ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 体よく不敬を取り繕い、去って行った後ろ姿に、

「ったくアタシの獲物に、勝手に手ぇ出そうとしてんじゃないさぁねぇ!」

 苛立ち露わに毒づき、
「油断も隙もあったもんじゃないさぁねぇ」
 愚痴るラミウムであったが、それが彼女の「優しさの裏返し」と知るラディッシュは、

(ラミィらしいな♪)

 不器用さに笑顔を見せ、
「それにしても騎士さん達が家族連れだって、よく分かったね」
 暗に遠回しの賛辞を送った。

 しかし、それと気付かぬラミウム。
「んあぁ? まぁそん位のワケ(家族を守りたかった)でも無きゃ、この国の正騎士まで務めた連中が、地世信奉者如きに尻尾巻いて逃げて、嘘まで吐いて村に居座ったりしないだろうと思ったダケさぁね」
 あからさまな「面倒臭げ口調」で斜に構え、
「ようは鎌を掛けたんだが……正解だったようさぁねぇ」
 ヤレヤレ顔を見せたが、

「ん?」

 見つめるラディッシュの笑顔から、内なる「密やかな気遣い」を見透かされたと知り、
「なっ……何をニヤついてみてんのさぁねぇ。気持ち悪いねぇ~」
 照れを悪態で隠し、プイっとソッポを向くと、
「ヒドイなぁ~」
 照れ隠しと理解して返すラディッシュとチラッと目線を合わせ、小さく笑い合った。

 言葉にしなくても分かり合う、気の置けないやり取りを交わすラディッシュとラミウム。

 そんな二人を、黙って見つめるドロプウォート。
(ラミィが、そこまで考えていたなんて……)
 表情にこそ出さなかったが、通じ合う二人に「いつもの無自覚嫉妬」を覚えた以上に、憤りを覚えていた。
 騎士たちが「暴挙にでた理由」と「家族の存在」に気付けなかった自身の稚拙さに。

(私は単純に、目に付いた、上辺の「騎士たちの非道」に腹を立ていただけ……その心の内を知ろうともしませんでしたわ……なんと浅はかで……なんて未熟なんですの……)

 その様な彼女の内なる苦悩など、知る由もないラディッシュ達。
 ひたすら照れ隠しにボヤくラミウムを尻目に、
(ラミィってさ、口や態度は悪いけど♪)
(実は、面倒見が、とってぇも良いでぇすよねぇ♪)
(そぅなんスよ。何てった姐さんは「素直じゃねぇ」でぇすから♪)
 ヒソヒソと、ラミウムの「心根の優しさ」について語り合う三人は、

(((照れ隠しにキレられそうだから、本人には言わないけど……)))

 生温かい賛辞の眼差しで、素知らぬ顔して愚痴をこぼす横顔を見つめた。
 見つめる三つの顔に、
(この「お人好しトリオ」はぁ、アンタらぁ思ってる事が顔に出過ぎなのさぁねぇ)
 視線から逃れる様に背を向け、気付かないフリ。

 あえて不貞腐れを強調する物言いで、
「アイツ等(村人たち)ぁ、アタシの獲物(騎士とその家族)に手ぇ出したらマジでただじゃ置かないからねぇ」
 聞かせる様に不機嫌である事をアピールして見せると、「お人好しトリオ」は新メンバー(ドロプウォート)を加え、

(「ケガさせるな」って言えば良いのにね♪)
(相変わらずの「素直じゃない皮肉屋さん」ですわぁ♪)
(不器用な方でぇすから♪)
(姐さんらしぃっスぅ♪)

 カルテットに増えた生温かい眼差しが贈る賛辞の陰口に、
『・・・・・・』
 素知らぬ顔で堪え続けた恥ずかしさは、遂に臨界を迎え、

「ゆっ、ユルイ顔してぇ、いつまでもコッチ見てんじゃないさぁねぇ! 言いたい事があるならハッキリお言いでないかぁいぃ!」

 怒鳴ってはみたものの「動揺露わな上擦り声」で、キレたイキ顔も「照れ」が混じっていては、いつもの迫力に欠け、挙句、四つの顔には「分かっているよ」と言わんばかりに微笑ましく見つめ返され、
「クゥウゥゥ……」
 羞恥にまみれた赤面顔で、

「おっ、覚えておいでぇ!」

 苦し紛れの遠吠えをするので精一杯であった。
 五人が気の置けないやり取りをするさ中、
『ご無沙汰しております、ラミウム様』
 大司祭が近づき恭しく頭を下げ、

「じぃちゃん?!」

 驚くターナップ。
(二人は初対面なんじゃ?)
 そんな彼を尻目にラミウムは、
「久しいさぁねぇ~」
 懐かしむ笑顔を見せ、
「また一段と老けやがったじゃないかぁい♪」
「ふぉふぉふぉ。悠久を生きる貴方様がたとは違いますゆえ」
 一笑いしてから、
「その節は、大変失礼致しました」
 再会を喜び、恭しく頭を下げると、

「ジジィ! ラミ姐さんと面識があったのかぁ?! オレは聞いてねぇぞぉ!」
「…………」

 割って入るターナップに、言葉に詰まる大司祭であったが、
「今は、それどころではないじゃろ」
 疑問を一先ず遮り、ラミウムの前に跪いて目線を伏せ、
「此度の村人たちの無礼の数々、なんと謝罪すれば良いか……村の教育係として、村長や村人たちに成り代わり、私が如何様な罰でもお受け致します」
「ちょ、ちょっ待てぇよ!」
 血相を変えるターナップ。
 素早く大司祭の隣に跪き、

「今この村を仕切ってるのはオレだ! もとい私です!! なので罰なら私に!!!」
「何を言うか、青二才! オマエはまだ駆け出し! 形ばかりの司祭のオマエなんぞに!」
「隠居の身でしゃしゃり出て来てんじゃねぇ!」
「なんじゃとぉ!」
「やんのかぁ!」

 年甲斐もなく、取っ組み合いでも始めそうな二人に、

『黙りなァ!』
「「!」」

 ラミウムはブッチギレの一喝。
 息を呑む二人を、ギラつく三白眼で見下ろし、

『中世に「恩恵を与える天世人」を牢にぶち込んだ挙句、「火刑送りにしようとした」その罪、そぅ軽くはないさぁねぇ!』

 有無を言わさぬ眼光から、事の重さを改めて思い知らされた二人の司祭は、
「「……はい」」
 深刻な顔して目を伏せた。
「「…………」」
 今、まさに、厳罰が下されそうな空気の中、怒れるラミウムの背後で、何故か穏やかな笑みを浮かべるラディッシュとドロプウォート、そしてパストリス。
 場にそぐわぬ笑みを浮かべる三人に気付く余裕も無い祖父と孫は、言い様のない緊張から思わず息を呑み、腹を括り、

「そ、それでラミウム様……」
「どんな罰を……」

 目を伏せ、張り詰めた面持ちで答えを待つと、
『何か食わせぇなや』
「「・・・・・・」」
 一瞬の間の後、

「「は?」」

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔を上げる二人。
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