ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
4 / 895

1-4

しおりを挟む
 煌びやかな金の彫刻が施された枠に収まる巨大な立ち見鏡を前に、そこに映るイケメン少年を不思議そうに見据えていたが、

「!」
(ヤンキー女神が言ってた「勇者らしいステータス」ってコレかぁ!)

 自身の新たな姿に、モテ期到来の予感に顔をほころばせ、
(ありがとうぅ『ラミウム様』ぁ~~~!)
 思わずニヤケそうになったが、
(いけない、いけない、僕は「勇者」なんだから!)
 周囲から感じる無数の視線に慌てて取り繕い、凛とした表情を保とうとしたが、人生初のイケてる容姿にニヤニヤは止まらなかった。
 しかし周囲から聞こえて来た声は、

(いったい、どうなってるんだぁ……)
(どう言う事なのぉ……)
(こんなの聞いた事もないぞ……)
(でもイケメンだわぁ……)
(言ってる場合かよ!)

 勇者到来の歓迎ムードとは明らかに異なる、まるで不穏な空気。
「?」
(僕が勇者らしくし振る舞ってないから、不安に感じてるのかな?)
 自嘲すると、
(ここは「勇者らしく」ビシッとキメてぇ!)
 キラキラスマイルで振り返り、

「ヒィッ!」

 思わず後退った。
 そこは古代ローマの円形闘技場を思わせる施設のど真ん中。

 降り注がれていた視線は、三百六十度取り囲む客席からの、何千、何万と言うおびただしい数の観客からの物であった。
 圧倒的、数のチカラを以って集まる視線に、
(どっ、どうしよう!)
 一瞬怯む「イケメンと化した少年」であったが、
(どっ、堂々とすれば良いんだ! だ、だって今の僕は勇者なんだからぁ!)
 瞬時に思い直すと、コホンと咳払いしてお茶を濁し、
(ゆっ、勇者らしく振る舞わないとぉ!)
 自らを奮い立たせてはみたものの、

『・・・・・・』
(ってぇ、「勇者らしく」ってどぅすればぁ良いんだよぉおぉぉぉ!)

 心の中で頭を抱え、表面上では冷静さを装いながら脳をフル回転。
 そして導き出された答えは、

(そうか! 勇者イコール「イケてる男」だ!)

 元「イケていない少年」であったろう事が容易に想像出来る発想ではあるが、乏しい知識の中から「イケてる男の仕草」を捻り出し、
 
(イケてる男とは、コレだ!)

 前髪をサラッとたなびかせ、
「みなさぁーん! こんちはぁーーー!」
 笑みを浮かべた口元をキラリと光らせ、
「僕は勇者の! 勇者のぉ…………」
 イケメンスマイルの下、

(自分の名前が分からないよぉおぉぉぉおおおおぉぉお!)

 真っ青に青ざめる少年。
 謎のヤンキー女神『ラミウム』と出会うより前の記憶が完全に失われていた事に、今、気付いたのである。
(僕は誰なんだぁ?! って言うか、どうするんだよぉこの長い沈黙ぅ! 絶対ヘンな人だって思われてるよぉおぉ!)
 表面上は平静に、自分なりに考えた「キザなポーズ」のまま、内心では激しく動揺していると、追い打ちを掛ける様に、

『ニセ勇者を取り囲めぇーーーッ!』

 どこからともなく怒声があがり、

「へぇ? ニセ???」

 誰の事かとキョトンとしていると、

『『『『『『『『『『おぉーーーーーーーーーッ!』』』』』』』』』』

 抜刀した鎧兵たちに周囲をグルリと瞬く間に取り囲まれ、隊長と思しき兵士が、

「地世(ちぜ)の手の者かも知れぇん! 油断するなァ!」
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」

 声を荒げると、部下の兵士たちも気勢を以って声を上げ、叡覧席に座る「国王と思しき男性」の周囲にも兵士たちが駆け付け、守りを固めだし、
「ちょっ、ちょっと待ってよぉ! 『チゼ』ってナニ?! そもそも僕は勇者としてぇ!」
「黙れぇマガイ物ぉ!」
「まっ、まがい物ぉ?!!!」
「百人の勇者様方なら既に召喚され! 誓約者たちとの契りも済んでおるわァ!」
「ひゃ、百人の勇者あぁっ?!」
 隊長兵士の指し示す方に視線を向けると、闘技場の隅の一角に、式典用の煌びやかな鎧を纏った騎士たちに守られた、正装した少年少女たちの姿が。

 その数、ざっと見て二百人ほど。
 元イケてない少年と同様に「勇者」として召喚された百人と、此方の世界の「誓約者」と呼ばれる百人の少年少女たちである。
 既に契りを結んでいると言う話を証明する様に二人一組になり、騎士たちの背後から怯えた表情を此方に向けていた。

(もしかして騙されたぁ?!)

 脳裏に浮かぶは、ヤンキー女神のインチキ臭い笑顔(※多少の歪曲アリ)。
 しかし目の前の事実だけを鑑みれば「元イケてない少年」がイレギュラーな存在である事は疑いようもなく、距離を置いて囲む兵士たちは、

「「勇者百人召喚の儀」に入り込める輩となれば『魔王』に近い者かも知れない! 皆の者ぉ気を緩めるなァ!」
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
「ちょ、まっ、魔王おぉおぉ?!」

 とんでもワードに狼狽する「元イケてない少年」であったが、兵士たちは容赦なく切っ先を向けつつ、ジリッジリッと輪を縮めて行った。
 逃げ場は無く、弁解の余地さえ与えられず、

(何だよこれぇえぇぇぇ)

 今にも泣きそうな顔して雲一つない青空を見上げ、

(ラミウムぅうぅぅぅうぅぅぅ!)

 心の中で恨めしそうに名を叫ぶと、

『その御仁は私が貰い受けますわァ!』

 何処からともなく女性の叫び声が。
 と、同時に馬が駆ける「蹄の音」が急速に近づき、甲高い嘶きの後、

「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーおぉ?!」」」」」」」」」」

 元イケてない少年を取り囲む兵士たちの頭上を、一頭の白馬が飛んだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...