620 / 895
第九章
9-26
しおりを挟む
跪いたまま、チョウカイの苦言に、
「なるほど……」
静かに頷く、二代目コマクサ。
元より彼女の言う事に「異を唱える」など皆無であったが、得心が行った様子で、
「確かに相手は「単なる天世人」などではなく、百人の天世人。まかり共倒れになった所を、地世が見逃さすとも思えませんしね……なれば」
チョウカイを真っ直ぐ見据え、
「私の子飼(こが)いも、不穏分子の警戒に当たらせましょう」
「子飼い……貴方が育てた八部衆ですか?」
「御意に」
頷きに、彼女は二言返事で、
「良いでしょう」
「では」
立ち上がって退出しようとするコマクサであったが、立ち上がるなり動きを止め、
「…………」
部屋の外に感じた、立ち去る気配に、
「チョウカイ様、放って置いて良いので?」
すると彼女は動じた様子も、危惧する素振りも見せず、
「構いません」
短く答えると、消えた気配を見つめ、
「あの者の望みは、不変の天世。天世が揺れるを嫌い、元老院(私達)に逆らう事はないでしょう」
「…………」
「アレは、目に見えぬ「亡き者との誓い」と言う名の鎖で、自らを縛って居るのですから」
「疾(とう)に死んだ女を相手に……まったく不器用な男ですね」
「私とて同じ女子(オナゴ)として、あのような気質の男に出逢いたかったと思った時期もありました」
「…………」
二人が見つめる先、無骨な無表情で去って行くのは、
「…………」
両手持ちの大剣を背に負う、天世の七草サジタリアであった。
やがて遠ざかる気配が完全に消えるなり、
「時に、チョウカイ様」
コマクサは振り返り、
「反乱分子の鎮圧にあたり、私に策が一つあるのですが」
「策、とな?」
「はい。反乱分子とは、所詮は烏合(うごう)の衆。頭を潰してしまえば容易く散らせる物でしょう」
「頭……」
言葉を反芻するとスグさま、
(リンドウ!)
彼女を筆頭に、複数の顔が浮かぶチョウカイ。
彼女たちは天世における異物、厄介者として、天世から体よく放逐する為、中世に向かうのを知りながらあえて阻止しなかった者達であり、
「あの者らは、ラミウムの後継(ラディッシュ)どもに守られ、」
「丁度良い人柱が、すぐ近くに居るではありませんか」
懸念に対する不敵な笑みに、
「!」
「そうです。この様な時の為の「放し飼い」なのですから」
「…………」
無言は承認を表し、闇を窺わせる「密かな企て」が動き出して後、
『ワァハッハッ♪ 頭(リンドウ)を潰す位の話で、随分と回りくどい手を使いますねぇ大将♪』
とある一室にてコマクサに、豪快に笑い掛けるのは大男。
サジタリアを彷彿とさせる筋骨隆々の大男は「寡黙なサジタリア」とは真逆な陽気で以て、
「オレ等ぁ八部衆に任せれば容易いものを♪」
室内を見回せば、他にも一癖二癖ありそうな男女が七人。
彼と同類であるのか、無頼(ぶらい)な笑みを浮かべる一団に、
「困った人達ですねぇ」
一人毛色の違うコマクサは平然と呆れ笑い、
「政(まつりごと)とは、そう単純で済む物ではないのですよ」
幼子に対する「叱り付け」のような物言いであったが、大男は気にする素振りも見せず再び豪快に「ワァハハ」と笑い、
「チマチマ面倒臭ぇんならぁ、大将があのオバハン(チョウカイ)の地位を奪っちまえばイイさ♪」
愉快げに自身の膝をバシバシ。
大音を立て叩いて見せたが、コマクサはいたって平静に、
「やれやれ。人を見た目で判断して侮るのは御止めなさいと、何度も教えた筈ですよ」
言われた事に、大男プラス七人は「覚え」はあった。
実例が、目の前に。
しかし、その「当人からの苦言」を差し引いたとしても、
「おん?」
「「「「「「「?」」」」」」」
自分たちの頭目(コマクサ)の敗北が想像できずに居ると、うつむき加減の彼は、
《あの御方は「悠久の化け物」ですよ》
畏怖を以て、片手で静かに眼鏡を「クイッ」と上げ、
「私が加わった九人が束になっても……まぁ瞬殺でしょう」
薄ら笑いを浮かべる姿に、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
強者(つわもの)揃いで、強面(こわもて)揃いの八人は思わず息を呑んだ。
自分たちを戦士として育て上げたほどの人間に「そこまで言わせるのか」と。
底が知れない、得体の知れない、悠久を生きる彼女(チョウカイ)の存在に。
認識を改め「緊張を纏う配下」に、二代目コマクサは「フッ」と小さく笑い、
「ですが私は「勝てる勝てない」以前の話で、あの御方に反旗を翻す気など毛頭ありませんよ」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
話の流れの変化に、何故か困惑の色を滲ませる八部衆。
話の「行き着く先」が分かっている様子の八人を前に、彼は紳士的な物言いで淡々と、
「私はこれからも変わらず、あの御方を御側で支え」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
そしてついに、
《時おり御見せになる、穏和から一転したゴミ虫を見るような、あの冷たい、殺意の眼差しに見つめられていたいのです》
内なる性癖の披露。
彼女が懸念していた、彼女も知らない、彼から感じていた「闇の正体」。
悦に入った、恍惚とした表情で夢想する自分たちの頭目に、
((((((((これさえ無ければ……))))))))
内心で嘆く八部衆であった。
「なるほど……」
静かに頷く、二代目コマクサ。
元より彼女の言う事に「異を唱える」など皆無であったが、得心が行った様子で、
「確かに相手は「単なる天世人」などではなく、百人の天世人。まかり共倒れになった所を、地世が見逃さすとも思えませんしね……なれば」
チョウカイを真っ直ぐ見据え、
「私の子飼(こが)いも、不穏分子の警戒に当たらせましょう」
「子飼い……貴方が育てた八部衆ですか?」
「御意に」
頷きに、彼女は二言返事で、
「良いでしょう」
「では」
立ち上がって退出しようとするコマクサであったが、立ち上がるなり動きを止め、
「…………」
部屋の外に感じた、立ち去る気配に、
「チョウカイ様、放って置いて良いので?」
すると彼女は動じた様子も、危惧する素振りも見せず、
「構いません」
短く答えると、消えた気配を見つめ、
「あの者の望みは、不変の天世。天世が揺れるを嫌い、元老院(私達)に逆らう事はないでしょう」
「…………」
「アレは、目に見えぬ「亡き者との誓い」と言う名の鎖で、自らを縛って居るのですから」
「疾(とう)に死んだ女を相手に……まったく不器用な男ですね」
「私とて同じ女子(オナゴ)として、あのような気質の男に出逢いたかったと思った時期もありました」
「…………」
二人が見つめる先、無骨な無表情で去って行くのは、
「…………」
両手持ちの大剣を背に負う、天世の七草サジタリアであった。
やがて遠ざかる気配が完全に消えるなり、
「時に、チョウカイ様」
コマクサは振り返り、
「反乱分子の鎮圧にあたり、私に策が一つあるのですが」
「策、とな?」
「はい。反乱分子とは、所詮は烏合(うごう)の衆。頭を潰してしまえば容易く散らせる物でしょう」
「頭……」
言葉を反芻するとスグさま、
(リンドウ!)
彼女を筆頭に、複数の顔が浮かぶチョウカイ。
彼女たちは天世における異物、厄介者として、天世から体よく放逐する為、中世に向かうのを知りながらあえて阻止しなかった者達であり、
「あの者らは、ラミウムの後継(ラディッシュ)どもに守られ、」
「丁度良い人柱が、すぐ近くに居るではありませんか」
懸念に対する不敵な笑みに、
「!」
「そうです。この様な時の為の「放し飼い」なのですから」
「…………」
無言は承認を表し、闇を窺わせる「密かな企て」が動き出して後、
『ワァハッハッ♪ 頭(リンドウ)を潰す位の話で、随分と回りくどい手を使いますねぇ大将♪』
とある一室にてコマクサに、豪快に笑い掛けるのは大男。
サジタリアを彷彿とさせる筋骨隆々の大男は「寡黙なサジタリア」とは真逆な陽気で以て、
「オレ等ぁ八部衆に任せれば容易いものを♪」
室内を見回せば、他にも一癖二癖ありそうな男女が七人。
彼と同類であるのか、無頼(ぶらい)な笑みを浮かべる一団に、
「困った人達ですねぇ」
一人毛色の違うコマクサは平然と呆れ笑い、
「政(まつりごと)とは、そう単純で済む物ではないのですよ」
幼子に対する「叱り付け」のような物言いであったが、大男は気にする素振りも見せず再び豪快に「ワァハハ」と笑い、
「チマチマ面倒臭ぇんならぁ、大将があのオバハン(チョウカイ)の地位を奪っちまえばイイさ♪」
愉快げに自身の膝をバシバシ。
大音を立て叩いて見せたが、コマクサはいたって平静に、
「やれやれ。人を見た目で判断して侮るのは御止めなさいと、何度も教えた筈ですよ」
言われた事に、大男プラス七人は「覚え」はあった。
実例が、目の前に。
しかし、その「当人からの苦言」を差し引いたとしても、
「おん?」
「「「「「「「?」」」」」」」
自分たちの頭目(コマクサ)の敗北が想像できずに居ると、うつむき加減の彼は、
《あの御方は「悠久の化け物」ですよ》
畏怖を以て、片手で静かに眼鏡を「クイッ」と上げ、
「私が加わった九人が束になっても……まぁ瞬殺でしょう」
薄ら笑いを浮かべる姿に、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
強者(つわもの)揃いで、強面(こわもて)揃いの八人は思わず息を呑んだ。
自分たちを戦士として育て上げたほどの人間に「そこまで言わせるのか」と。
底が知れない、得体の知れない、悠久を生きる彼女(チョウカイ)の存在に。
認識を改め「緊張を纏う配下」に、二代目コマクサは「フッ」と小さく笑い、
「ですが私は「勝てる勝てない」以前の話で、あの御方に反旗を翻す気など毛頭ありませんよ」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
話の流れの変化に、何故か困惑の色を滲ませる八部衆。
話の「行き着く先」が分かっている様子の八人を前に、彼は紳士的な物言いで淡々と、
「私はこれからも変わらず、あの御方を御側で支え」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
そしてついに、
《時おり御見せになる、穏和から一転したゴミ虫を見るような、あの冷たい、殺意の眼差しに見つめられていたいのです》
内なる性癖の披露。
彼女が懸念していた、彼女も知らない、彼から感じていた「闇の正体」。
悦に入った、恍惚とした表情で夢想する自分たちの頭目に、
((((((((これさえ無ければ……))))))))
内心で嘆く八部衆であった。
0
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。
藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。
気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。
訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。
そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。
魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。
連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。
それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。
一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。
本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる