博物館の鏡に触れたら

戻ったら翌日だった

僕は博物館の鏡の前に倒れていたらしい。
僕が行方不明になった翌日のことだ。
そう、十年暮らしたのに戻ったらたった一日しか過ぎていなかった。
僕は一応入院して一通り検査され、警察に事情聴取され、修学旅行は終ってしまった。
同級生のみんなに迷惑を掛けたことを謝ったが、みんな何もなくて良かったと言ってくれた。
もちろん何があったか言えるはずもなく、僕は何も覚えてない、と押し通した。

日本に戻ってからは、両親や弟に「心配したんだから」と泣かれ、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
でも心の奥ではレイを失った悲しみでいっぱいだった。
最後に叫んだ言葉は届いたかな、この時代に生まれてきてくれているかな。
また会えると信じて、僕は生きていこう。

成績は良かったのでそのまま大学に進学できた。
入学式では、つい周りを見回してしまった。
どこかにレイがいる気がして、でも人が多くていても見つからないだろうなーって思った。

授業も始まりあわただしく日々が過ぎ、ある日の学食で、、、。
「ケン、やっと見つけた」
僕は背の高い外国人に抱きしめられていた。
「えっ、、、まさか、、、」
「レイだよ、ケンタ」


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小さい頃から日本に興味があった。
日本のドラマなど見て日本語を覚えた。
あの日、新聞に載っていた日本人の学生の名前を見て一気に前世を思い出した。
博物館になっている屋敷に住んでいた公爵だったこと、突然現れたケンタのこと、必ず会いにいくと決めたこと。
それから一年で日本語検定を受け、この大学を受験しケンタを探した。

「やっと、やっと会えた、、、」
「レイ、あの、午後も授業があるから、終わってから会おう」
「ん、分かった、授業終わったらここで待ってる」