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第五章
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その頃コマクサは――
隠し切れない怒りと共に、天宮内にある私室へ向かっていた。
≪触らぬ神に祟りなし≫
そそくさと道を開けて頭を下げる、道すがら出会ってしまった「不幸な職員」たち。
しかし「怒りの主」は視界にさえ入って居ないのか、挨拶を返す事も、八つ当たりをする事も無く通り過ぎ、
(((((ほっ……)))))
職員たちは胸を撫で下ろし、真っ赤な仏頂面したコマクサは、私室に入るなり怒り任せに「バァン!」と、過剰な音を立てて扉を閉め、
≪我が天法を以て我は行使すッ!≫
不貞腐れ声で前小節を唱えて、その身を白き輝きに包み、
≪隔絶ッ!≫
リビング付き高級マンションを思わせる、執務をするには無意味と思える「広々した部屋」を現空間から切り離し、
『どいつもこいつもワシをナメ腐りおってぇ、決して許さぬぞォオォッォオオォォッ!』
恨み交じりの怒りの咆哮を上げた。
すると隔絶空間で在りながら、隣の部屋へ続く扉が普通に開き、
『随分と御機嫌斜めの様ですね』
姿を現したのは両眼をつぶったままの、謎の短髪男。
しかしコマクサは驚く様子も無く、むしろ積み立てた怒りをぶちまける様に、
『コレはどう言う事だフリンジィ! これでは話がまるで違うではないかァ!』
「何の話です?」
「とぼける気かァ! 裏で何をしているかは知らぬが、ウヌはワシに言ったではないか!」
「何をですか?」
平静な返しに怒りを増し、
『異世界人どもが居る間に問題が起きれば「奴らが居るから問題が起こる」と印象付でき、体よく天世から追い払えるとぉ!』
「それが何か?」
「それが「何か」ではないわァ! 事が起こる度に悪くなるのは「ワシの立場ばかり」ではないかァ!」
怒り心頭でまくし立てたが、フリンジと呼ばれた謎の男は両眼をつぶったまま、変わらぬ平静で、
「異な事を申される」
「何だと!」
「現に町の人々の間では「その様に噂されている」と、当方は聞き及んでおりますが?」
「そっ、それは、」
「それに何事にも「想定外」はつきもの。都度、修正を加えれば良いだけの話」
「た、確かにそうかも知れぬがぁ」
「今回の想定外は「チョウカイ」と言う「権力を持った者」が立ちはだかったが為」
「う……」
返す言葉なく押し黙る彼に、
「よろしいですかな?」
無益な問答に時間を割いている暇は無いと言わんばかり、話を打ち切ろうとしたが、コマクサは言いくるめられたのが気に入らなかったのか、揚げ足を取るように、
「しっ、しかし「やり過ぎ」ではないのか?!」
「何がですかな?」
「何がではない! あの騒ぎは貴様の差し金であろう! いったい何人の天世人が犠牲になったと、」
「死にはしないのでしょう?」
『な!?』
「天世人は」
「!」
「魂が休息を終えれば再び目覚める。むしろ「若返れて」良かったじゃないですか? 何か問題でも?」
「…………」
それが事実であっても、襲われた人達が汚染の苦しみ経験し、人狼と化した人達が「死ぬ恐怖」を体験したのは事実であり、それが分かっていながら平然と「問題が無い」と言ってのけるフリンジに、
(ワシは……ワシはとんでもない者と、手を組んでしまったのかも知れぬ……)
今更ながら後悔を覚えた。
しかしフリンジは、彼の「その様な不安」を気にする風もなく、両眼をつぶったまま淡々と、
「作戦を次の段階に移行しようかと思います」
「き、昨日の今日で、もう動くと言うのか?!」
「はい。それが何か?」
「よ、よもや裏に「ワシが居る事」が露見したりせぬであろうな?!」
フリンジは両眼をつぶったままフッと初めて小さく笑い、
「何を肝の小さき事を言っておいでか?」
「ヌシは……ヌシはいったい何を企んでおる?」
「企むなどと失敬な」
コマクサの訝しんだ眼差しを一笑に付し、
「全ては貴殿との契約に則ってのこと」
「…………」
「まぁ、何が起きるかはスグに分かりましょう」
背を向けると、
「ど、何処へ行く!」
焦りを滲ませる問いに、
「準備がありますので、これにて失礼」
入って来た扉から出て行った。
「…………」
不安の色を隠せないコマクサ。
フリンジと出会った日を思い返す。
隠し切れない怒りと共に、天宮内にある私室へ向かっていた。
≪触らぬ神に祟りなし≫
そそくさと道を開けて頭を下げる、道すがら出会ってしまった「不幸な職員」たち。
しかし「怒りの主」は視界にさえ入って居ないのか、挨拶を返す事も、八つ当たりをする事も無く通り過ぎ、
(((((ほっ……)))))
職員たちは胸を撫で下ろし、真っ赤な仏頂面したコマクサは、私室に入るなり怒り任せに「バァン!」と、過剰な音を立てて扉を閉め、
≪我が天法を以て我は行使すッ!≫
不貞腐れ声で前小節を唱えて、その身を白き輝きに包み、
≪隔絶ッ!≫
リビング付き高級マンションを思わせる、執務をするには無意味と思える「広々した部屋」を現空間から切り離し、
『どいつもこいつもワシをナメ腐りおってぇ、決して許さぬぞォオォッォオオォォッ!』
恨み交じりの怒りの咆哮を上げた。
すると隔絶空間で在りながら、隣の部屋へ続く扉が普通に開き、
『随分と御機嫌斜めの様ですね』
姿を現したのは両眼をつぶったままの、謎の短髪男。
しかしコマクサは驚く様子も無く、むしろ積み立てた怒りをぶちまける様に、
『コレはどう言う事だフリンジィ! これでは話がまるで違うではないかァ!』
「何の話です?」
「とぼける気かァ! 裏で何をしているかは知らぬが、ウヌはワシに言ったではないか!」
「何をですか?」
平静な返しに怒りを増し、
『異世界人どもが居る間に問題が起きれば「奴らが居るから問題が起こる」と印象付でき、体よく天世から追い払えるとぉ!』
「それが何か?」
「それが「何か」ではないわァ! 事が起こる度に悪くなるのは「ワシの立場ばかり」ではないかァ!」
怒り心頭でまくし立てたが、フリンジと呼ばれた謎の男は両眼をつぶったまま、変わらぬ平静で、
「異な事を申される」
「何だと!」
「現に町の人々の間では「その様に噂されている」と、当方は聞き及んでおりますが?」
「そっ、それは、」
「それに何事にも「想定外」はつきもの。都度、修正を加えれば良いだけの話」
「た、確かにそうかも知れぬがぁ」
「今回の想定外は「チョウカイ」と言う「権力を持った者」が立ちはだかったが為」
「う……」
返す言葉なく押し黙る彼に、
「よろしいですかな?」
無益な問答に時間を割いている暇は無いと言わんばかり、話を打ち切ろうとしたが、コマクサは言いくるめられたのが気に入らなかったのか、揚げ足を取るように、
「しっ、しかし「やり過ぎ」ではないのか?!」
「何がですかな?」
「何がではない! あの騒ぎは貴様の差し金であろう! いったい何人の天世人が犠牲になったと、」
「死にはしないのでしょう?」
『な!?』
「天世人は」
「!」
「魂が休息を終えれば再び目覚める。むしろ「若返れて」良かったじゃないですか? 何か問題でも?」
「…………」
それが事実であっても、襲われた人達が汚染の苦しみ経験し、人狼と化した人達が「死ぬ恐怖」を体験したのは事実であり、それが分かっていながら平然と「問題が無い」と言ってのけるフリンジに、
(ワシは……ワシはとんでもない者と、手を組んでしまったのかも知れぬ……)
今更ながら後悔を覚えた。
しかしフリンジは、彼の「その様な不安」を気にする風もなく、両眼をつぶったまま淡々と、
「作戦を次の段階に移行しようかと思います」
「き、昨日の今日で、もう動くと言うのか?!」
「はい。それが何か?」
「よ、よもや裏に「ワシが居る事」が露見したりせぬであろうな?!」
フリンジは両眼をつぶったままフッと初めて小さく笑い、
「何を肝の小さき事を言っておいでか?」
「ヌシは……ヌシはいったい何を企んでおる?」
「企むなどと失敬な」
コマクサの訝しんだ眼差しを一笑に付し、
「全ては貴殿との契約に則ってのこと」
「…………」
「まぁ、何が起きるかはスグに分かりましょう」
背を向けると、
「ど、何処へ行く!」
焦りを滲ませる問いに、
「準備がありますので、これにて失礼」
入って来た扉から出て行った。
「…………」
不安の色を隠せないコマクサ。
フリンジと出会った日を思い返す。
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