ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-27

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 三人が向かう先にあるのは、地世のチカラに汚染された木が立つ場所。

 芳しい香りの果実を実らせる木ではあるが、それは「捕食する為の獲物」を呼び寄せる罠であり、盗賊村の村長たちが「裏切り者などの処刑」に利用していた木であり、かつてラディッシュも危うい思いをした木が立つ場所であった。

 その場所が「処刑場であった」と親子が知っていたかは不明だが、危険を知る両親は幼い娘に幾度となく「近づかないように」と念押しを繰り返していた場所であり、三人は木から十分な距離を確保しつつ、

「「「…………」」」

 物陰から、そっと様子を窺い、

『『『!?』』』

 驚いた。
 野生動物すら近づかない「危険な巨木」の太枝に、一人のケモ耳少女が座って枝から果実をもいで食べていたのである。
 思いも寄らず遭遇した「同胞少女の奇行」に、夫は驚愕のあまり警戒心も忘れて物陰から飛び出し、

『キミはいったい!』

 声を発したのが先か、次の瞬間、

『ッ!』

 謎のケモ耳少女は食べていた果実を投げ出し、慌てた様子で森の奥へと消えて行った。
「「…………」」
 立ち尽くす、妖人の夫婦。
「なっ……何だったんだ……今のは……」
「何なんでしょ……」
 呆気に取られ、少女が姿を消した森の奥を見つめていると、

『おいしいぃ!』

 娘の声が。

「「?!」」

 我に返って振り向くと、大切な一人娘が「あれほど危険」と教えていた木から果実をもいで食べていたのである。

『『!!!』』

 肝が潰れる思いで驚愕し、娘の下へ我が身の危険も顧みず駆け寄る夫婦。
 しかし、

「木から地世のチカラが?!」
「浄化……されてますわね?」

 それは「妖の木」のみならず、影響を受けていた周囲からも。
 驚きと戸惑いを隠せず、

「さっきの天法は……この為に?」
「そのよう……ですわね?」

 辺りを見回していると、

『パパ、ママ、おいしいよ♪』

 幼い娘が自らもいだ果実を二人に差し出し、差し出された両親は愛娘の屈託無い笑顔に、
「「…………」」
 父親は強張っていた表情を緩め、
「そうか、美味しいか」
 母親も、
「これで食卓が、やっと華やぎますわね」
 食生活の厳しさを窺わせながらも自然な笑みを見せ、そんな家族の団らんの様子を、

「…………」

 物陰からそっと見つめる謎のケモミミ少女。
 その正体は、地世のチカラの一部を解放したパストリス。
 親子の笑顔を「自分の喜び」のように微笑み、眺めていると、

『アンタも何の見返りも無く、よくやるわねぇ~』

 背後から、サロワートの呆れ交じりの声が。
 しかし彼女は反発するでもなく、愛らしい笑顔で振り返り、

「ボクの勝手でやっているのでぇ、自己満足で良いのでぇす♪」

 それでも腑に落ちないサロワートは斜に構え、

「一時しのぎにしかならないのは、アンタも分かってるんでしょ?」
「何がでぇす?」
「何がって……」

 話が通じていない様子に若干の苛立ちを以て、
「あの家も、この辺も、浄化領域で守られて訳じゃないんだから、あの家族は「いつか汚染獣に襲われる」って言ってんのよ!」
 彼女なりの物言いで、妖人の家族に対する気遣いを見せたが、

「大丈夫なのでぇす♪」

 パストリスはニコリと笑って一蹴し、
「領域作りも、お願したのでぇす♪」
「え?!」
 すると家の方から「浄化のチカラの広がり」を感じ、

「まさか、あの家を教会代わりにぃ?!」

 荒業(あらわざ)、裏技に驚きはしたものの、
(言われてみればラディになら可能ね……百人の天世人のチカラを受け継いだ彼なら)
 辛苦を背負った「見ず知らずの家族」の為、見返りを求めず、名乗りもせず、労も惜しまず手を貸すその姿は彼女の眼に眩しく映り、そんな彼ら彼女たちと縁(えにし)を結ぶ事が出来たサロワートは、

「ほんとぉ、アンタ達ってぇ……」

 呆れ口調とは裏腹に、そこはかとない嬉しさも滲ませていた。
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