ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
350 / 895
第六章

6-2

しおりを挟む
 ドロプウォートの導きでオエナンサ家の屋敷に入るラディッシュ達――

 屋敷に入るなり、

『『当家へようこそぉ~~~♪』』

 両親がロビー中央で歌劇団ばりの笑顔とポーズで歓迎を示し、

『ちょ! なぁん何ですのぉコレはぁあぁあぁぁ!?』

 激しく狼狽する彼女を尻目に「ハの字」に並び立つメイド服姿の使用人たちも一斉に、

『『『『『『『『お帰りなさいませぇ御主人様、お嬢様がたぁ♪』』』』』』』』

 満面の笑顔で頭を下げ、大歓迎を示した。
 何故にこの様な「過剰な歓迎」に至ったのか、理由は単純明快。

 ボッチで名を馳せた愛娘に、敬愛を以てお仕えするお嬢様に、複数の友人が出来たから。

 彼女の生い立ちを鑑みれば、両親や使用人たちの喜びようにも理解は示せるが、学友を初めて家に招待した時の様な「両親の過度な歓待」は子供にとって「羞恥の極み」であり、地獄絵図。
 穴があったら入りたいほどの恥ずかしさから彼女は顔を真っ赤に、

『この様な出迎えなどぉいつもはしませぇんですのにぃいぃぃいぃ!!!』

 身振り手振りで止めさせようと試みたが、喜び溢れる両親や使用人たちは喜びのあまりにハンカチで目頭をそっと抑え、

「私の娘に、こんなに沢山の友達が出来たとはぁ~」
「本当ですわねぇ~」
「「「「「「「「嬉しゅうございますぅ~」」」」」」」」

 もはや公開処刑以外の何物でもなく、

『ひぃやぁああぁっぁぁあぁ! 止めてですわぁあぁっぁああぁ!』
(いっそ事ぉひと思いに殺してですわぁあぁぁあぁっぁぁ!)

 耐え兼ねたドロプウォートは頭を抱えて屋敷の奥へ逃げて行き、
「「「「「「「「御待ち下さいぃお嬢様ぁあぁあぁ!」」」」」」」」
 使用人たちは喜びの涙と共に彼女の後を一斉に追って行った。
 仲間の家族のノリの波に乗り切れず、

「「「「「「…………」」」」」」

 ポツンと、置き去り感を漂わせるラディッシュ達。
 戸惑いを覚え、
(え、えぇと……僕たちは、どうしたら……)
 すると、ドロプウォートの両親がニコやかに歩み寄って来て、

「ラディッシュ君、久しぶりですねぇ。パストリスさんも」
((!))

 ハッとした様子の二人と握手を交わし、初対面となるターナップ達にも、
「いつも娘と居てくれて、本当にありがとう」
 妻と共々、恭しく頭を下げたが、
「「?」」
 ラディッシュの足に、隠れる様にしがみつくチィックウィードに目を留め、

「この子は?」
「どちらの子、ですの?」

 するとチィックウィードはおずおずと顔を覗かせ、初めて目にした二人を前に、気恥ずかしそうにラディッシュを見上げながら、
「ねぇねぇパパぁ」

『『パパぁあぁ!?』』

 衝撃を受ける両親。
 愛娘が思いを寄せる人物を「パパ」と呼ぶ幼い少女を目の当たりに、

(我が娘は「敗北」を期したのかぁ~!)
(あの子が負けてしまうなんてぇ~!)

 愕然を隠せずに居ると、誤解を生んだ事を瞬時に悟ったラディッシュは、
「あっ、あの、コレは、そのぉ!」
 弁明を口にしようとしたが、

(そ、そぅ言えばチィちゃんのママは「ドロプ」だったぁ!?)

 下手な釈明は「余計に混乱を招く」と気付き、気付いてしまうと明快な言葉が浮かんで来ず、
(何てぇ説明すれば良いんだぁ?!)
 言葉に詰まると、その間隙を縫い、幼きチィックウィードはラディッシュの足の陰から落胆する男女(ドロプウォートの両親)を不思議そうに見上げ、

「「じぃじ」と「ばぁば」なぉ?」
(ッ!)

 この一言は「マズイ!」と瞬間的に思うラディッシュであったが、時すでに遅し。
 ドロプウォートの両親は全てを、誤解した形で一瞬にして悟り、表情が地獄から天国へ一転。
 花が咲いた様な笑顔を見せながら、

『私達の「初孫」でぇすよよぉおぉ!』
『でぇすわねぇえぇぇ旦那様ぁあぁ!』

 チィックウィードを満面の笑顔で抱き上げ愛おし気に頬擦りすると、

『ちょ、ちょっと待ちぃなぁ御二人ともぉおぉ!』

 すかさず話に割って入ったのはニプルウォート。
 ラディッシュとドロプウォートの仲を、エルブ国四大貴族の公認とされては堪らないとばかりに、
「そんな訳が無いだろうさぁ! その子の見た目年齢から、」
 逆算してみろと立場も忘れて言い放とうとしたが、

「「…………」」

 有頂天の「じぃじ」と「ばぁば」は外野の雑音など全く耳に入らない様子で、小躍りしそうな勢いで歓喜していて、

『コラァー! ウチの話を聞けぇー!』
(あの娘(ドロプウォート)にして、この親かぁ!)

 我が道を突き進む天然系の「血の繋がり」に仲間たちと苦笑しながら、パストリスとカドウィードそしてターナップと共に、両親の誤解を一つ一つ丁寧に解いていった。
 やがて、その努力の甲斐あってか、

「わたくし達の「早とちり」だったようですわねぇ、旦那様ぁ♪」
「その様だねぇ♪」

 納得の笑顔を見せる二人。
 しかし、

「「「「…………」」」」

 何処か、浮かない顔の仲間たち。
 それもその筈、肩を寄せて並び座るドロプウォートの両親は、互いの膝上をまたぐ形でチィックウィードを座らせ、宝物でも愛でる眼差しで、愛おし気に頭を撫で撫でしていたから。
((((本当に理解してくれたのか……))))
 一抹の不安を残し。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...