ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第七章

7-35

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 瞬き程度の間の後――

 暗闇の中、足の裏に伝わる地面と接した感覚。

(う、うぅ……何回経験しても気持ち悪い……)

 嘆くラディッシュであったが、この暗闇は「闇の世界」に飛ばされた訳ではなく、危険を察して思わず目をつぶってしまったダケの、人間が持つ一般的な条件反射。
 故にスグさま、

(みんなはぁ!)

 焦り交じりに両目を見開くと、
((((((…………))))))
 仲間たちも全員、揃いも揃って気持ち悪そうに座り込んでいて、

(良かった、みんな居る……)

 内心で安堵したが、気が抜けた途端に、

「うぷっ……」

 咄嗟に手で口を押え、
「今まで(飛ばされた中)で……うぅ……一番ヒドイかも……」
 ラディッシュも青い顔してヘタリ込んだ。

 しかし嘆いてばかりも居られない。

 いつ、何処から、どのような襲撃を受けるか分からないから。
 弱りながらも周囲を見回すと、

「…………」

 そこは「不帰の森」とは茂る木々が異なるものの、中世で目にする一般的な森の中。
 見慣れた景色の一つであり、派手な演出に遭遇した割の「地味な結果」に、

(罠に掛かって飛ばされだけぇ~?!)

 高木の枝葉の間から望むどんより雲をゲンナリ顔で見上げて、ため息交じり、
「あぁ~あぁ、僕たち、中世の何処に飛ばされちゃったのかなぁ~」
「まったくですわぁ……どの辺りなのでしょ……」
 未だ青い顔したドロプウォートも嘆きをこぼし、同じ顔した仲間たちも「労力に見合った対価」を得られなかった結果に嘆いていると、

『アンタ達ぃ馬っ鹿じゃないのォオ!!!?』
「「「「「「「!!!」」」」」」」

 聴き馴染みのある罵倒が。
 勇者組は声がした方に、

『『『『『『『ツンデレさぁん!』』』』』』』
『ツンデレ言うなぁ!』

 逆ギレしたのは、あの女性。
 地世に、半ば強引に連れ戻された筈の、地世の七草サロワートであった。
 彼女の健在に、

『いつ中世に来たのぉ!?』

 歓喜のラディッシュを皮切りに仲間たちも続々と、

「どうして連絡の一つもよこしませんわの!?」
「でぇすでぇす冷たいのでぇすぅ!」
「ツメタイなぉ♪ ツメタイなぉ♪」
「おおかたぁ恥ずかしくて顔を出せなかったんだろぅけどさぁ♪」
「げにぃありんすなぁ♪」
「あり得るぅあり得るぅ♪」

 笑い合っていると、

『はぁ~~~~~~』

 彼女は「怒(いか)る」どころか深いため息と共に、
「アンタ達ってばぁ前と変わらずブレもせずに呑気ねぇ~ここを何処だと思ってるのよぉ」
「「「「「「「?」」」」」」」
 問われて不思議顔を見合わせて後、

「「「「「「「中世の、」」」」」」」
『地世よぉ!』

 サロワートは食い気味にツッコミを入れ、首を傾げる七人に、

「いい加減に気付きなさいよぉ!!!」

 苦笑交じりに重ねてツッコんだが、あまりに唐突な話に、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 頭の処理が追い付かない勇者組。
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」
 各々しばし黙考した後、

『『『『『『ぅうぇええぇぇぇぇぇぇぇぇえええぇ!!!?』』』』』』』

 両眼が飛び出そうな驚きように、
「気付くのが遅いわよぉ……」
 呆れ顔で額を押さえるサロワート。

 七人の様子から、期せずして地世に足を踏み入れたのを察し、

「アンタ達ってば本当にぃ……出たのが「敵陣のど真ん中」だったら、どうするつもりだったのぉ……あの「ムッツリ変態」が、アンタ達を手ぐすね引いて待ってるのよぉ」
「「「「「「「む、ムッツリヘンタイぃ?!」」」」」」」
「フリンジよぉ!」
「「「「「「「あぁ~」」」」」」」

 まったり空気で、妙に得心が行く勇者組。
 何の準備も、心構えも出来ていなかった中で「地世に降り立った」のを告げられた、緊迫の場面であったにも関わらず。
 それどころかフリンジの数々の奇行、弄言(ろうげん)を思い出して、ユルイ納得の大きな頷きを見せる七人を前に、サロワートまでもが、彼とよほどソリが合わないのか苛立ちを交え、

「アノ変態ってばアンタ達に! 特にそこの「小っコイの」に御執心なのよぉ!」
「なぉ?」

 不機嫌顔でチィックウィードを指差し、

『とにかく!』

 ラディッシュ達の反応も待たずに、

「場所を変えるわよ!」

 唐突な宣言に、
「「「「「「「え?!」」」」」」」
 呆気に取られるラディッシュ達。

 すると彼女は焦りを滲ませ早口に、
「「え」じゃないわよ! いつまでもこんな所に居たらアイツに見つかるでしょ!」
 先陣切ってそそくさと歩き出し、話の流れの勢いに引きずられるように、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 後に続くラディッシュ達。
 とりあえず続きはしたが、当然の如く彼ら、彼女たちの思いとして、

(((((((それなら、なんでサロワートがここに?!)))))))

 前を行く背に疑問をぶつけようとした。
 しかし、

『『『『『『んのぉッ!!!』』』』』』』

 衝撃を受ける勇者組。
 その素っ頓狂な驚き声に、

「ちょ、な、何よいきなりぃ?!」

 足早であった彼女が振り返るのが先か、羞恥を窺わせる真っ赤な顔したドロプウォートは、

『どぅしてぇ貴方はいつもぉいつもぉ「身の護り」が甘いですわのぉおぉ!』

 サロワートのミニスカのめくれ上がりを叩(はた)き落とした。

『ーーーッ!!!』

 声なく驚愕するサロワート。
 赤面顔を背けるラディッシュとターナップ男子組を睨み付け、自身の自業自得の油断は棚に上げし、

『ぁアンタ達ぃ見てないでしょうねぇ!!!』

 堪え切れぬ恥ずかしさから顔を真っ赤に憤慨。

『『見てなぁい見てなぁいぃ!』』

 慌て即座に否定する男子二人であったが、彼女の猛りように気圧され思わず、

『『「青い水玉」なんてぇ!!!』』

 口走ってしまってから、
「「あ……」」
 蛇足の一言。

 しかし時、既に遅し。

 サロワートは赤い顔を更に耳まで赤らめ、
『馬鹿ぁあぁぁぁぁーーーーーーッ!』
 激昂し、
「忘れなさい忘れなさぁい今スグぅ忘れなさァい! 忘れられないなら存在ごと消してあげるわァあ!」
 刃先が怪しく光るナイフを懐から取り出し、

『『無茶苦茶だぁあぁぁあぁぁ!』』

 男子二人が「釣り合わない仕置き」に嘆きを上げると、

『許してやればイイじゃねぇかぁ、サロワさんよぉ~』

 ニプルウォートがヤレヤレ笑いで話に割って入り、割って入った途端に企み顔でニヤリと笑い、
「パンツの一度や二度ぉくらいでさぁ♪」
 否応なし、

『ッ!!!』

 過去の失敗まで思い出される、サロワート。
 羞恥の赤面顔から真顔に急変し、

「…………」

 殺意を感じる眼差しで二人を静かに見据え、

「やはり殺しておくべきね」
『『こらぁーーーーーーッ!』』

 男子二人が「いい加減にしろ」と言わんばかりの声を上げると、仲間たちから笑いが起こった。
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