ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-40

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 やがて発売日当日の朝、

『ヤッパぁ気になるしぃ!』

 リンドウは立ち上がってラディッシュの手を取り、
「隠れて様子を窺える本屋に連れてって欲しいのしぃ!」
「えっ?!」
 本音としては、一人で結果を見に行く勇気が持てない彼女が懇願すると、ゴゼンとヒレンも彼の手を取り、

『『よっ、よろしくぅ!』』

 堪らず便乗。
「えぇ?! ちょっ!」
 すると先輩振って余裕を見せていた勇者組の仲間たちまでもが、

「「「「「「!」」」」」」

 狼狽と懇願に、

『こっ、こんな大人数で潜めるお店なんて無いよぉ~!』

 結果として「くじ引きによる組み分け」をし、分散して様子を窺う事に。
 そして変装を言い出したのは、意外にもドロプウォート。
 ニプルウォート辺りが言い出しそうな「ノリ」ではなく、

《不要な騒ぎを起こしたくない》

 彼女なりに「真剣に考て」のことであったが、至誠な提案に悪ノリしたのがニプルウォート。
 過度に真面目な顔(フリ)して、全員分の変装グッズを用意。
 潜入のプロである彼女を信頼して任せたラディッシュ達ではあったが、

(((((((((どこにあったんだ?!)))))))))

 用意されたのはパーティー用としか思えない品々であり、
 (((((((((…………)))))))))
 流石に、着用に躊躇いを覚えた。

 しかし使用するに至ったのは開店時間まで残り少なかった事と、彼女の口八丁手八丁の口車に、まんまと乗せられてしまったから。
 陰でほくそ笑む彼女に気付けず。

 余談ではあるが、
 組み分けに際し「ラディッシュ・リンドウ組」に対する不平のような物は、勇者女子組から起きなかった。
 恋敵として危機感を覚える位置に「今の彼女」が居なかったから。

 二人一組となり、各々書店を目指す勇者と天世の混成チーム。
 地理に疎いリンドウはラディッシュに伴われ、

「きぃ、キンチョウするしぃ~」

 声を上擦らせると、前を行く彼は、
「心配しなくても大丈夫だよぉ~もし問題があったら、リブロンさんがその時点で指摘してくれてたから♪」
 先輩アシスタントとしての風を吹かせて、安心を笑顔で促した。
 内なる、

《評判が悪かったらホントどうしよう?!》

 足が竦みそうになるほどの不安をひた隠し。
 やがて目当ての書店が近付き、

「「…………」」

 角を曲がれば見える位置。

「「…………」」

 息を呑むラディッシュとリンドウ。
「「じゃ、じゃぁ……」」
 物陰からそっと様子を窺った二人は、

『『!』』

 目を見張った。

 そこには開店前に関わらず、多くの人だかり。

 リンドウは人の多さに、安堵やら、喜悦やら、不安やら、責任やら、ザワつく自身の気持ちを一旦落ち着かせようと、
「ふ、普段からぁこんなに混んでる店なぁんしぃ~?!」
 平静な、雑談めいた口調を装いラディッシュに尋ねた。
 その様な事など「有り得ぬ」と理解しながらも。

 理解しながらも、何か言葉を発しないと緊張で心が押し潰されそうだったから。
 経験上、それが分かる彼は「あはは」と笑って、そこにはあえて触れず、

「前評判は「悪くない」みたいだねぇ。陛下の本の発売日って、いつもこんな感じなんだよぉ♪」
「そ、そうなぁんしぃ」

 一先ずの安堵を得た彼女ではあったが、安堵を得ると、

「(読んで)ガッカリしないしぃ?!」

 次なる不安に苛まれた。

 開店前から集まった多くの人達が「落胆しないか」と。

 本の内容に対してならともかく、作画などの部分に責任の一端を担うラディッシュは、
「…………」
 流石に答えられない問いであり、平常心を欠いた彼女でもそれは分かるが故に、

「ご、ごめん、しぃ……」
「う、ううん……」

 二人は物陰から成り行きを、
「「…………」」
 ただひたすらに見守った。
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