49 / 79
第二章:500円のファンタジー(全16話)
500円のファンタジー(15/16)
しおりを挟む家から往復三分の、コンビニに、ルーの手を握ったまま引き摺って、直行する。
なんかこいつ(ルー)の顔が赤面して紅くなっているようであるが、目を真ん丸にしたままのこいつ(ルー)を、そのまま連れて行く……
「すごい……」
赤面しながら目をまんまるにするという表情になりつつも、異世界貴族っ娘は初めて見るこちらの世界に、衝撃を受けている様子らしい。
地を進む車。このあたりは空港が近いから、ちょうど夜間飛行の飛行機が空を飛んでもいた。
夜を照らす街灯、異世界とは当然違うであろう、道行く人たちのファッション……アスファルト敷きの地面……コンクリートの建物……
さぁ、着いた。
“……♪~♪~…”
ひゃ!? こ、この音楽はどこから……
「ラッシャーセー」
ひっ?!
かごを手にとって、そのままルーに渡す。荷物役くらいやってくれよ。
ヤキトリ……おむすび……総菜パン…
……ホットスナック……
「あ、あの……これ、全部、食べ物……?!す、すごいっ、」
どかどかとカゴにつっこんだあと、
俺のクレカで、一括決済。
「ラッシャーシター」
「ふぅ……帰るぞ」「あっ、あっ、その…は、はいっ」
ルーはコンビニのかごを、そのまま持って出てしまったわけだが、今は気にしてられない。
店員のにいちゃん、メンゴ!
んで、ずんずんと、家までの帰路を帰って行く、俺と貴族っ娘。
「ああのっ、」
ん?
「ぁのぉぅっ」
だから、なんだって、
「ああの、あああアクマ様、ボク、しんじゃうんですよねっ!? しんじゃうんだ、きっとっ、すぐにっ、だってこんな、すっごいおいしそうな、すっごいもの、すっごいせかい、見たこともない異世界、もうなにがなにやら、だって、だって、もう、ボク、どうしたら……」
そうかもな、俺なんか、今日までに何回しにかけたんだか、
「ひぅっ?! …そ、それなら、ボク、お願いがあったんですっ、」
なんだよ、
「もうかなっちゃいましたっ!
ずっと、夢のような体験がしたかったんですっ
目の色もかわっちゃうような、こんな異世界、想像もできませんでしたもんっ!」
今日一日泣き通しだったこいつ。ただ、
この時は、貴族っ娘の顔の表情が、輝いてみえた、ような気がする。
「だ、だから……」
まあそれから再びグルグル目になると、
「あと悪魔さま、つけくわえると、ボク、友達がほしいんです!
いや、それのほうが重大です!
できれば一生の友として、なにもかもの、秘密もいやなことも受け入れてくれる、ずっとそばにいてくれる友達がっ……」
なってやるよ、その友達に、
「へ、?」
「俺も友達募集中だったんでね、悪いか?」
「──! いいえっ、こちらこそっ!」
……このときの、この子の、笑顔、喜びよう、というのは、……俺は生涯、忘れ得ないだろう。
んで、家に帰った。
「母ちゃん、これ、ボイル!」
そんくらい自分でなさい! 今台所ふさがってるし! との母ちゃんのお言葉。
まあ俺がもっていったせいで夜食を作り直しているからなのだが、そのせいでプンスカとご立腹であるらしい。
ああもぅ、そんなりゃレンチン、だ!
それから、冷蔵庫をがぱり、と開ける。
親父が今日の今晩に夕食にするために買ったのであろう、高級牛肉焼き肉用、特盛、5パック。
冷蔵庫から取り出した焼肉のタレを押し付けながら、
「かあちゃん、これ、大至急焼いてくれ!」
「えっ、ええっ……?」
「俺のかねでもっといい肉買うから!」
「ニートが何を言ってるの! ああもぅ、うちの子ったら、どうしようもないんだから……」
「腹が減り過ぎて死にそうなやつらがいるんだって!」
怒るカーチャンに、その顔をみながら俺が勝手口を指さしてやる。
指さした向こうをカーチャンが見ると、開いたままの扉のそこには先ほどのタッパーをつかんだままのガーンズヴァル爺とババアとオバサンの一家と、
メイドどもが呆然と立ったままこっちの家の中を見ている光景とぶつかった。
カーチャンはのけぞった。俺ものけぞった。
「どちらさまなのこの人たち……」「あ、あたらしく近所に越してきた外人さんたちだ!」
なんだかんだいいつつも、最後は焼いてくれる母ちゃん。
家族愛ってやつだよねぇ……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる