2 / 79
~ぷろろーぐ:今から三ヶ月前の自分へ~(全8話)
プロローグ:今から三ヶ月前の自分へ(2/8)
しおりを挟むニート無限地獄の直中の俺としては、まさに天佑に他ならなかった。
光のひとすじ! とその当時の俺にはそう見えた。
瞬間的ではあろうが、その刹那は確かに、あったような手応えはあったのだ。
無論、俺はそれに飛びついてしまった。
して、先述のそれは……
なんと! いまの俺は、その服務を、その異世界生活でのメイン・ロール、主役割…としてこなしていた。
その内容を職務となるに至ったのだ。
地位とするには裏付けは貧弱なものの、立場というものを得、
報酬はある程度のが、保証されるまでになった。
……まあ、異世界金品建てであるので、
そう簡単な手順では、こちら現代日本でつかえるシロモノではなかったのだが……
どうだろう。
事実を摘出して順番に気をつけて列挙するだけで、らしさのある“夢の生活”を、「演出」してみることが、いまできた。
このアオリ文だけ…ならば、まあ純粋に安楽に楽しめる。そんな内容にも感じられるであろうか。
今後求人票を出すことがあったら、ぜひこの文言でいってみよう……と思索する只今の俺ちゃんである。
──だが、であった。
その生活が、今となっては、俺の日常の主幹とさえなった今……
俺は不健康となっていた。
何かって? 身体的にも、精神的にも、である。
俺の生活の半身はどっちゃりとその日々に浸かってしまって、どころか、いわば足の先から上昇方向への遡上すら開始したその“非日常”により、現在進行形で俺自身が腰から脳天まで染め上げられていっている、そんな事態にさえなってしまっていたのだから!
こうなると、正直、なかなか心からの賛与はするに苦しい状態だ……
それも、単にカネやゼータクという即物的な物事による欲がとまらなくなっての金満病といったものではない。
そんなものならば、どれだけよかったことだろうか?
下手なたとえだが聞いてほしい……それは形容するならば、
ギャンブルにするとしても、それでもただ事の度合いに収まりきらない、
到底カタギの商売とは言い難い、
いち秒単位での時間経過の結果、リスクばかりが膨らんでいくそんなお商売……言っちまえば、貧乏くじを引いてしまった体で……、
そんなそれを、ワタクシはやっておるのであります。
しあわせな、すばらしい未来というのは、有るのか?
唯、現状維持だけでも、ひーこら言いながら、なんとか撤退戦にまでは及んでいない、ただそれだけのみ、な状況……
こうなってしまったのが、恨めしい? いや、もう遅い!
遅かった……
いやー、治癒回復蘇生の魔法がある異世界でよかったよ、ホント。
さて、なぜこの物言いなのか?
断言をもっと言えば、この“チャンス”なるものは、この俺ちゃんたちに、
諸刃の刃となって、牙を剥くに至っていたのだ。
それも、物理的に。
初見に感じたその甘やかさは、まるで口に含んだ綿菓子のように中途で掻き消えた。
夢か幻か、それだけで済んだらば、まあまだダメージコントロールの範疇で、すぐに済んだろう。
だが……その上どころか、その幸運は、まるでコインの表と裏の表裏一体のように、俺ちゃんたちにとって、呪われた僥倖にすらなっていたのだ…ということに、話が尽きる。
端的に言おう。
この異世界生活、今となっては、とにかく物騒すぎる!
逃げ出してー!と叫ぶのは、今でも都度、毎夜のごとく叫んでいるわたくしである。
まあそれはいい。
とにかく、そのブッソウ加減というなりや……──
まさに、死んで覚えるなんとやら。
を、実際に体感アトラクションの如く体験させられている、そんな状況が、今もなお続いているのであった。
全く、さながらに、だ。
ゴウカで贅沢そうにラッピング包装がされていたプレゼントボックスが現れたから、
マヌケな俺は、よろこんで手に入れて、封を解いてみた。
そうしたら、
その正体は、禁忌が折り詰められた、パンドラの箱であったのだ!
……というような、そんなあらましだ。
だが、一度始まったそれはもう止められない。
なぜならば……何も知らない段階で、回避と逃走ができるチャンスがあったなら、俺はもうそうしている! そうしたかった……
しかし、謎の中身を知ってしまった以上は、
これからの日々も、それに拘束された俺ちゃんは、約束された献身と努力を捧げなくてはならない、そのような段階に、いまはある。
単純に、知りすぎたのだ。……
要するに後戻りできない、っていうわけだね。
……言い訳をすると、逃げる一手では救えられぬものも、俺が関わってきた物事の全般がそうであった気が、いまさらながらにする感じではある。
関わってきた人間たちや事象の数々。
それらが絶対の危機と絶命の窮地にあったさなかに、
なにはともあれ、俺ちゃんと“そいつ…相方”との日常ジャーニーの結果と成果として、起死回生の符を手にできたのは、本当に悪運の良いことであろう。
それこそが、“相方”と成し遂げた、ひとまずのゴール、もしくはリ・エントリーのチェックポイント、
それらのいずれか、か、もしくは両方…なのだろうな?
はたして、俺とこの“相方”のどっちが、そのきっかけや結節点であったのだろう?
それについては…まあ、考えぬのが止む也、というものだろうか。
さて、そうしてその、もう一つの意味について、だ。
それは、この俺の“相方”について。
すなわち、この異世界なるものは、禁忌の箱が開かれた今においては、
斯くも幸福ではなく難儀で困難なものであった。
怒涛のごとく経過が継続しているその災禍のラッシュによって、
冒険的に無邪気に楽しんでいられた頃は、不思議さと楽しさはあったろう。
が、残酷さの境目を超えたあとは、それらは消え去り……優しさはなかった。
特に、こいつにとってはそうだったろう。
不幸にも、
パンドラの箱の封が開いた場面に俺と共に巻き込まれ、、、
そして現在は、俺ちゃんたちに限らずの、多々大勢にとってのその残された最後の希望!
それの代役を、務めさせられることとなった、
実に不幸で不運な、その人物…………
そう……“勇者”。
++
任を与えられた、
祝福されし戦士、というその呼び名。
その称号を与えられた、何物でも無い英雄的記号のその生け贄か依り代として、
宿命と運命を定められてしまった、この人物。
その人物こそが、俺ちゃんの、相棒、相方……ということなのである。
……のだがね?
(続く)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
