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六話
真っ赤な月が輝く空を、レフィは常よりも高い場所から見上げていた。魔王城の客間に、漣のような静寂が広がる。こうしてレフィが魔王城に宿泊するのは、これが初めてのことだった。淫魔領から魔王城まではさして遠くもないため、レフィは日毎城に通うばかりで、魔王城に留まることはなかったのだ。
レフィ自身は、今日も同じように、淫魔領へと帰るつもりだったのだが、マリウスが念の為様子を見た方がよいといって、半ば強制的にレフィを城に留めた。
魔王ソーマには、未だ会ってはいない。どうやらとうに帰還はしているようだが、自ら会いに行くことに、レフィは二の足を踏んでいた。らしくもない、とレフィ自身感じている。
本来ならばすぐにでもソーマの許に向かい、助けられたことに感謝を述べるべきである。それはよく分かっているが、今ソーマに会って、どんな顔をすればよいのか、レフィは考えあぐねていた。
「魔王様……」
紅の三日月をじっと見つめて、レフィは小さく呟く。このままではいけない。自分はもっと、感情に素直に生きることが出来る筈だ。それが自分の、唯一と言ってもよい取り柄だと、レフィは思っていた。ならば今、自分はどうしたいのか。暫し考えて、拳を握る。答えはひどく簡単だった。
「レフィは、魔王様に会いたい……!」
今日一日のうちに起きたことが、ぐるぐるとレフィの頭を回っている。正直なところ色々とありすぎてレフィには処理しきれないままだったが、それはそれとして、今はソーマに会いたかった。とにかく会って、礼を言わなければならない。
そわそわと落ち着かない様子で部屋をうろついた後、レフィは意を決して、ソーマの許に向かうことにした。きっと今頃はソーマも寝室だろう。そう判じて、客間の扉を開こうとしたところ、全く時を同じくして、こんこんと扉がノックされた。
「ひえっ! は、はいっ? どちらさまです?」
「俺だ」
「ま、ままま魔王様っ!」
大袈裟に肩を跳ね上げると、レフィは慌てて扉を開けた。そこには既に寝間着を纏ったソーマが立っている。あまりにも都合のよいタイミングに、レフィは思わず読心術でも使われたのかと考えてしまった。
「あ、あのっ、いらっしゃいませ!」
「なんだそりゃ。何の店だよここは」
「あ、そうですよね、えーっと、それじゃあえっと、おかえりなさいませ?」
「一応客のお前がそれを言うのもな……」
「じゃあその、えっと、うーんと、うう……」
こんがらがった頭で考えてみるものの、レフィの思考に適切な言葉は浮かんでこなかった。そもそも自分が何を言いたいのかも、いまひとつよく分かってはいない。よもやソーマの方から訪ねて来るなどとは思いもよらず、完全に頭はいっぱいいっぱいだった。
「はは、アホ面」
「いたっ!」
ソーマがくしゃりと笑いながら、レフィの額を指で弾く。じんと広がる痛みに額を押さえながら、レフィは唇を尖らせた。
「むぅ、魔王様ひどいです、痛いですっ」
「普段から散々ボディに一撃入れてくる奴が何を言うか」
「あれはレフィの愛です」
「そうか、じゃあそれも俺の愛だ。よかったな」
「うう、あんまり嬉しくない……」
不服そうに眉を寄せながら、しかしレフィは、内心少し安堵していた。目の前にいるソーマは、紛れもなく、レフィの知っているソーマだ。その視線も、表情も、声も、言葉も、何も変わらない。何をしたとしても、どんな力があっても、ソーマはソーマなのだ。それを今、レフィははっきりと実感していた。
「あの……魔王様」
「うん?」
「今日は、レフィを助けてくださって、ありがとうございました」
「ああ、はいはい。どういたしまして」
「えへへ、魔王様、とってもとってもかっこよかったですよー。レフィはどきどきしました」
レフィは腕を伸ばして、ソーマの胸にぎゅっと抱きついた。湯浴みをしてきた後なのか、少し高い体温が心地よく感じられる。思えばソーマに助けられるのは、これで二度目になるのだ。改めて思い返すと、むくむくと高揚感が湧き上がってくる。そうなれば、当然の如くいつものお決まりの台詞が、さらりと口から溢れ出た。
「魔王様ぁ、今日はレフィのこと抱いてくださいますか?」
「ああ、いいよ」
「もう、魔王様ったらまたそんなこと……ん?」
いつものように、つれないソーマに掛ける筈の言葉が、途中で止まった。
「お前が本当にそれでいいんならな」
「え? ま……魔王、さ、ま? あれ、え? 今なんて言いました?」
まさか。ソーマは今、よもや了承の言葉を口にしなかったか。いやそんな筈はない。さすがにそれはレフィ自身の都合のよい幻聴だ。ソーマに限ってそんなことがある訳がない。
自分から言い出したことであるにも関わらず、まずレフィの思考に浮かんできたのは疑念だった。そんな訳がない、とレフィの頭の中で冷静な誰かが首を振る。ソーマに抱かれることを望むあまり、ついに幻聴まで聞こえるようになったという説の方が、レフィの中では有力だった。その程度には、レフィはソーマの気持ちを信じていなかった。
「だから、抱いてやるよって」
「え、え、え……!」
さらりと落ちてきたその言葉は、まさしく青天の霹靂。今度はさすがに聞き間違いではない。ソーマは今、確かに、レフィを抱くと、そう言ったのだ。自覚された瞬間、レフィの体温がかっと急上昇する。殆ど硬直しながら、レフィは零れ落ちそうなほど目を見開いて、ソーマを見上げた。
「なんでですか……!」
「いや、お前が抱いてくれつったんだろ」
「そ、そうですけど、そうですけどっ!」
思考が全く追い付かない。確かに、レフィはソーマに抱かれることを望んでいた。しかし、それと同時に、ソーマがそう易々と頷くことはないと、勝手に思い込んでいたのだ。そのせいで、ソーマがいいと言った時のことを、全く考えていなかった。
「お前が本当に、俺に抱かれたいなら。それで後悔しないと誓えるなら、俺はお前を抱いてやる」
「ほ、ほ、本当に……?」
「ああ。お前こそ、本当にいいんだな。俺に抱かれて」
「い、いいに、いいに決まってます……!」
「それで、どんな結果になっても?」
「え……?」
どうして、そんなことを聞くのだろうか。レフィはおずおずと視線を上げて、ソーマの顔色を窺う。レフィを見下ろす漆黒の瞳からは、何の感情も読めはしなかった。ただその眼差しにレフィの姿を映して、ソーマは答えを待っている。何故だか胸がどきりと騒いで、レフィは知れず胸元を押さえた。
「レ、レフィは、レフィは……」
唇が乾く。声が喉の方で突っかかって、うまく出てきてくれない。懸命に唾を飲み込んで、レフィは軋む頭を無理矢理動かしては言葉を探した。伝えなければならないことがある。それはきっと、とても重要で、けれどあまりに、あっけないほど簡単なことだ。レフィはいつだって、自分の心に正直に生きてきた。昔も、今も、変わらずに。だからこそ、分かることがある。レフィは己のことを、決して頭がよいとは言えないと自覚しているが、これだけは、決して間違えてはならないし、間違えない。
「レフィは、魔王様が、いいです」
ソーマは、レフィにとってのたった一人だ。レフィは彼が魔王であるから近付いた訳ではない。彼が何者であろうとも、レフィはきっと、ソーマを選んでいた。彼の過去がどんなものでも、現在がどうあるとしても、未来がどうなるとしても。レフィの心の奥底にある気持ちは、何ひとつ変わらない。それだけは、確かだ。透き通る意志のままに、レフィは真っ直ぐにソーマを見つめて、言葉を紡いだ。
「──そうか」
ほんの僅かに、ソーマの唇が笑みを形作る。その視線の奥に宿る感情が、一瞬垣間見えた気がした。レフィが今まで、一度も目にしたことのない、ひどく優しく、それでいて何故だか足の竦んでしまうような恐ろしさを秘めた、瞳の色。
「あの、まお……んっ」
唇に、柔らかな体温が重なった。ソーマの腕が、レフィの背を、腰を抱き寄せる。レフィは今まで何度となくソーマに抱き着いてきたが、こうして彼がレフィを抱き締めるのは、初めてのことだった。ソーマの腕は、レフィが思っていたよりも、ずっと強く、熱い。レフィの足が、床から浮く。思わず足をばたつかせるレフィだったが、軋むほど強く身体を抱く腕の力は、少しも揺るがぬままだった。レフィを軽々と抱き上げて、ソーマは震える唇を、舌でなぞるように舐め上げる。
「ぁ、んんっ……ふ、ぁ」
「レフィ、口、開けろ」
ソーマの言葉に促され、レフィは怯えるようにゆっくりと、唇を開く。その隙間から押し入ってくる肉厚の舌が、レフィの口蓋をぞろりと舐め上げ、敏感な粘膜を擽った。
「あ、ぁ、んんっ……」
口の中を掻き回され、舌を吸われる。背中の粟立つ感覚と共に、レフィは鼻に抜けるような甘い声を洩らした。レフィにとって、初めての口付け。知らない感覚が全身を震わせ、指先が怖気付く。思わず顔を引こうとするレフィだったが、それを制するように、ソーマの手がレフィの頭を押さえ付けた。
「ふ、ぁあ、ん、んんぅぅ……っ」
吐息ごと奪うような口付けに、レフィの頭がぐらりと眩む。角度を変え、幾度も重なる唇は、かつてレフィがいくら粉をかけてもさらりとあしらっていた男のものだとは、到底思えなかった。舌先を吸われ、歯列を辿られ、喉奥までも舐められる口付け。レフィの唇から零れ落ちた唾液が喉に伝う感覚すら、痺れるような快楽を湧き上がらせる。
「ぁ、まお、ひゃ……んぅっ……!」
レフィの身体を抱いたまま、ソーマはベッドに倒れ込む。胸の上に乗るソーマの体重に、レフィは思わず身を竦ませた。今までレフィがじゃれついて、こんな体勢になったことは何度かある。けれどもその時とは、何もかもが違う。無理矢理引き寄せられて迷惑そうに頭を掻いていたあの時のソーマよりも、ずっと重い。今レフィの上に乗っているのは、決して逃げることを許してくれない、男の重さだ。彼がほんの少しその気になるだけで、レフィの小さな身体など、容易く拘束してしまえるのだ。そんな当たり前の事実が、改めて実感される。
「ん、んっ、ふぁ、ぁ……っ」
小さな唇を好き放題に掻き混ぜて、ソーマはようやくレフィから唇を離す。舌先からとろりと落ちた唾液が、レフィの喉にゆっくりと滑り降りていった。混じり合い、泡立った粘液が、ひどく甘く感じられる。既に全身からじんわりと力の抜けた状態で、レフィは茫洋と、ソーマの瞳を見上げた。
「ま、魔王、さま……」
薄闇の中、レフィを見下ろすその眼差し。いつも怠惰で、軽薄だったソーマの双眸が、ぎらつく熱を帯びてレフィを捉えていた。どこか愉しげに唇を歪ませながら、ソーマはするりとレフィの頬を撫でる。
「……間抜け面」
揶揄うように指先で耳を擽られ、レフィはぞわりと背を震わせた。常よりも低い、ソーマの声。鼓膜に響くそれが、そのまま熱となって全身に伝播してゆく。ソーマがこんな、ぞっとするような艶を孕んだ声を出せることを、レフィは初めて知った。
「ま、おう、さま……その、ほ、ほんとに、レフィのこと……?」
「抱くよ。はなっからそのつもりで来たしな」
「え、え? それって──っ、あぅ!」
その言葉の真意を問う前に、レフィは背筋を駆け抜けた痺れに、びくりと肩を跳ねさせた。首から肩へ伝う、ソーマの唇。濡れた吐息が肌を擽り、時折強く吸い付かれる。大きな手がレフィの身体の線に沿って撫で回し、無防備な淫魔の服を捲り上げた。
「ひゃっ……ぅ」
「……白いな」
レフィの平らな胸の中心を、ソーマの指先がつうとなぞる。触れるか触れないかの境界を漂うようなもどかしさに、レフィはゆっくりと身を捩った。
「ま、魔王さま、なんか、触り方がやらしいですよぉ……」
「たりめーだろ、やらしい事してんだよ」
何を今更、と喉で笑いながら、ソーマが己の襟元に手を伸ばす。薄い寝間着の胸元が開き、そのままするりと布が肩から落ちて、裸体が露わになった。ソーマの身体ならば、レフィは着替えの際に何度となく目にしている。けれども視線は、吸い寄せられるように彼の肉体に釘付けになった。
肩の稜線、広い胸板、締まった腰、腹部の起伏。見慣れている筈のソーマの裸身を、レフィはひどく意識してしまう。薄っぺらいレフィの身体とはまるで違う、二の腕や胴からしっかりとした密度を感じる肉体だった。
「……何だよ、じろじろ見て。そんな珍しいもんでもないだろ」
呆れたように笑いながら、ソーマは寝間着を丸めてベッドの下に放り投げてしまう。レフィはソーマの身体が作り出す陰影から視線を外せないまま、こくりと唾を飲み込んだ。
「わ、わかんな……どきどき、します」
「そうか?」
「はい……な、なんか、すごく……」
「ふうん……じゃあ」
ソーマの手が無造作に伸びて、レフィの腕を掴む。そのまま身体を起こされて、レフィはソーマの前に膝立ちになった。掴まれた腕が引かれ、掌が、何かに触れる。熱く、それでいて硬い感触。ひとの、肌の温度だ。レフィはソーマに誘われるまま、彼の胸元に、そっと手を触れていた。レフィを下から見上げながら、ソーマは熱を帯びた眼差しを眇める。
「好きに触っていいよ」
「え、え……っ」
「お前のしたいようにすればいい。俺も好きにするし」
「ふぇ、あ、魔王様っ……!」
戸惑うレフィに構わずに、ソーマはレフィの腰をさらりと撫でる。胸の中心に啄むような口付けを落とされ、レフィはぶるりと背を慄かせた。濡れた舌が、なだらかなレフィの胸元を這う。
「ひぁ、ううっ……ま、まお、さま……ぁ」
好きにしろと言われたにも関わらず、レフィに出来たのはソーマの肩に縋るように手を掛けることくらいのものだった。かたかたと震戦する指先を捕まえて、ソーマが苦笑を零す。
「お前、仮にも淫魔だろ。そんなんでどうすんだよ」
「い、淫魔です、淫魔ですけどっ……でも、は、はじめてなんですっ……全部、魔王様が、はじめて……」
淫魔といえば性技に長け、奔放に相手を弄ぶ印象を抱かれがちだが、何も生まれた時から全員がそうという訳ではない。口付けすらも初めてのレフィにとっては、何もかもが未知の世界だった。じくじくと腹の底から熱がせり上がってくるような感覚も、匂い立つ性の気配に全身がざわめくのも。
「だ、だから、その、ちゃんと出来なくて、ごめんなさい……」
羞恥に頬を染めながら、レフィは頼りなく揺らぐ声でそう囁いた。勿論のこと、レフィも無知な訳ではない。淫魔として、閨事がいかなるものか、種々の話を聞き及んでいる。しかしながら、話を聞くのと実践するのとでは、それこそ天と地ほどの隔たりがあった。
「別に、謝るもんでもないだろ」
「で、でも……」
「いいよ、知らなきゃ俺が教えてやるから。お前はそのまま、しっかり感じてな」
「ぁ、魔王さ──っ、は、ぁうっ!」
瞬間、びりりと背中を走り抜けた感覚に、レフィは言葉を途切れさせた。殆ど反射的に、ソーマの肩に爪を立ててしまう。剥き出しになった胸が、火の着いたように熱かった。
「あ、ゃ、あぁぁ、まお、さ……んんんっ!」
ソーマの舌が、胸の先端に色付いた突起を舐め上げる。舌先でぐりぐりと押し潰すように捏ねられながら、乳輪ごと吸い上げられ、レフィの腰ががくんと跳ねた。唾液をたっぷりと乗せた舌にざらりと先端を擦られると、頭の中で何かがどろどろと溶け出す音がする。
「ひっ……ぁ、あっ、それ、そんな、っひ、ぁうぅぅっ……」
胸の上でつんと自己主張するそれが、どんどん硬く尖っていくのが分かった。刺激を受けて真っ赤に染まった突起が、粘液に濡れ光っているのが、ソーマの唇の隙間から垣間見える。ぞわりとレフィの背が震える度に硬くなってゆくそこを、こりこりと甘噛みされれば、指先まで痺れるような快楽が走り抜けた。
「あ、ふ、っああ、ん、まお、しゃま、ぁぁ……!」
レフィの大きな瞳がじんわりと滲み、眦に熱い涙が溜まる。戦慄くレフィの腰を引き寄せると、ソーマが下着の隙間から手を入れ、脈打つような熱を持ったレフィの性器に手を掛けた。
「……こっちは大分、その気だな」
「ふぁ、ううぅ、って、だってぇ……」
くつくつと笑いながら、ぴんと勃った性器の先端を弾かれる。ひどく色の薄いレフィの屹立からは、期待するようにとろとろと透明な粘液が零れ落ちていた。大きな手の中にすっぽりとそれを握り込まれると、細い腰がぞわりと揺れる。
ソーマの唇が、高く濡れた音を立ててレフィの胸を啜り上げた。同時に、根元から絞り上げるように性器を擦り立てられる。身体の中でどろついた熱がぶわりと弾けてゆくような感覚に、レフィは甘ったるく声を上げた。
「くぅ……んんっ、あ、ぁっ、まお、しゃま、それ、しょれぇ……っ」
レフィの内腿がかくかくと震え、そのまま崩れ落ちそうになる。片腕で腰を支えながら、ソーマはレフィの胸の突起を、濡れた性器をゆっくりと弄んだ。レフィの全身が、怯える小動物のように細かく痙攣する。
淫魔の身体は快楽に正直で、貪欲だ。思考を掻き乱すような快感に翻弄されながら、レフィは本能のまま腰を揺らし、もっとと強請るように胸を突き出した。
「こういうところは、さすがに淫魔か。やりやすくて助かる」
「んんぅっ、ひ、あぁ、まお、さまぁ……っれふぃ、きもち、れす……」
「そ、よかったな、レフィ」
「ん、んっ、きもち、の、うれしいっ……」
快楽に蕩けた表情を晒しながら、レフィはくしゃくしゃとソーマの髪を掻き混ぜる。それを甘んじて受け入れながら、ソーマはレフィの身体を強く柔く、追い詰めた。
「あ、ぁあぁ、んんっ、ひ、ぃ、ぁああ、っあ……!」
レフィの性器の先端から垂れる粘液が、ソーマの指を伝ってシーツに滴り落ちる。男の硬い指に急き立てられながら、せり上がるように敏感になってゆく胸の尖りを吸われ、レフィは細い喉をがくがくと戦かせた。視界のちらつくような快楽が、痛みにも似た焦燥になって腹の中を這い回る。肌の下をざわざわと駆け巡る快楽の脈動が、どんどんと速く、大きくなって。
「ぁ、うぅ、っひ、まお、しゃ、あぁ、ぁっ、きひゃう、きもちいの、きちゃ、あ、あぁぁ……っ!」
「ん、いいよ、見せてみな、お前のきもちいいとこ」
真っ赤に染まった胸の突起にわざと吐息を当てるように、ソーマが低く囁く。それだけで頭の先まで抜けてゆく快楽が、レフィの思考を容易く突き崩していった。喉につっかえるように、掠れた吐息が断続的に吐き出される。ソーマの指が、唇が動く度に、レフィは己の心臓を、直接握り込まれているような心地になった。限界まで張り詰め、膨れた風船が、レフィの身体の中でふわふわと揺れる。そうして、もう風のひと吹きで全て駄目になってしまう、と思った瞬間、ソーマが追い打ちのように、レフィに胸に甘く歯を立てた。
「や、んんんぅ、っひ、あ、ぁあ────!」
熱が、弾ける。ソーマに腰を抱かれ、逃げることも許されずに、レフィはソーマの手の中で薄い粘液を吐き出した。とくとくと溢れ出るそれが、ソーマの手から零れて肘まで濡らしていく。じくじくと、頭の中が灼けるようだった。じんと後を引く快感が、レフィの腰に重たく響く。そのままぐらりと傾いだレフィの身体を受け止めると、ソーマはゆっくりと、レフィの身体をベッドに横たえた。
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