ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 地世の導師は笑みだけ残すと、立ち上がり始めたドロプウォートの下へ駆け迫り、口調と声色、そして他人を小馬鹿にした物言いは戻り、
「流石は「先祖返り」ぃ♪ 丈夫さだけなら一級品ですよねぇ♪ ですがぁ役立たずは汚染獣(村人)どもの慰み者になると良いですよねぇ~♪」
 トドメの右掌底を放って屋根から突き落とそうとしたが、

「ナメルな、ですわぁ!」

 怒れるドロプウォートはその手を取って、流麗な動きで豪快な一本背負い投げ。

 ダァバァン!
「くはぁ!」

 背中から激しく打ち付け、大きくバウンドする地世の導師。
 しかしフードは押さえて素顔は晒さず、しかも反動を利用して大きく飛び退き、体勢を立て直し、

「少々油断しましたよねぇ! お飾りの「四大貴族令嬢」如きが中々やりますよねぇ!」

 見据える口調には、明らかな怒りが滲んでいた。
 それ程までに、ドロプウォートの事を格下に見ていた裏返しとも言えるが、ドロプウォートはダメージを感じる表情の中にも余裕の笑みを浮かべ、
「どう致しましてですわぁ♪」
 軽く笑って見せ、
「地世の導師を初めて目の当たりに少々固くなっておりましたが、一撃を頂いたお陰で、すっかり目が覚めましてですわ♪ ですが貴方の方は……」
 ラミウムばりの不敵な笑みを以って、自身の口元を指差して見せ、

「先程までの「余裕の笑み」が消えていますわよぉ?」
「ッ!!!」

 ワナワナと、打ち震える地世の導師。
「ぐ、偶然の一撃に斯様な喜びようとはぁ「四大貴族も」底が知れますよねぇ!」
 その物言いからは「怒り」だけでなく、別な「負の感情」も見て取れ、
(何ですの? あからさまに四大を嫌う……いえ違う……これはいったい……?)
 過去、幾度となく向けられて来た「嫉妬や妬み」などとは異なる、得も言われぬ仄暗い感情に、ドロプウォートは戸惑いを覚えたが、

(今は、その様な事を気にしている場合ではありませんですわ!)

 心の迷いを振り払い、
(ここでこの者を絶たねば、必ずや「より大きな災い」が人々にぃ!)
 それは、彼の中から底知れぬ闇を感じた取った、彼女の直感であった。

 真正面に見据えて剣を手に身構え、

「中世の人々の安寧の為、ここで貴方を成敗致しますわァ!」

 人斬りの決意を以って地を蹴り、

「お覚悟ぉなぁさぃ!」

 斬り迫った。
 そこへ、

『ゴルガァアァァァ!』

 汚染獣と化した村人の一人が、真横から殴り掛かって来た。
 いつの間に、屋根に上がって来ていたのか。

「しっ、しまいましたわぁ!」
(地世の導師にばかり気を取られてぇ!)

 防御すら間に合わず、

「クッ!」

 直撃を覚悟した次の瞬間、

『アタシの舎弟に手ぇ出してんじゃねぇぞォ、ゴラァ!!!』

 怒れるラミウムが、白き輝きを増した右拳で地面に向かって殴り落とし、

 ドガァラアァァアァァ!

 汚染獣と化した村人は、クレーターが出来るほどの破壊力で地面に叩き付けられ、
「…………」
 体を痙攣させながら、声なく意識を失った。

 屋根の上で仁王立ちするラミウム。
「身体強化されてっから死にゃしないだろぅさね!」
 唾棄する様に見下ろし、

「大人しく寝てやがれってんだァ!」

 凛然とした眼をドロプウォートにも向け、

「ドロプッ! コイツは実戦なんだよ! いつもの「お稽古」じゃないのさぁね! 周りを良く見て戦いなァ!」

 奮起を煽ると、

「い、言われずとも分かっておりますですわぁ!」

 駆け寄り背中合わせで、
「で、ですが今は「助かりました」と申して、」
「礼なら後にしなぁ!」
 気の緩みを諭はしたものの、
「しかし……」
 辺りを見回すと、地世の導師が忽然と姿を消して、

「変態ローブめぇ、どさくさ紛れに姿を隠しやがったねぇ!」

 腹立たし気に吐き捨てたが、眼下に目を向ければ、建物の周囲は自我を失った無数の村人たちの蠢きに囲まれ、まるでゾンビ映画さながら。

「チッ! この数に上がって来られたら、変態ローブをブン殴る前にコッチがジリ貧さぁね!」
(コッチは、急ぎアイツの正体を「確かめたい」ってのにさぁね!)

 苦々しげに舌打ち、
(この規模を鎮めるなんぞ訳無いがぁ、アタシが直でやるってのが、ちぃ~とばっか都合が悪い……かと言って「中世の人間のドロプ」にゃ無理な話……。さぁ~て、どぅしたもんか……)
 周囲を警戒するドロプウォートと背中合わせで眉間に深い考えシワを寄せ、手詰まり感に苛立ちと焦りを覚えていると、何処からともなく、

『ラビィ~~~! ドロブざぁ~~~ん!』

 泣いているかの様な、聞き覚えのある悲痛な呼び声が。
「「?!」」
 まさかの声に振り向くと、そこには、頭を抱え、半泣き状態で、屋根伝いに這いずる様に走って来るラディッシュの姿が。
 地上でゾンビの様に蠢く村人たちに、

「ひぃいぃっぃぃぃいぃいぃ! ごわい(怖い)よぉぉぉぉおぉぉおっぉぉおぉぉ!」

 イケメンは、女子二人の下に転がる様に辿り着くなり、
「ごわ(怖い)がっだよぉおぉおぉ~~~~~~!」
 緊張感も吹き飛ぶ、グズグズ顔。
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