ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-7

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 フルール国を出てどれくらい経ったであろうか――
 森を抜け、街道を行く六人の視界に「大きな砦」が入って来て、

「ハクさぁん! もしかしてアレが(カルニヴァ国の)国境なのぉ!?」

 ラディッシュがテンション高めに振り返ったが、その視線の先、当のハクサンは列の最後尾で、
「え…………」
 やつれ顔をしていた。

 新たな女子との出会いも無く、身近な女子たちにちょっかいを出したら半殺しの憂き目に遭い、女子成分(※彼曰く)が足りず、すっかり「枯れ木」の様になっていたのであったが、ラディッシュの一声で、現金にも瞬く間に息を吹き返し、
「ッ!!!」
 土気色であった顔色は、みるみるみるみる生き生きとした息吹を取り戻し、

『早く行くよぉ、みんなぁ! 女の子たちが、ぼくぉ待ってるんだからぁ!!!』

 関所である砦を目指して先陣切って走り出し、その「露骨な変わり身」に、ヤレヤレ笑いで見合うラディッシュ達ではあったが、
「「「「「…………」」」」」
 無言でしばし見合った後、

『『『『『うおっ%&#$%$&¥$#ひゃぁーーーーーーーーー!』』』』』

 五人は言葉になっていない歓喜を上げて一斉に走り出し、
「待ってよぉハクさぁあぁあぁぁん♪」
「勝手に先に行ってんじゃねぇーぞ、ゴラァーーー♪」
「お待ちなさですわぁーーーーーー♪」
「待って下さいでぇすぅーーーーーー♪」
「待てって言ってんのさぁあぁーーーーーー♪」
 満面の笑顔で後に続いた。

 第二の目的地カルニヴァ国に、やっとの入国である。
 その「やっと」となった主なる原因を作ったのは、ハクサン自身ではあるが。

 やがて関所の門前に辿り着き、
「「「「「「…………」」」」」」
 困惑と呆れが交じった表情で「何か」を見上げる六人。
 そこにあったのは、

『『ここを通りたくばぁ我らにチカラを示すでアールゥ!』』

 中世の民とは思えない、むしろサイクロプスではないかと思わせる高身長、筋骨隆々の体躯を持った、何故か上半身だけ裸の男二人が。
 チカラ自慢をポージングでアピールしながら、
「「我らはカルニヴァ国の四方門を代々守護する一族の、八つ子(やつご)が二子(にし)でアール」」
((((((こんな暑苦しいのが、あと六人もいるんだ……))))))
 そう思わずには居られないラディッシュ達であったが、二人は苦笑する彼ら、彼女らを気にする素振りも見せず、

『『故に!』』

 突如、恍惚とした表情を見せ、
「「今もこうして目を閉じればぁ「兄弟たちの今」が、手に取る様に分かるのでアールぅ」」
 悦に入ると、筋骨隆々系ターナップが同族嫌悪からか、
「八つ子が生まれなかったらどうすんだぁ?!」
 あくまで本人的には「行く手を塞がれた事に対する皮肉」のつもりで呆れ笑ったのだが、脳筋兄弟二人は急に、腹立たしいほどの平然さを以て、

「「同年代の養子を取るに決まっているのでアール」」

 涼し過ぎる返しに、

「ぬ!」

 何気にショックを受けるターナップ。
 そこへ更に、

「「お前は馬鹿でアールな? 八つ子が、そうそう生まれる訳が無いのでアール」」

「ぅのぉ!!!」

 オーバーキル。
 死人蹴り。
 ショックを受ける中での、更なる精神的ダメージ。
 
 イラつかせる脳筋兄弟を小馬鹿にしたつもりが、逆に「馬鹿にされたターナップ」は、ラディッシュ達が生温かく見守る中、悔しさを多分に含んだツッコミ返しで、
「双子の以心伝心ってのはぁ聞いた事あるけどよぉ! 血の繋がりのねぇ兄弟に、ソレが出来んのかよぉ!」
 負け惜しみを言い放った。
 すると兄弟は、

「「…………」」

 急に黙り、黙った挙句、
 
『『ここを通りたくばぁ我らにチカラを示すでアールゥ!』』

 チカラ自慢をポージングでアピール。
 話を強引に「最初へ」と押し戻した。
 
 過剰に話を盛っていたのか、つじつまを合わせられない急所をピンポイントで指摘されたらしく、言い逃れもせず、露骨な誤魔化しに、
(コイツ等ぁあぁぁあぁ!)
 怒り心頭のターナップではあったが、彼は調和を重んずる「天世の司祭」と言う立場であり、そんな彼が他国に入国して早々、現地の公人(※脳筋兄弟は一応警備兵)と先陣切ってモメる訳にはいかず、
「むぅグククゥ!」
 我慢に打ち震えていると、見兼ねた苦笑交じりのラディッシュが、初対面の、しかも「他国の人間を相手」に失礼を重ねた挙句、「チカラを示せ」などと無茶振りする脳筋兄弟を困惑顔で見上げながら、
「ねぇハクさぁん、この人達っていったい……」
 すると問われたハクサンも半笑いで彼らを見上げ、
「さぁ♪」
 その無責任な反応に、ムッとするドロプウォ―ト。
 
「さぁって……貴方ぁ「根回しをした」のではなくてぇ!?」

 責める物言いに、彼はすかさず、
「ねっ、根回しはしたよぉ?! ここまでの道中と、カルニヴァ国国王にも、ぼくぉ署名入り書簡で「勇者入国の知らせ」ってさぁ!」
 弁明したが、脳筋兄弟から「堪え難き屈辱」を与えられたターナップは納得いかず、八つ当たり気味に、
「んならぁ、あんで「こんな事」になってんだぁ!」
「しっ、知らないよぉおぉ!」
 本人的には「やるべき事はやった」つもりらしく半泣きで訴えたが、そんな彼に対し、

「「「…………」」」

 批判のジト目を向ける女性陣。
(((根回ししての、アレ(ですの・なのでぇすぅ・なのかぁい)……)))
 半狂乱の女たちに共犯者扱いされて追い回され続けた挙句、宿に宿泊できず、入浴さえ満足に出来なかった、腹立たしい道中を思い返し。
(!)
 瞬時に視線の意味を悟るハクサン。
 それまで半泣きで、自身も被害者であるのを訴えていた態度が一変、

「ま、まぁ、旅に少々の想定外はつきものだよ♪」

 誤魔化しの笑い顔。
 そのあからさまな掌返しに、
(((((少々ぉ?!!!)))))
 苛立ちを覚えた五人が、心の中で強くツッコミを入れていると、

『『さあぁさ、さぁさ、勇者一行が真実ならばぁ! 我らに、即座に、そのチカラを示すでアールゥ!』』

 苛立ちを煽る、上から目線の暑苦しい声が。
 あっちもコッチも迷惑千万、理不尽の連続に、
(ッ!!!!!!)
 ドロプウォートの中の何かが「ぶちっ!」と、音を立ててキレた。
 何より、ラディッシュを真の勇者か疑う発言に。
 
 怒髪冠を衝くが如く、激しい怒りに猛る彼女であったが、表面上の表情は異様とも思える穏やかな、笑顔中の笑顔で、
「それほど実力を知りたいのでしたら、先ずは「ワタクシが」お相手をして差し上げますですわ♪」
 満面の笑顔。

 しかし、一人称を「ワタクシ」と言っている時点で、既に怒りで「自制のタガ」が外れかけている証。
 それを証明するが如く、笑顔の彼女の背中越しに見えた周囲の景色は、彼女の内から漏れ出る、堪え切れぬ「怒りのオーラ」で陽炎の様に揺らいで見え、

(((((ま、マジで怒っていらっしゃる……)))))

 背筋に冷たい物を感じるラディッシュ達。それと気付かぬ門番兄弟二人が、これから受けるであろう「厳しい仕打ち」を想像し、自業自得と思う反面、憐れにも思った数分後、

『『しぃ……失礼しましたで……アール……』』

 静々と、大門を開け放つ兄と弟。
 その顔は見るも無残。
 ボコボコに腫れ上がっていた。
 正にタコ殴り。

 そんな憐れな姿に変わり果てた兄弟を前に、未だ怒りが収まりきらない様子のドロプウォ―ト。
 鼻息荒く、
「初めから素直にそうすれば良いのですわぁ!」
「「…………」」
 自ら「無礼な挑戦状」を叩きつけた挙句、揃って瞬殺された脳筋門番兄弟は返す言葉も無く、

『『ど……どぅぞ……お通り下さいなのでぇアール……』』

 恭しく(弱弱しく)頭を下げた。
「「「「「「…………」」」」」」
 色々思う所はあり同情感は否めなかったが、晴れて、今度こそカルニヴァ国入国である。

 打ちひしがれる巨漢二人を横目に、ラディッシュ達は遂に第二の目的地に足を踏み入れ、踏み入れた途端、
『門番兄弟を瞬殺とは、やるじゃないか四大ぃ♪』
((((((はぁ……))))))
 新たな上から目線の声に、辟易顔して歩みを止めた。
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