ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-2

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 時は少し時間を戻し――

 プエラリアが座する玉座の前で跪く、地世の七草グラン・ディフロイス。
 誠(まこと)を以て目線を伏しながら、

「…………」

 捧げるように両手で差し出していたのは、バレーボールほどの大きさの「核(コア)のみ」の、黒球(くろたま)の姿と化したフリンジ。
 その憐れな姿を見るなり地世の王たるプエラリアは「キャハハ」と笑い、隣に坐する全身鎧に同意を求めるように、

「グランくんもぉ全く無意味なことをするよねぇ~♪ そんなモノぉ捨ておけば良かったのにねぇ♪」
「…………」

 嘲笑いに反論することも、表情を変える事も無いグラン・ディフィロイス。
 変わらぬ姿勢で目線を伏していると、彼の両手に乗った黒球フリンジが「カッ」と単眼を見開き口早に、

『御言葉ですが魔王様ぁあぁ!』

 話に割って入り、
「中世を目にして来た事で当方には「次なる策」があります! 故に何とぞ! 何卒ぉ信頼回復の機会ぉおぉ!」
 必死に懇願したが、玉座のプエラリアは、

「クスッ♪」
「?!」

 愉快そうに小さく笑い、

「キミはさぁ~賭けに負けたんだよぉ♪」
「!」
「自分の命を対価とした「最期の大勝負」にねぇ♪」
「そっ、それは……」

 次の機会は「永遠に無い」のを悟り、
(武人としての責……)
 不可避となった死を受け入れた。

(お慕いするプエラリア様の手で逝けるのなら……)

 邪な想いも交えつつ。
 ところが達観した筈の彼は、

『なぁっ!?』

 グラン・ディフィロイスの手の上で驚愕の声を上げた。
 その理由とは、死刑執行人として立ち上がったのがプエラリアではなく、

「何故にオマエがぁ立ち上がぅうぅ!」

 隣に坐していた、正体不明の全身鎧であったから。
 性別すら判別できない程に体躯を鎧で覆い隠し、一歩ごとに鎧を「ガシャンガシャン」と軋(きし)ませ近付く、死神の如き恐怖を振り撒く姿に、

『ちょ、ちょぉ! おぉ、お待ち下さぁいぃ魔王様ぁあ!』

 フリンジは堪らず声を上げたが、そこに感じたのは「死を目前にした恐怖」と言うより、全身鎧に対する「激しい怒り」と「激しい嫌悪」。
 中の人物が何者であるのか分かっている様子で全身鎧を睨み付け、スグさまプエラリアに、

『せぇ、せめてぇ貴方様の御手で当方に最期ぉおぉ!』

 懇願したが、嘲笑いで以て、
「…………」
 玉座から動く素振りも見せない魔王。
 戦友の死を前にしてもなお閉ざされたままの眼差しは、まるで「目にする価値も無い」と言っているようであり、
「そんな……」
 判定は「覆らない」と改めて悟った彼は、近付きつつあった全身鎧に呪いをかけるが如くに、

『キサマなぞに当方がぁ! キサマなぞにぃ当方がぁああぁぁあっ!』

 シャアァァァン!

 稚拙な連呼は全身鎧の真横一閃により、
「…………」
 黙らされ、

「おのぉれぇ……ら……」

 短い恨み節が、彼の最期の言葉となった。
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