ノーマルニートな俺、家の勝手口の向こうの異世界で、欠食児童な勇者の孫のへなちょこ性別不明娘の相棒になりました

もにもに

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第二章:500円のファンタジー(全16話)

500円のファンタジー(6/16)

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     * * * * *




…──…その日の夜である。
 時間は深夜の一時を過ぎた、そのあたりだった。


「 はぁ、弁当いっこ余っちまった。」

 電灯の光がゆらゆらと中身入りのレジ袋に揺れる……
 なんだかんだあって、俺の分の弁当は食いそびれてしまったまま、持ち帰ってしまったのだ。
 今日は夕飯がうまかったこともあって、余った弁当は野ざらしのまま、俺の自室の机の上で包装にくるまったままだった。

 あー……あのメイドにドロップキックを浴びさせられたらしい背中が軋む。
 一応湿布は張ったがな。

 そんなこともあり、さあぼちぼち寝ようかと、就寝前の水分補給に
 自宅一階のキッチンに浄水器の水を汲みにいった時、


…──… …──…


 かつーん、かつーん、



「……ん?」




 うぅっ、…うぅうぅっ……




 かつーんかつーんかつーん、






 くぎ(釘)がたりない……さきがささらない……どうしよう……

 うぅっ、うぅううぅっ………


 さよなら……ボクのおいしいごはん……おいしいしあわせ……はじめてのともだちのきずな……へんなかおのたびしょうにんさん………


 うぅうっ、うぇえぇぇえぇえぇぇ………



………


「………」


 
 このうめき声は、あの、あれだな。……


 扉の向こうからきこえてくる。
 むろん勝手口の扉の向こうからだ。声の主は、ここ二日間で親よりも多く会話しているかもしれない相手だと、容易に判断する事が出来た。


 漏れ聞こえてくるのは、か細い、泣きじゃくった声である。


「…………、」


 ちょうど今、父親は自室で持ち帰った仕事の処理を進めていて、母親は風呂に入っている所だった。
 母親が風呂に入っているのを見計らって、俺は扉へと近づき、



「………」

 ドアノブに手をかけて……

 がちゃり、と扉を開ける。


「! ふわぁあっ!?」

 時刻は深夜、異世界もそうだったようで、扉の向こうは真っ暗の夜の森であった。
 そんな中、キッチンの照明に照らされて、
 べたり、と尻餅を着く人影が一つ。


「……はぁ、」「! あのっ、そのっ、これは……うぅっ」


 本日二回目の異世界っ娘だ。それにしてもよく泣くなあこいつ。
 なにしてんの、という話であるのだが、釘とトンカチをもって、なにやらをしていた最中だったらしい。
 

「………、」「えと、えっと、うぇぇ~ん!!」

 今、俺は鏡で己の顔を見れば、怪訝を通り越した微妙な表情になっているに違いがなかろう。
 新手の怪談かよ! と突っ込んでいる場合では、ないのかどうなのか…



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