643 / 895
第九章
9-49
しおりを挟む
とある晴れた日の早朝――
窓から穏やかな朝陽が差し込む、私室として用意された部屋のベッドの上で、
「…………」
すやすやとした寝息を立てるのは、勇者ラディッシュ。
仲間たちが抱える不安をどの程度まで理解していのるか、いないのか。
呑気な寝顔で寝ていると、
ダァンダァンダァン!
部屋の扉を激しく連打する音が。
しかし「健やかな眠り」から叩き起こされたにも拘らず、当人はマッタリ大あくび。
「ふぅっあぁ~~~なぁんだぁ~~~」
未だ夢現(ゆめうつつ)。
それほどに平穏な日々が続いていた表れでもあり、起き上がりはしたもののベッドの上で、
「ふぃいぃ~~~」
寝ぼけ眼(まなこ)でユラユラ揺れていると、
『ラディーーーッ!』
叩いていたと思われるニプルウォートが彼の返事も待たずに扉を跳ね開け、血相変えて駆け寄り、
『惚けてる場合じゃないさァラディイ!』
「ふぃ~いぃ~~~」
未だ眠りの世界に片足を突っ込んでいる彼の両肩を、ガシリと掴んで激しく揺さぶりながら、
『ドロプがぁ! ドロプウォートが出奔(しゅっぽん)したさぁあ!!!』
青ざめた表情で懸命に訴えた。
出奔、それは大戦を前に逃亡したのを意味したが、ラディッシュは現実味の無い話と、目覚めていない頭とが相まって、
「あははははニプルぅ、エイプリルフールにはまだ早いよぉ~って「えいぷりるふーる」って何だっけぇ~~~」
「何を言ってるか知らんけど早く目を覚ますさァラディ!」
責める彼女はまくし立て、
『アイツがラミィを拉致して逃げたのさァア!』
「へぇ?」
「しかも一緒に居たパストリスとチィックウィードを傷付けてぇ! 止めに入った親衛隊まで蹴散らしてぇえ!」
『なっ?!』
寝起きの彼にとって、真偽は不透明。
しかし「二人が傷付けられた」と聴かされては、悪い冗談の可能性があっても眠気は一瞬に吹き飛び、
『怪我の程度は!』
「重症だけど命に別条は無いさァ! ターナップ主導で治療にあたってる!」
命に別状(べつじょう)はないと知らされ、ほんの少し胸を撫で下ろしたが、話は真実味を帯び、
「ど、どうしてドロプが……」
疑問が首をもたげる。
傷付けられた二人の姿が胸をよぎり、取り留めのない自問自答が頭の中をグルグルと駆け回ると同時、泣いたり、笑ったり、怒ったり、仲間たちの中で最も長く共に過ごした彼女との日々が走馬灯のように甦る。
(ドロプ……)
打ち拉がれる心へ、更に追い打ちを掛けるが如く、
「ラミィを「チカラごと取り込む」って言ったそうさァ!」
『ラミィっお!?』
ギョッとした。
信じられなかった。
それ以上に、妖精ラミウムは地世の七草パトリニアと死闘を演じたラミウムが、ラディッシュに最期に託したチカラから生まれた存在であるが故に、
『ドロプは何処へ向かったァア!』
ベッドから飛び降りた顔には、堪え切れぬ怒りがありありと。
着の身着のまま壁に掛けてあった上着だけ羽織る彼に、
『行き先までは分からないさ! でも南に向かったと!』
『それだけ分かれば十分だよォ!』
焦りを多分に含んだ彼女の声を背に、ラディッシュは部屋から飛び出した。
仲間のあとを追う者とは思えぬ、処刑人のような眼をして。
そんな彼の背を、
「…………」
悲し気な眼差しで見送るニプルウォート。
足早な靴音が遠ざかり、静かになった開けっ放しの部屋で視線を落とすと、廊下から彼女の下に近づく幾つかの気配が。
窓から穏やかな朝陽が差し込む、私室として用意された部屋のベッドの上で、
「…………」
すやすやとした寝息を立てるのは、勇者ラディッシュ。
仲間たちが抱える不安をどの程度まで理解していのるか、いないのか。
呑気な寝顔で寝ていると、
ダァンダァンダァン!
部屋の扉を激しく連打する音が。
しかし「健やかな眠り」から叩き起こされたにも拘らず、当人はマッタリ大あくび。
「ふぅっあぁ~~~なぁんだぁ~~~」
未だ夢現(ゆめうつつ)。
それほどに平穏な日々が続いていた表れでもあり、起き上がりはしたもののベッドの上で、
「ふぃいぃ~~~」
寝ぼけ眼(まなこ)でユラユラ揺れていると、
『ラディーーーッ!』
叩いていたと思われるニプルウォートが彼の返事も待たずに扉を跳ね開け、血相変えて駆け寄り、
『惚けてる場合じゃないさァラディイ!』
「ふぃ~いぃ~~~」
未だ眠りの世界に片足を突っ込んでいる彼の両肩を、ガシリと掴んで激しく揺さぶりながら、
『ドロプがぁ! ドロプウォートが出奔(しゅっぽん)したさぁあ!!!』
青ざめた表情で懸命に訴えた。
出奔、それは大戦を前に逃亡したのを意味したが、ラディッシュは現実味の無い話と、目覚めていない頭とが相まって、
「あははははニプルぅ、エイプリルフールにはまだ早いよぉ~って「えいぷりるふーる」って何だっけぇ~~~」
「何を言ってるか知らんけど早く目を覚ますさァラディ!」
責める彼女はまくし立て、
『アイツがラミィを拉致して逃げたのさァア!』
「へぇ?」
「しかも一緒に居たパストリスとチィックウィードを傷付けてぇ! 止めに入った親衛隊まで蹴散らしてぇえ!」
『なっ?!』
寝起きの彼にとって、真偽は不透明。
しかし「二人が傷付けられた」と聴かされては、悪い冗談の可能性があっても眠気は一瞬に吹き飛び、
『怪我の程度は!』
「重症だけど命に別条は無いさァ! ターナップ主導で治療にあたってる!」
命に別状(べつじょう)はないと知らされ、ほんの少し胸を撫で下ろしたが、話は真実味を帯び、
「ど、どうしてドロプが……」
疑問が首をもたげる。
傷付けられた二人の姿が胸をよぎり、取り留めのない自問自答が頭の中をグルグルと駆け回ると同時、泣いたり、笑ったり、怒ったり、仲間たちの中で最も長く共に過ごした彼女との日々が走馬灯のように甦る。
(ドロプ……)
打ち拉がれる心へ、更に追い打ちを掛けるが如く、
「ラミィを「チカラごと取り込む」って言ったそうさァ!」
『ラミィっお!?』
ギョッとした。
信じられなかった。
それ以上に、妖精ラミウムは地世の七草パトリニアと死闘を演じたラミウムが、ラディッシュに最期に託したチカラから生まれた存在であるが故に、
『ドロプは何処へ向かったァア!』
ベッドから飛び降りた顔には、堪え切れぬ怒りがありありと。
着の身着のまま壁に掛けてあった上着だけ羽織る彼に、
『行き先までは分からないさ! でも南に向かったと!』
『それだけ分かれば十分だよォ!』
焦りを多分に含んだ彼女の声を背に、ラディッシュは部屋から飛び出した。
仲間のあとを追う者とは思えぬ、処刑人のような眼をして。
そんな彼の背を、
「…………」
悲し気な眼差しで見送るニプルウォート。
足早な靴音が遠ざかり、静かになった開けっ放しの部屋で視線を落とすと、廊下から彼女の下に近づく幾つかの気配が。
0
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる