ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-42

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 じぃやはプルプレアの祖父。

 それはさて置き、祖父の静かな頷きから「同意を得た」と理解した彼女は、玉座の現王カルニヴァを真っ直ぐ見据え、

『全ての罪は「私が」負います!』

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 謁見の間にいた全ての人々が言葉を失った。
 罪の全てを背負うと言う事は、人々の怒りを一身に浴びながら、火刑台に立つのを意味したから。

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 異様な沈黙が場を支配する中、じぃやは「場違い」と思える陽気な声で「ハッハッハッ」と笑い出し、
「王家の信頼を守る為には、致し方ありませんなぁ」
(ッ!)
 真っ先に血相を変えたのは現王カルニヴァ。
 
「笑い事じゃない、じぃやぁ! 罪を肩代わりすると言う事は、プレアを火刑台に上げると言う事なのだぞォ! 実の孫を無下に火あぶりにする気かァ! 一族とて罪を問われる事になるのだぞォ!」

 しかし、じぃやは平然と、
「お気遣い、感謝致します」
 前置きした上で、
「我が一族と申しましても、かの娘の父であった「わたくしめの息子」は早死にし、その妻も、既に他界。後継は孫娘のプルプレアしか居らず、遅かれ早かれ、わたくしめの死を以て継承権は失われ、御家は断絶にございます。なれば信頼を置く主の為、我が身を差し出すが「良き従者の務め」にございます」
「だがぁ!」
 カルニヴァは、

「しかし…………」

 以降の言葉を続ける事が出来なかった。

 在位したばかりで臣民からの信頼も十分とは言えず、プルプレアが指摘した通り、内側にも敵を多く抱えているのも事実であり、今、王家の血筋に不信を持たれるのが得策でないのも事実であったから。
 カルニヴァ国の今後を大きく左右する言葉が飛び交うさ中、ラディッシュは、
(どっ、ど、ど、どぅしよう! このままじゃプルプレアさんがぁ!)
 心の内で激しく狼狽していた。
 誰かが責任を取らなければ、事態を収める事が出来ないのを理解しつつ。
 そんな彼の、内なる惑いを察するドロプウォート。
(ラディ)
(!)
 振り向いた彼に異様なほど、平静な口調の小声で、

(これは「この国の政」。どの様な結果が導き出されようとも、今は、私達にとやかく言う権利はありませんのですわぁ)

 長らく国政の近くに居た彼女の言葉には重みがあった。
 とは言え、
(…………)
 共に居るのが当たり前の存在となったプルプレアに対する言動としては、冷たく思え、
(でも……)
 反論を口にしようとしたが、
(!?)
 彼は気が付いた。
 密かに固く握られ、小さく震える彼女の手に。
(どうにも出来なくて、悔しくて、歯がゆくて……それは僕だけじゃないんだ……)
 彼女が口にした「今は」と言う想いを足掛かりに、
(うん……「今は」黙って見守るよ)
 ラディッシュが小さく頷き返すと同時、
 
『貴方(プルプレア)にそんな事をされたら、私はこれから、どの様な顔をして生きて行けば良いと言うの!』

 感情の高ぶりと共に、女性としての素が隠し切れなくなるウトリクラリア。
 悲痛な声を上げると、プルプレアは陰りを持った笑みを浮かべ、
 「私に全ての罪を擦り付け、何食わぬ顔で王と結婚なさぁい」
「え?!」
「そして内では、二人して延々と思うの。私への謝罪を」
「「…………」」
「それが、貴方たちがこれから一生背負う、罪と贖罪」
 しかし幼馴染みの二人には分かっていた。

 それが「恨み」から出た言葉ではなく、国を想い、民を想い、そして何より二人を想って口にした「対外的憎まれ口」であるのを。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 ラディッシュ達にも分かってはいた。
 分かってはいたが、否定を口にする事は出来なかった。
 否定を口にする事。
 それはつまり、彼女の並々ならぬ決意に、泥を塗るに等しい行為であったから。
 
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