ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
497 / 895
第七章

7-32

しおりを挟む
 話は少し時間を遡り――

 ゴーレムの存在を目の当たりにしたラディッシュ達。
 対処の方針が決められず、難しい顔を突き合わせる中、
(!)
 何かに気付くパストリス。
 彼女は唐突に、

『あっ、あのぉ! なのでぇすぅ!』

 少し恥ずかしそうな赤面顔で声を上げ、
「だっ、大事なお話し中ぅごめんなさぁいでぇす! ぼっ、ボクちょっと「お花を摘み」に行きたいのでぇす!」
「「「「「?!」」」」」
 突然の「トイレ宣言」に面を食らうラディッシュ達であったが、彼女は仲間たちの反応を見る余裕も、素振りさえ見せずに、

「ちっ、チィちゃんについて来て欲しいのでぇす! なのでぇ一緒に行こうなのでぇす! 行こうなのでぇす!」

 幼子の手を即座に、強引に引き、森の奥へと駆け出した。
 引かれるチィックウィードの安堵の笑顔から、

(((((あっ!)))))

 全てを悟る仲間たち。
 幼きチィックウィードが幼いなりに「大人の会話の邪魔」をしないよう考え、トイレをトイレを我慢していて、気付いたパストリスが彼女の羞恥を被った事に。
 根を詰め過ぎ、周りを気にする事さえ出来なくなっていたのにも気付かされ、
(肩のチカラが入り過ぎてたのかなぁ)
 ラディッシュ達は反省を覚え、

(((((チィちゃん、パスト、ごめん)))))

 仲間たちの謝罪の視線を背に、パストリスに手を引かれながら森を進む「チィックウィードは」と言うと、

「パストおねぇちゃん、ありがとなぉ♪」

 天使の笑顔で感謝。
 幼いながらも、自分の為に「彼女が恥を被ってくれた」のが分かるから。
 素直な謝意に、パストリスも手を引いて森を進みながら、

「良いのでぇす♪ ボクは「チィちゃんのおねえちゃん」なのでぇす♪ おねぇさんは妹を守るのでぇす♪」

 嬉しく思い、少し調子に乗ってお姉さん振った笑顔で立ち止まり、
「これだけ離れれば、チィちゃんも恥ずかしく無いと思うのでぇす♪」
 周囲を見回すと、

「あの茂みの向こうなら「目隠しになる」と、思うでぇす♪」

 十メートルほど先にある、草木が茂った藪を笑顔で指差し、
「良いでぇすかぁ、何かあったらボクを呼ぶのでぇす♪」
「ありがとなぉパスおねぇさん♪」
 チィックウィードは「パストリスの姉モード」にツッコミを入れることなく天使の笑顔で応えつつ、限界も近かったようで、

「・・・」

 足早に、そそくさと藪の向こうへ駆けて行った。
 少々素っ気ない態度にも見えたが、パストリスは幼い彼女に失敗をさせずに済んだ事にホッと胸を撫で下ろし、

(間に合って良かったのでぇすぅ。恥ずかしい思いをした甲斐はあったのでぇすぅ)

 彼女の笑顔を思い返すたび、
(何か「本当のお姉ちゃんらしい事」が出来た気がするのでぇすぅ♪)
 仲間たちの前で「かいてしまった恥」さえ誇らしく思えて来ると、妹(仮)が姿を消した藪の向こうから、

『なぁおっ!?』

 チィックウィードの慄き声が。

『チィちゃぁん!!!』

 反射的に駆け出すパストリス。
 何に驚いたのか確認する思考さえ無く、花摘みの最中であろう彼女の羞恥を考慮する余地もなく、血相を変えて走り、視界を遮る藪を突っ切り飛び出した先で目にしたのは、

『『『『『キョエェーーーーーーッ!』』』』』
『ッ!』

 服を着直すのに手間取るチィックウィードを取り囲む、汚染獣の群れであった。
 中型の体躯を持った獣たち。
 茂みが視界を遮り見えなかったのもあるが、森には強大なチカラを持った汚染獣が山と居て、気配が紛れてしまい、気付けなかったのである。
 しかしその様な冷静な分析など、

《ボクの妹に何をしようとしているのでぇすゥ!》

 怒り爆発寸前の姉(仮)パストリスの前では不要の論。
 大切な妹(仮)に手を出され、頭に血が上った彼女の立ち姿は、さながら「漆黒の明王」。
 光背に黒き焔(ほむら)を立ち昇らせ、妖人の姿となった彼女は、怒りの全てを一瞬の眼光に、

≪去(い)ねえ!≫

『『『『『ギョョエェエェッ!!!』』』』』

 脱兎の如き勢いで逃げ出す、狂暴化した汚染獣たち。
 怒れる彼女がよほど恐ろしく見えたのか震え上がって短い悲鳴を上げ、慌てふためき我先にと。
 その漫画のような逃げ姿に、

『・・・・・・』

 一瞬にして冷静を取り戻すパストリス。
 容姿が中世人に戻り、

(そ、そんなに怖がらなくても……)

 内心で、軽くショックを受けていた。
 他人を傷つけたり、威圧したりするのを好まない彼女ゆえの落ち込みではあったが、

『パストおねぇちゃんスゴイなぉ♪』
「?」

 歓喜の声に振り向くと、

「たたかわないでぇオセンジュをケチラシタなぉ♪」

 いつ何処で覚えたのか、難しい言葉を使って羨望の眼差しを向け、称賛する幼きチィックウィードに、
(そうか……ボク、血を流さないでチィちゃんを守れたのでぇす……)
 救われた思いで立ち尽くし、ラディッシュ達が駆け付けたのは、この直後であった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...