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その老いを感じる風貌とは異なり、彼の両手は素人目から見ても、職人としての確かな歴史を刻んだ武骨な手をしていて「巧み」を感じさせずにはおかず、ドロプウォートは熱のこもった目で、その手をシッカと握り、
「ワタクシィ! 城に戻りましたら直ちに「職人の大切さ」を、イヤと言うほど訴えましてでぇすわぁ!」
暑苦しいほどの熱弁に、職人の男は少々気圧され気味に、
「あ、ありがとうございますですだ。そのお言葉、この国の職人たちの励みになりましょうて」
ニコリと笑うと、工房の中に向けて、
「おぉい! アレを、持って来てくれぇい!」
『ハイ! 親方ぁ!』
中から若い男の返事が返ると、歳は十代前半と言った位であろうか、線がか細く愛らしい「体力勝負の職人には不向き」と思える、 弟子と思しき少年が「試作の椅子車」を押し出て来た。
ラディッシュが「村にある水車を見て思い付いた」と言う椅子車は、地球で言う所の、正に「車イス」そのもの。地球の記憶が無い 彼に、その自覚は無いが。
木組みの椅子の両側面には、木製の大きな車輪がついていて、その両輪はそれぞれ単独で操作が可能となっていて別々に動かす事ができ、座面と背面は、ラディッシュがその身を犠牲にして入手した「ラミウムの体の石膏」を基に、ラミウムの体の曲線に合わせて、緩やかな凹凸が彫り込まれていた。
車イスを知る地球の人々から見れば、木製イスに両輪が付いた程度にしか見えない代物ではあるが。
しかし、この世界では初の物であり、試作品とは言え、その完成度の高さにドロプウォートは感心しきり、
「こ、これが、ラディの話していた「椅子車」ですのぉ?!」
職人の手により丁寧に組み上げられた椅子車の座面を、愛でる様に撫でていると、ラディッシュの背におぶさるラミウムが、少し赤い顔して、
「ちょ、ちょいとドロプ……」
「?」
「撫でるのは、そのぉ……ちょいとぉ、止めておくれでないかぁい……」
「はぁい?」
不思議そうな首傾げに「愛くるしい容姿の弟子」は、
「ラミウム様の体から直接取った型を基に作りましたから、素肌を触られている気がするんですよね♪」
「!」
天然なのか腹黒なのか、ラミウムの羞恥を直撃する、天使の笑顔。
ボッと火が点いた様な赤面顔して、ラディッシュの背に顔を隠すラミウム。
思い掛けない乙女な反応に、ラディッシュが驚きを交え、
「ラミィに、こんな繊細な一面があったなんてぇ」
意外そうな反応を見せると、ドロプウォートが過度とも思える毅然とした口調で、
「ラディ、それはラミィを「侮り過ぎ」と言うモノですわ」
「へ?」
そこへパストリスも同調する様に、過度に真剣な口調で以て、
「そうでぇす。だって、ラミィさんだって……」
女子二人は嫌味なほどの真顔を見合わせて後、
「「女の子でぇすものねぇ~~~♪」」
あからさまな、からかい口調のデュオに、
「アンタぁあぁ達ぃいぃ!」
怒り半分、恥ずかしさ半分、ワナワナと打ち震えるラミウム。
「歩ける様になったら覚えておいでぇ!」
悔し気な顔をして…………ラディッシュの肩にガブリッ!
「イデデデデデェ!」
とんだとばっちりである。
その様子に、パストリスとクスクス笑い合うドロプウォートは、
「念の為、私が先に座って、強度などを確認してみますわねぇ♪」
ラミウムの身を案じ、万が一を考えての気遣いを見せると、やられっ放しであったラミウムの眼が唐突にギラリ。
何を企んだのか、悪い顔してニヤリと笑い、
「止めておきぃなぁ、ドロプぅ」
「はぇ? 何故ですのぉ? 強度は予め見ておいた方が、」
「アンタのデカ尻じゃぁ収まりきらず、椅子が「壊れる」と言ってのさぁねぇ♪」
『んなぁ?!』
咄嗟に、両手で尻を押さえるドロプウォート。
人より多少? 大きい自覚があるのか、集まる視線に恥ずかしそうに赤面しながら、
「そっ、そ、そ、そんなに大きくありませんわよぉ! し、失礼ですわねぇ!」
しどろもどろで反論すると、またも弟子が天使の笑顔で、
「大丈夫ですよ、ドロプウォート様ぁ。お爺ちゃ……親方が天法で強化していますから、そぅ簡単に壊れたりしませんよぉ」
それは暗に「天法を掛けていなかったら壊れる」との意の裏返しであり、「ドロプウォートの尻はデカイ」と言っている様なモノであったのだが、良く言えば裏表の無い性格のドロプウォートは言われた言葉を額面通りにしか受け取らず、意味を理解したラディッシュ達の苦笑を、破壊の不安の表れと思い込み、
「当然ですわぁ♪」
無用の心配とばかり鼻先で一蹴、
「腕利きの職人が作った逸品、そう容易く壊れるものではありませぇんですわぁ♪」
フラグとしか思えない一言と共にドカリと座り、
「ほらぁ、何ともありませんですぅわぁ♪」
余裕の笑みまでして見せた。
が、その笑顔の下で、
(うっ、嘘でぇすわぁあぁ!?)
動揺がマックス。
「ワタクシィ! 城に戻りましたら直ちに「職人の大切さ」を、イヤと言うほど訴えましてでぇすわぁ!」
暑苦しいほどの熱弁に、職人の男は少々気圧され気味に、
「あ、ありがとうございますですだ。そのお言葉、この国の職人たちの励みになりましょうて」
ニコリと笑うと、工房の中に向けて、
「おぉい! アレを、持って来てくれぇい!」
『ハイ! 親方ぁ!』
中から若い男の返事が返ると、歳は十代前半と言った位であろうか、線がか細く愛らしい「体力勝負の職人には不向き」と思える、 弟子と思しき少年が「試作の椅子車」を押し出て来た。
ラディッシュが「村にある水車を見て思い付いた」と言う椅子車は、地球で言う所の、正に「車イス」そのもの。地球の記憶が無い 彼に、その自覚は無いが。
木組みの椅子の両側面には、木製の大きな車輪がついていて、その両輪はそれぞれ単独で操作が可能となっていて別々に動かす事ができ、座面と背面は、ラディッシュがその身を犠牲にして入手した「ラミウムの体の石膏」を基に、ラミウムの体の曲線に合わせて、緩やかな凹凸が彫り込まれていた。
車イスを知る地球の人々から見れば、木製イスに両輪が付いた程度にしか見えない代物ではあるが。
しかし、この世界では初の物であり、試作品とは言え、その完成度の高さにドロプウォートは感心しきり、
「こ、これが、ラディの話していた「椅子車」ですのぉ?!」
職人の手により丁寧に組み上げられた椅子車の座面を、愛でる様に撫でていると、ラディッシュの背におぶさるラミウムが、少し赤い顔して、
「ちょ、ちょいとドロプ……」
「?」
「撫でるのは、そのぉ……ちょいとぉ、止めておくれでないかぁい……」
「はぁい?」
不思議そうな首傾げに「愛くるしい容姿の弟子」は、
「ラミウム様の体から直接取った型を基に作りましたから、素肌を触られている気がするんですよね♪」
「!」
天然なのか腹黒なのか、ラミウムの羞恥を直撃する、天使の笑顔。
ボッと火が点いた様な赤面顔して、ラディッシュの背に顔を隠すラミウム。
思い掛けない乙女な反応に、ラディッシュが驚きを交え、
「ラミィに、こんな繊細な一面があったなんてぇ」
意外そうな反応を見せると、ドロプウォートが過度とも思える毅然とした口調で、
「ラディ、それはラミィを「侮り過ぎ」と言うモノですわ」
「へ?」
そこへパストリスも同調する様に、過度に真剣な口調で以て、
「そうでぇす。だって、ラミィさんだって……」
女子二人は嫌味なほどの真顔を見合わせて後、
「「女の子でぇすものねぇ~~~♪」」
あからさまな、からかい口調のデュオに、
「アンタぁあぁ達ぃいぃ!」
怒り半分、恥ずかしさ半分、ワナワナと打ち震えるラミウム。
「歩ける様になったら覚えておいでぇ!」
悔し気な顔をして…………ラディッシュの肩にガブリッ!
「イデデデデデェ!」
とんだとばっちりである。
その様子に、パストリスとクスクス笑い合うドロプウォートは、
「念の為、私が先に座って、強度などを確認してみますわねぇ♪」
ラミウムの身を案じ、万が一を考えての気遣いを見せると、やられっ放しであったラミウムの眼が唐突にギラリ。
何を企んだのか、悪い顔してニヤリと笑い、
「止めておきぃなぁ、ドロプぅ」
「はぇ? 何故ですのぉ? 強度は予め見ておいた方が、」
「アンタのデカ尻じゃぁ収まりきらず、椅子が「壊れる」と言ってのさぁねぇ♪」
『んなぁ?!』
咄嗟に、両手で尻を押さえるドロプウォート。
人より多少? 大きい自覚があるのか、集まる視線に恥ずかしそうに赤面しながら、
「そっ、そ、そ、そんなに大きくありませんわよぉ! し、失礼ですわねぇ!」
しどろもどろで反論すると、またも弟子が天使の笑顔で、
「大丈夫ですよ、ドロプウォート様ぁ。お爺ちゃ……親方が天法で強化していますから、そぅ簡単に壊れたりしませんよぉ」
それは暗に「天法を掛けていなかったら壊れる」との意の裏返しであり、「ドロプウォートの尻はデカイ」と言っている様なモノであったのだが、良く言えば裏表の無い性格のドロプウォートは言われた言葉を額面通りにしか受け取らず、意味を理解したラディッシュ達の苦笑を、破壊の不安の表れと思い込み、
「当然ですわぁ♪」
無用の心配とばかり鼻先で一蹴、
「腕利きの職人が作った逸品、そう容易く壊れるものではありませぇんですわぁ♪」
フラグとしか思えない一言と共にドカリと座り、
「ほらぁ、何ともありませんですぅわぁ♪」
余裕の笑みまでして見せた。
が、その笑顔の下で、
(うっ、嘘でぇすわぁあぁ!?)
動揺がマックス。
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