ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-11

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 しばし後――

 暗闇の中から、
「う……うぅん……」
 ゆっくり目を開け始めるリンドウ。
 意識がハッキリし始めた彼女の目に映ったのは、

(天井しぃ……?)

 何処かの部屋の天井で、背中に感じる「ふわふわとした温もり」から、
(アーシってば……寝かされてるしぃ……)
 すると目の前に、

(?!)

 天井の景色を遮るように幼子が顔を覗き込み、天使の笑顔でニコリと笑い、
『リンちゃんが、おめざなぉ♪』
 隣の部屋の誰かに知らせるような声を上げた。
 するとすかさず、

『イケナイのでぇす、チィちゃん! 患者さんの前でぇ大きい声を出しては!』

 ロリ顔の少女が幼女をベッドから引きはがして注意。
 すると幼女は言われた注意を何処まで理解したのか不安にさせる笑顔で「ニヒヒ」と笑い、

「オコられちゃったなぉ♪」

 微笑ましい一場面であったが、ハッとするリンドウ。

(アーシはぁ百人の天世人の序列二位のリンドウしぃ! 弱い所を見せちゃイケナイしぃ!)

 乗り越えて来た数々の苦悩を思い起こし、
(アーシはぁいつまでもぉ寝てるワケにぃ、)
 起き上がろうとしたが、

「!?」

 ギョッとした。
(か、体が動かない、しぃ……)
 指先程度は動かせるものの、起き上がる事は出来なかった。
 そんな彼女に幼女は天使な笑顔で、

『ビョーニンはうごいちゃダメ、なぉ♪』

 苦言を呈し、
(アーシは病人じゃないしぃ……)
 諭されたリンドウは苦笑しつつ、

「アータってば、確か……ちぃ……チィックぅ……?」
「「チィちゃん」なぉ♪ チィックウィードなぉ♪」

 キラキラとした笑顔に、
(ま……マジ天使しぃ~♪)
 思わず顔を緩めると、ロリ顔の少女も、

「ボクは「パストリス」なのでぇす」

 負けず劣らずの愛らしい笑顔で、
「みんなは「パスト」とぉ呼んでくれるでぇすぅ♪」
 正に両手に花の看病。

(チィちゃんにパストちゃん~♪)

 リンドウのニヤケは収まりを知らなかったが、そこへ「芳しい香り」と共に、

『冗談抜きで、無理して起き上がるのは駄目ですよぉ、リンドウさぁん♪』

 やって来たのは、トレーを持ったラディッシュ。
 香りの素である、何かの料理を乗せて。

 そんな彼の顔を見た彼女はフワついた気分から現実に一気に戻り、
(!)
 とある「不穏な疑問」が脳裏をよぎった。

(あっ、アーシってばぁ、ここまでぇどうやってぇ運ばれて来たのしぃ!?)

 倒れた記憶は、ある。
 大勢の中世人の目があった、ただ中で。
 その中を、どのような「晒し者状態」で運ばれたのか想像すると、

(こぉ、怖くて訊けないしぃ……)

 彼を直視できず、思わず顔だけ背けた。
 体は動けぬ故に。

 その横顔に、
(まだ「御機嫌斜め」だったかなぁ~)
 苦笑の、勘違いラディッシュ。
 思い違いに気付かず、気遣いを多分に含んだ笑顔で以て、

「あんな状態だったら、倒れても仕方ないよぉ~」

 顔色を窺いながらフォローを入れ、トレーを持って、ゆっくり歩み寄りながら、
「地世の因子を持つ中世の人達に、(空腹状態で)あんなに囲まれてたんだから♪」
 体力を消耗した要因を伝えたつもりが言葉足らずから、

『えっ?!』

 ギョッとした表情で振り返るリンドウ。

「まさかアーシの体ってばぁ「地世のチカラ」に浸食されてぇ動けないしぃ?!」

 自ら思い至った「体が動かぬ理由」が空腹ではなく、汚染が原因と勘違いして青ざめ、焦りを口にした。
 すると誤解を招いた事に気付いたラディッシュは即座に、

『だっ、大丈夫だよぉリンドウさぁん♪』

 努めて優しく笑い掛け、

「万が一も考えて、体は浄化しておいたから♪」

 安心して療養に専念して欲しくて言ったつもりのフォローであったが、
(ん?! もしかして「体に触った」とか思われるんじゃ?!)
 ヘタレ勇者は、勝手に懸念に苛まれ、

『むっ、無意味に「体に触ったり」なんてぇしてないから安心してねぇ!』

 訊かれてもいない、弁明。
 それはむしろ蛇足でしかなく、

(むっ、無意味にぃ?!)

 言い回しが引っ掛かるリンドウ。
 彼の慌てぶりから、

(やっぱり「何かあった」のしぃ?!!!)

 重ねて誤解を招いたが、彼女の懸念は「ある意味」において正解していた。
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