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第五章:アヴトリッヒ家の華麗なる食卓(全8話)
アヴトリッヒ家の華麗なる食卓(7/8)
しおりを挟む「くそあにきのせいだ!! くたばれ、くそあにきーー!!!!」
「八つ当たりはよくないぞ、妹よ、」
「くそあにきのせいで、あたしのかーびぃが、またやられた~~!」
「ちょっと……、」
そこに割って入ったのが、
「いもうとさん? ボクの名前はルーテフィア、っていいます。」
「なによぅ、フシンシャ。
なんかホカホカしちゃってるけどさっ、」
「えむっ…………その、くそあにき、というのは、なんなのですか。」
「読んで、字?のごとく?じゃん」
「くそ、とはなにか、と言っているのです!」
え゛?といもうとは、引いた。
「ボクのともだちの、ユウタ、なのですよ?
それなのに、その妹が、なんで兄を、
こんな言いようをするのですか!」
おい、ルー。なにやりはじめているんだ?
「だいじょうぶだよ、ユウタ!」
ルーは決闘モードにはいっている。
なんだか、のぼせている雰囲気でもあるようで、こちらに振り向いたルーの両目はぐるぐる目である。
先刻の風呂の湯あたりがつよかったのだろうか…
「ボクには、あなたから受けた恩があるんです!
みててくださいっ!」
ルーテフィアは勇気ある、毅然とした表情になり、
妹の前に、ずい、っと立った。
この状況で、
たじろぐのは妹の方である。
「な、なんだよぅ、ルー……テフィア、ちゃん、」
「ボクの格好を見て、まだそういう事をいいますか、」
「……くん、」
「そうです、」
エフーン、とルーテフィアは鼻息を鳴らすと、
「えっふん、いもうとさん、
ユウタをそれ以上バカにするなら、このボクが黙っていませ……――ひゃっ?!」
そのとき、ぐいっ、と。
「ゆ、ユウタ、なにをするんです……――って、え……?」
ルーテフィアはかおが凍り付いた。
肩に手をかけられ、突然背後を向かされたと想ったら、
不機嫌なクマのような面相で凄む、俺の顔面に対面したからだろう。
……自覚しているし、そうするつもりで心がけているが、せいぜいが偽物のくまの着ぐるみか、作り物程度の情けないリアリティだろう……
「ちょっとくそあにきwww そんなプーさんみたいな顔してどうしたの?www www 」
と、いつもの妹なら煽ってくるのは、このタイミングなら確実だろう。
実際、いまがそうであった。
「ぁ……あうっ…!?」
ところで、いっぽうのルーはというと、そんな情けない俺ちゃんクオリティのそれを、本物のそれかと思い見誤り込んだような様子で
「ユウタ、な、なにを怒っているのです?
貴方に不躾な態度を取る、妹さんに、このボクが忠言をしようと……」
「そういうの、お前は身内同士の関係間とか、兄妹同士の仲だとか、その微妙な距離感とか礼儀の感覚というのを、
なんというかわかってくれてないんだよなぁ……はぁ、」
俺ちゃんはそう言って、ためいきをついた。
「えっ…」
妹は、そんな俺の発言に、面食らったらしい。
しかししかし、
「ふぇ……」
そういわれると、ルーはなぜだかショッキングで、
とてもさみしい気持ちにもなって、
「されるがまま、じゃないですかぁっ?!」
暴発した。
「ゆ、ユウタぁ!
ボクは、けっして、ユウタを困らせようとしたわけじゃありませんっ、 なんでお兄様なのに、ユウタはりっぱなかたなのに、そんなふざけた態度を妹様に許しているのですかぁっ」
「あ゛ぁ゛ん?
うちのバカいもをけなしていいのは、俺だけなんだよぉ゛ぁ゛ん゛……?!
逆もまたしかり、ということだ。」
「ひぃっ……?!」
自称・威嚇するクマのような気配をたちのぼらせた俺である…
しかし、ルーテフィアはおびえた。
ここまで、連続でルーをおびえさせてしまった、俺。
なんだかこわくなってきたので、自分でも念のため、鏡で見ながら面相を見た。
……俺のこれは、いつもの妹ならそういって煽ってくるのが請け合いの、
暑さでバテたマレーグマ並みの尊厳のなさだったのだが……
「あ、え…………くそ、あに、き、…………」
「悪いな妹よ、こいつも悪気があるわけじゃあないんだ。
……ほら、ルー、ごめんなさいしようぜ。」
「えぅ、えっ、ぇっ、と………………」
だいじょうぶ、必ず出来る、
というのを、なんとなくの感慨で得ていた、俺。
ルーのやつは、
ぎこちなく、ぎぎぎ、と身体と首を、動かして…………
「ごめん、な、さい、」
「………………」
いもうとの方は、なにかしらないが、黙ったまま。
……あかん、片方だけに謝らせてしまった。
「あ~、あのな、」
妹も強情なやっちゃな……と俺は思いつつ、
フォローの必要性に気づいて、
「すまん、ルー、」
なんというか、俺も人並みのことしか、いえんのだな。……
なので、
「あと、遅れたけど、……
ありがとうな、ルー、俺のために怒ってくれたんだもんな」
「え、?、?!///////」
ルーははっ、と顔を上げた。
ちょうどのそこに、
「ようし、いいこにはもう一つあげやう、」
「あっ…………//////」
ミニカップをもう一つ渡してやった。
「……ばかおにぃ、で済まして、やろうかなっ」
様子を見ていた妹は、そうとだけ、聞こえないようにつぶやいた。
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