ノーマルニートな俺、家の勝手口の向こうの異世界で、欠食児童な勇者の孫のへなちょこ性別不明娘の相棒になりました

もにもに

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~ぷろろーぐ:今から三ヶ月前の自分へ~(全8話)

プロローグ:今から三ヶ月前の自分へ(2/8)

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 ニート無限地獄の直中の俺としては、まさに天佑に他ならなかった。
 光のひとすじ! とその当時の俺にはそう見えた。
 瞬間的ではあろうが、その刹那は確かに、あったような手応えはあったのだ。


 無論、俺はそれに飛びついてしまった。


 して、先述のそれは……
 なんと! いまの俺は、その服務を、その異世界生活でのメイン・ロール、主役割…としてこなしていた。
 その内容を職務となるに至ったのだ。




 地位とするには裏付けは貧弱なものの、立場というものを得、
 報酬はある程度のが、保証されるまでになった。
……まあ、異世界金品建てであるので、
 そう簡単な手順では、こちら現代日本でつかえるシロモノではなかったのだが……



 どうだろう。
 事実を摘出して順番に気をつけて列挙するだけで、らしさのある“夢の生活”を、「演出」してみることが、いまできた。
 このアオリ文だけ…ならば、まあ純粋に安楽に楽しめる。そんな内容にも感じられるであろうか。

 今後求人票を出すことがあったら、ぜひこの文言でいってみよう……と思索する只今の俺ちゃんである。



──だが、であった。
 その生活が、今となっては、俺の日常の主幹とさえなった今……
 
 俺は不健康となっていた。
 何かって? 身体的にも、精神的にも、である。
 俺の生活の半身はどっちゃりとその日々に浸かってしまって、どころか、いわば足の先から上昇方向への遡上すら開始したその“非日常”により、現在進行形で俺自身が腰から脳天まで染め上げられていっている、そんな事態にさえなってしまっていたのだから!
 こうなると、正直、なかなか心からの賛与はするに苦しい状態だ……




 それも、単にカネやゼータクという即物的な物事による欲がとまらなくなっての金満病といったものではない。
 そんなものならば、どれだけよかったことだろうか?

 下手なたとえだが聞いてほしい……それは形容するならば、
 ギャンブルにするとしても、それでもただ事の度合いに収まりきらない、
 到底カタギの商売とは言い難い、
 いち秒単位での時間経過の結果、リスクばかりが膨らんでいくそんなお商売……言っちまえば、貧乏くじを引いてしまった体で……、
 そんなそれを、ワタクシはやっておるのであります。
 しあわせな、すばらしい未来というのは、有るのか?
 唯、現状維持だけでも、ひーこら言いながら、なんとか撤退戦にまでは及んでいない、ただそれだけのみ、な状況……



 こうなってしまったのが、恨めしい? いや、もう遅い! 
 遅かった……


 いやー、治癒回復蘇生の魔法がある異世界でよかったよ、ホント。


 さて、なぜこの物言いなのか?
 断言をもっと言えば、この“チャンス”なるものは、この俺ちゃんたちに、
 諸刃の刃となって、牙を剥くに至っていたのだ。
 それも、物理的に。

 初見に感じたその甘やかさは、まるで口に含んだ綿菓子のように中途で掻き消えた。
 夢か幻か、それだけで済んだらば、まあまだダメージコントロールの範疇で、すぐに済んだろう。
 だが……その上どころか、その幸運は、まるでコインの表と裏の表裏一体のように、俺ちゃんたちにとって、呪われた僥倖にすらなっていたのだ…ということに、話が尽きる。



 端的に言おう。
 この異世界生活、今となっては、とにかく物騒すぎる!
 

 逃げ出してー!と叫ぶのは、今でも都度、毎夜のごとく叫んでいるわたくしである。
 まあそれはいい。
 とにかく、そのブッソウ加減というなりや……──
 まさに、死んで覚えるなんとやら。
 を、実際に体感アトラクションの如く体験させられている、そんな状況が、今もなお続いているのであった。



 全く、さながらに、だ。
 ゴウカで贅沢そうにラッピング包装がされていたプレゼントボックスが現れたから、
 マヌケな俺は、よろこんで手に入れて、封を解いてみた。
 そうしたら、
 その正体は、禁忌が折り詰められた、パンドラの箱であったのだ!
 
……というような、そんなあらましだ。



 だが、一度始まったそれはもう止められない。
 なぜならば……何も知らない段階で、回避と逃走ができるチャンスがあったなら、俺はもうそうしている! そうしたかった……
 しかし、謎の中身を知ってしまった以上は、
 これからの日々も、それに拘束された俺ちゃんは、約束された献身と努力を捧げなくてはならない、そのような段階に、いまはある。

 単純に、知りすぎたのだ。……
 要するに後戻りできない、っていうわけだね。


……言い訳をすると、逃げる一手では救えられぬものも、俺が関わってきた物事の全般がそうであった気が、いまさらながらにする感じではある。



 関わってきた人間たちや事象の数々。
 それらが絶対の危機と絶命の窮地にあったさなかに、
 なにはともあれ、俺ちゃんと“そいつ…相方”との日常ジャーニーの結果と成果として、起死回生の符を手にできたのは、本当に悪運の良いことであろう。


 それこそが、“相方”と成し遂げた、ひとまずのゴール、もしくはリ・エントリーのチェックポイント、
 それらのいずれか、か、もしくは両方…なのだろうな? 



 はたして、俺とこの“相方”のどっちが、そのきっかけや結節点であったのだろう?
 それについては…まあ、考えぬのが止む也、というものだろうか。




 さて、そうしてその、もう一つの意味について、だ。

 それは、この俺の“相方”について。

 
 すなわち、この異世界なるものは、禁忌の箱が開かれた今においては、
 斯くも幸福ではなく難儀で困難なものであった。
 怒涛のごとく経過が継続しているその災禍のラッシュによって、
 冒険的に無邪気に楽しんでいられた頃は、不思議さと楽しさはあったろう。
 が、残酷さの境目を超えたあとは、それらは消え去り……優しさはなかった。



 特に、こいつにとってはそうだったろう。



 不幸にも、
 パンドラの箱の封が開いた場面に俺と共に巻き込まれ、、、

 そして現在は、俺ちゃんたちに限らずの、多々大勢にとってのその残された最後の希望!
 それの代役を、務めさせられることとなった、
 実に不幸で不運な、その人物…………



 そう……“勇者”。





 任を与えられた、
 祝福されし戦士、というその呼び名。
 その称号を与えられた、何物でも無い英雄的記号のその生け贄か依り代として、
 宿命と運命を定められてしまった、この人物。



 その人物こそが、俺ちゃんの、相棒、相方……ということなのである。


……のだがね?




(続く)

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