ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
591 / 895
第八章

8-73

しおりを挟む
 一通りの任を終え帰路に就く失意の勇者組――

 程無く、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 重い足取りで村への帰還を果たすラディッシュと仲間たちであったが、村の入り口を前にした七人は、

『『『『『『『!?』』』』』』』

 驚愕の表情で言葉を失った。
 南門には勇者組の身を案じて集まった、村人たちやリンドウ、ヒレンが、今や遅しと到着を待っていたのだが、その中に、

《サロワートぉ?!!!》

 いつの間に姿を消した「分身体の小鳥」ではなく、フリンジに意識を搦め捕られていた本人の笑顔の立ち姿が。
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」
 幽霊でも見ているかのような顔して絶句する勇者組を彼女はケラケラと笑い、

『何てぇ顔してるのよぉ、アンタ達ぃ♪』

 その笑顔は紛れも無く、サロワート本人。
 フリンジを取り逃してしまった大失態からの逆転劇に、

「だっ、だってぇだってぇえぇ!」

 嬉しさのあまり泣き出しそうな顔して言葉が続かいラディッシュではあったが、
「!」
 手放しで喜んでも居られず、

「それでぇ体は大丈夫なのぉ?! 何とも無いのぉ?!!!」

 フリンジが施していた「卑劣な地法の発動」を心から心配したが、彼女は陰りを感じさせない笑顔のまま、

「話は分身体から聞いたわ♪ 大丈夫よ♪ アタシの中に「アノ変態のチカラ」は、もう感じない♪」

 そして少し照れ臭そうに、
「その……あ、ありがとうぉ、ラディ♪ みんな♪」
 その照れ笑いに、ラディッシュ達は安堵の笑みを浮かべた。

 しかし心の内では、
(((((((…………)))))))
 口に出来ない戸惑いも。

 この瞬間を、本当に、喜びとして、素直に受け取って良いモノかと。
 現在の「彼女の状態」がどうであれ、術者のフリンジに逃げられたのは事実であったから。

 すると隠した懸念を察したサロワートが「ヤレヤレ」とでも言いたげに、

「アンタ達ってばぁ心配性ねぇ~」

 ラディッシュの肩をパシパシ叩きながら、
「アタシの中に「チカラは感じない」って言ったでしょぉ? おおかた御堅いグラン辺りが「失敗の詰め腹」でも切らせたんでしょ♪」
 愁いのカケラも感じさせないその笑顔に、気を張っていた勇者組が思わず苦笑を浮かべると、

『アータってば、お気楽過ぎしぃ~』
『まったくだわぁ』

 いつの間に打ち解けたのか、天世の二人は呆れ笑い。
 対してサロワートも、

「全て丸く収まって、それでイイじゃない♪」

 気の置けない間柄となったのを窺わせつつ、勇者組には村人たちの一角を見るよう視線で促し、
「「「「「「「?」」」」」」」
 辿ったラディッシュ達は、

「「「「「「「!」」」」」」」

 思わず頬を緩めた。
 そこに居たのは、妖人の家族。
 両親はスパイダマグたち親衛隊に付き添われながらも勇者組と目が合うと笑顔の会釈で謝意を示しがた、子供の方は順応が早いらしく、既に村の子供たちと仲良く遊んでいた。

 フリンジの卑劣な策略に晒されつつも誰一人欠けること無く、それぞれが立場を越えて融和まで果たした、正に大団円と言える結末。

 ラディッシュは抱いていた憂いを笑顔で消し去り、

「サロワが言った通り、これは「満点」かなぁ♪」

 傍らに並び立つドロプウォートや仲間たちも、

「ですわねぇ♪」

 手にした成果に笑顔を見せた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...