ノーマルニートな俺、家の勝手口の向こうの異世界で、欠食児童な勇者の孫のへなちょこ性別不明娘の相棒になりました

もにもに

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第一章:黄金色の森でこんにちわ(全18話)

黄金色の森へこんにちわ(8/18)

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「あぐあぐ、……がっがっ、ぱくぱく、」





 がっついている。


 かっ喰らっている、と形容した方がいいだろうか、というくらいの猛然とした喰いっぷり。



「あぐあぐあぐ、もっもっもっ、ごっくん、……もぐもぐもぐ」


 まるで物心の着いたばかりの年の僅かな子供が、初めての誕生日ディナーを食べるかのような、そんな情景。

 俺には母性の片鱗があるらしい、と、己の心の情感への大振りの自己評価を下した。



 しかし、食い方がなっていない。

 
 デブ予備軍の俺が見てそうなのだ。栄光と名誉あるデブ候補としての喰い方がなっていない、という意味である。

 
 なにせ、喰い進め方の配分が、なっていないのだ。
 からあげの玉を、連続して二玉も、単独で、口につっこんだのである。
 それから、思い出したようにポテサラをおそるおそる、摘まんで――箸の使い方がわからないのかできないのか、突き刺して持ち上げる、というやり方であるが――、

 それで、

 
『 ! 』


 と目に光が閃いて、ポテサラを一気に食べて、完食。

 

 よほど味が気に入ったのか、しばらく目を閉じて瞑目して、満足になんども顔を綻ばせた塩梅であった。
 
 
 見た目相応…というより? それ以上に、お子様らしい素振りをする、この異世界っ娘。

 

 しかし、しかしだが、である。
 こいつの犯した最大の罪と難点は、そうなのである。

 

 

 からあげとごはんを、一緒に喰わなかった……ということなのである。

 

 

 
 からあげの玉が残り三玉になった時、俺はぶちぎれた。

 

 

 気配が変わった俺に、口に入れたからあげを咀嚼するのに夢中だったこいつは、驚いて、むせた。

 

 そして、俺は、怒鳴り込んだ……弁当の地平に。

 

 こいつが後生大事に抱え込んだ発泡スチロール製の弁当皿に指を立てて、この未開の白い大地を、汚して見せろ!――とは言わなかったが、

 

 とりあえずはそれで意図は伝わったようで、こいつは恐る恐る、といった体で、白米に手を着けた。

 

 さて、その結果。


 銀シャリちゃん、白米である。

 最初の一口を食べた時、こいつの反応は、実に米農家のみなさんに失礼なものだった。


「………?、??、???」

 
 味が無い? という様な反応の表情で、どうにもはてな? が頭の上に浮かぶ様子。
 怪訝な顔になっていたが、俺が、からあげと一緒に喰ってみろ、と指示を出したところ、そのように従って、――纏う空気と雰囲気が一変した。


「!」


 まさに開眼、した、という位の、変化。



「んん~……ん、んっ、ん~~……ごく、んっ」



 もっちもっち、もっちゃもっちゃ、という塩梅に、白米とからあげの肉の味との調和を、楽しみだしたのである。



「♪~」



 初心者故にビギナーマークだが、それでも筋は良い。それでこそだ。という評価を、俺は下した。



 そうして多量の白米と共にからあげがひと玉消化されたのちに、もう一回、白米だけを多少取って食ってみろ、
 よぉく、じっくり、噛んで、噛んで、噛みしめて、という指示を下した。



 すると、効果は覿面であった。




「あまくて、おいしい、です!」



 もっちもっちもっち、もっちゃもっちゃ、――という塩梅に。

 
 そうすると、この、白米をよぉく味わいながら食べた時に出てくる、風味とエキスというものに、異世界人であるこいつも、気付けたらしい。



 ようこそ。主食を米とする民族のバイオリズム?の境地へ、
 そうしてこの深淵を、心行くまで、奥底まで、頭の先まで沈んでいってほしい……

 

……とは、言わなかったわけだが、俺はグーサインをこいつに向けて、した。



 よくわからなかったらしいコイツも、箸を握り込んだ右手で、精いっぱいのグーを返した。




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