ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-3

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 間一髪、命を救われ呆気にとられるラディッシュを背に、大剣を地面に突き立て、グラン・ディフロイスを睨むサジタリア。
 その姿は「俺にだけ掛かって来い」と言わんばかりの、憤怒の明王の佇まい。
 見上げた岩盤の如き背に、ラディッシュは戸惑いながらも、

「あ、ありがと、ございま、」
『礼など不要』

 背を向けたまま素っ気なく遮るサジタリア。
 そこへ、

「「「「「「ラディ!」」」」」」

 ドロプウォート達も駆け付けると、サジタリアは肩越しにラディッシュ達をチラ見し、一瞬だけハクサンを異物の様に視界に捉えた後、
(これが「今の七草」とは、な……)
 内心に呆れを抱きながら、重々しい口調で以て、

『未熟者が。己(おの)が居(お)る場が、常に戦場(いくさば)であるのを忘れるでない』

 苦言を呈すと、片手長剣を構え静観するグラン・ディフロイスに意識は向けたまま、

「千本刀(せんぼんがたな)は居るか!」
(((((((?)))))))

 ラディッシュ達が疑問を口にするより先、森の暗がりの中から、

『小生、常に御主人様のソバに「付かず離れず」居るであります!』

 黒いランドセルを背負った、アデリーペンギンが姿を現した。
 そのヨタヨタと、愛らしく歩く姿に、

((((!!!))))

 色めき立つ女性陣。
「何ですのぉ、この生き物はぁあぁ♪」
 ドロプウォートが緩んだ表情で抱き付こうとすると、

「気安いぞ、小娘ぇ!」

 ペンギンは見た目にそぐわぬ軽やかな体さばきでヒラリとかわし、
「小生は天世に「この方あり」と謳われる、サジタリア様の第一の配下であるぞぉ!」
 憤慨しながらペンギンの翼であるフリッパーをパタパタ。
 怒っている姿も愛らしくあったが、

『余談は良い』

 サジタリアは変わらぬ鬼瓦で、肩越しチラリと二の句を遮り、
「ワレが戦っている間に、コヤツらに、まともな獲物を握らせてやれ」
「御主人様の大切な収蔵品(コレクション)を、でありますか!? この様な輩の為に、収集した獲物の数が「千」ではなくなってしまうでありますが!」
 千本刀と呼ばれたペンギンが慄きの声を上げたが、

「構わん」

 サジタリアは背を向けたまま短く許可を申し付け、
「百人の天世人とて、今は百人ではなかろうが」
 些末な事と、言わんばかりの物言いに、

『か、かしこまりましたであります』

 戸惑いを隠せぬ千本刀が頷くと、
「頼んだぞ」
 サジタリアは地面に突き立てた大剣を引き抜き、静観していた黒ローブのグラン・ディフロイスに向かって行った。
「「「「「「…………」」」」」」
 何が何やら、訳が分からないラディッシュ達。

 そんな彼ら、彼女たちを前に千本刀は短くため息を吐くと、主(あるじ)が強敵を相手に激戦を再開したにもかかわらず平然と、呆れ交じりでラディッシュを見上げ、
「おい今の勇者ぁ! キサマが持つ剣を小生に見せるであります!」
「う、うん……」
 促されるまま、所持している剣を鞘から抜き出し見せると、

『ギャワワァーーーッ!』

 何を思ってか、千本刀は血相を変えて憤慨し、
「ギャワァ!」
 怒り任せにフリッパーを一振り、
 パキィィィン!
 ラディッシュの剣を叩き折った。
 無残な廃品と化す、戦場で拾った、市販品の、名も無き剣。
 相棒との突然の別れに、
「あぁ!」
 ラディッシュが悲鳴を上げると、

『「あぁ」じゃないのでありますゥ!』

 千本刀は怒り心頭の御様子で、ラディッシュに指(羽)差し、
「キサマ! 勇者がぁ、こぉんな「なまくら刀」を差すなど戦場(いくさば)をナメテイルでありますかァ!」
 激昂しながらフリッパーをパタパタ。
「御主人様の命ゆえ! 今のキサマらに見合った剣を、御主人様の「大切な収蔵品」の中からくれてやるから有難く使うでありますゥ!」
 背からランドセルを降ろし始めると、
「う、うん……ありがと……」
 戸惑い気味に謝意を伝えるラディッシュと、困惑顔を見合わせる仲間たち。
 当然である。
 彼が背負うランドセルは三十センチ×二十センチほどの小箱で、厚さも十五センチ程度。
 そんな空間に収まる刃物など、料理包丁程度であったから。
 不安を抱くラディッシュを横目に、千本刀が小さなランドセルの中に手(羽)を突っ込み、そして引き抜くと、
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
 どう考えても鞄のサイズとは見合わない一振りの剣が、スルスルスルスルと出て来て、

「これを使うと良いでありますゥ!」

 驚きのラディッシュの前に差し出した。
 とは言え、剣自体は一見したところ、普通の両刃の剣。
 違う所と言えば、柄の近くに宝珠のような物が埋め込まれている事くらいであろうか。
 しかし、

「!」

 手に取って初めて分かった。
 その剣が持つ、絶対的存在感に。
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