して余裕があるわけではないし、同じ場所への再度の攻撃が来れば流石に保たないことは一目瞭然。
だが、超巨大都市ゴモランの防壁はドーラの一撃を確かに防いだのだ。

「ぐぬぅっ!?凄まじい揺れだったが…被害状況を報告しろ!!」
「IからK区画の防壁破損!直撃を受けたJ区画防壁は大破!防壁内部の障壁発生エンジンも大破しました!次は持ちません!!奴のドラゴンブレスの距離による威力低下は想定よりもかなり低い模様!」
「防壁の切り替えは!?」
「ダメです!操作できません!!…今、連絡が来ました!防壁が傾いているとのこと!斜めになっているせいか、可動連結部も破損しているようで、J区画防壁は動かせません!!I区画、K区画防壁も稼働はするものの、動きがかなり制限されてます!」
「やむを得ん!3つの防壁区画は捨てる!近くで布陣を敷いている奴らを別の場所に…」
「待ってくださいっ!再度高エネルギー反応を検知!!また来ます!あれだけの高威力攻撃が短いスパンで連発されるなんて…聞いてはいましたが、やっぱりヤバすぎです!!」
「ぬぁなぁにぃっ!?この距離を届かせるドラゴンブレスは今まで観測された以上のエネルギーが必要なはず…それでなお今までと変わらぬ連射性となれば…どちくしょうめ!!
もはや布陣の移動は間に合わん!この際、死ぬまでの僅かな時間で少しでも攻撃を喰らわせろっ!!死中に活を求めろっ!黒竜は捕捉出来たな!?」
「大丈夫です!
各所に設置されてる大砲に位置情報を送信しました!」
「よし!大砲によるターゲットは全て黒竜に変更!向かってくる巨大ナマコとは歩兵の携行火器や都市内部の戦車で迎え撃てっ!!少しでも時間を稼げよ!言うまでもなく、チャンスがあればブッ殺せっっ!!」
「通達完了!
すぐさま砲撃が開始され…うわぁっ!?」

しばらくして再度の揺れが起超巨大都市ゴモランの中央部にまで届く。
が、先程よりは遥かに少ない揺れである。
訝しむも一瞬。

「被害状況は!?」

ガルシア元帥は現状確認を急がせる。

「それが、損傷、極軽微です!信じられません!」
「詳細はまだか!?」
「…来ました!どうやら、ドラゴンブレスの2発目はJ区画防壁の上半分に当たってそのまま上空へと逸れた模様です!逸れる際に幾らかの高層建築物や大砲が倒壊しましたが、ドラゴンブレスの威力からすれば信じられないほどの軽微な損害です!」
「…何が起こった?」
「…どうやらJ区画のやぶれかぶれの大砲が黒竜頭部に直撃。黒竜は依然、健在のままで致命傷には程遠いようですが直撃したために狙いが逸れたのだと思われます」
「でかした!!その調子でひたすらに撃ちまくれ!」

ドーラの外殻は貧弱というわけではない。
が、そこまで強靭なものではない。
少なくとも砲弾による頭部への一撃による衝撃を殺しきれずに、気が遠のき、ふらつくくらいには。
しかも建築物に設置、固定するタイプの大砲は動かす必要がある戦車に搭載する大砲よりも大型化しやすく、ゆえに使われる砲弾もより巨大で貫通力、衝撃力共により強力なものである。
頭部へのクリーンヒットは見事にドーラの攻撃を逸らした結果、兵士の一部は命拾いしたのだ。
この土壇場でありながらも実に素晴らしきファインプレーである。

感動的とも言えた。
だが無意味だ。
なぜならば。

敵はドーラと人腕ナマコのみにあらず。

新たな魔王が都市に忍び寄っていた。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...