ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-2

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 家族を家に残して扉を閉めたラディッシュ――

 閉じた扉を背に、晴天とは真逆な曇天の表情でうつむき、
(ごめんねチィちゃん、僕のせいで……遊びたい盛りの筈なのに……戦場に立たないからと言って、何を、どう取り繕っても、負担を掛けてるのには変わらないよね……)
 歳相応に、同年代の子供たちと遊ばせてあげられない事に後ろめたさを感じていた。
 すると、

『辛気臭いしぃ~雨乞いでもしてるのしぃ~♪』

 呆れ笑いの声が。
 ハッとして顔を上げるとそこにはリンドウと、

『カビが生えそうだから、そう言うの止めてくれる?』

 気遣いの裏返しである皮肉を口にするヒレンに加え、
『シッシッシッ♪ 二人して素直に「元気出せ」って言えば良いのにさぁ~♪』
「「…………」」
 見透かされて照れ臭い様子を見せる二人を尻目に、からかいのニプルウォートをはじめ、

「お早うっス、ラディの兄貴ぃ♪」
「お早うなのでぇす、ラディ♪」
「良き陽にぃありんすなぁ♪」

 ターナップ、パストリス、カドウィード、気の置けない仲間たちの笑顔が。
 新しき仲間とは今更のような感はあるが、リンドウとヒレンであった。
 仲間たちからのいつもと変わらぬ笑顔に、ラディッシュも気持ちが少し軽くなり、

「お早う、みんな♪」

 笑顔を返したが、
「それにしてもしぃ……」
 リンドウが怪訝な顔してラディッシュが住まう家をまじまじと見上げ、

『これが、村を、国を、世界を守った勇者が住む家とはマジぃ思えないのしぃ~』

 眉間にシワを、渋い顔して嘆いた。
 見つめる先に建っているのは、木造平屋建ての一軒家。
 しかも外装は中古であるのが一目で分かるほどの経年劣化による傷みが目立ち、子連れ世帯が住むにも若干の手狭を感じる大きさでもあった。

 加えて、成長著しい村の中心から大きく外れた、未だ閑散を残す端の場所で、彼が積み重ねて来た実績から考えればあまりに粗末、あまりに貧相。
 他の仲間たちも抱いていた不服であったのか、親子(仮)が慎ましく住まう「愛すべき棲み処」を、

「「「「「…………」」」」」

 複雑な表情で見上げた。
 しかし家主ラディッシュは「そんなに悪くないよ」とでも言いたげに「ははは」と笑い、

「必要な物は揃ってるし、そもそも村長や村のみんなが「もっと条件の良い物件」を紹介してくれたのに、僕がこの家を選んだんだし♪」
「「「「「「…………」」」」」」

 彼が語った事は真実であったが、そこには仲間たちさえ知らぬ、語られなかった最大の理由も。
 それは、

《勇者は標的にされ易い》

 望まぬ有事が起きてしまった時、コミュニティーの中心地に居る事で周辺に及ぼす被害を憂慮した結果でもあった。
 仲間たちに要らぬ気遣いを招きそうな理由はあえて語らず内に秘め、

『それにね♪』

 笑顔で周囲の木々を見回し、
「喧騒から離れて自然に近い場所で暮らす事で、ドロプが静かに、ゆっくり療養できると思ったんだ♪」
((((((…………))))))
 深手を負ったドロプウォートと、負わせてしまったラディッシュ。
 その様な理由を引き合いに出されては、それ以上の立ち入りは「余計なお世話」にしかならず、黙する仲間たちの姿に、

(ちょっとズルイ言い方だったかな……)

 彼は内心で自省しながらも、

『そうだ、話し込んでる場合じゃないよね♪ 早く討伐に行かなきゃね♪』

 先陣切って駆け出すと、
「「「「「「…………」」」」」」
 物言いたげな様子を残し後に続く仲間たちに、あえての明るい口調で、

「それにしても、リンドウ、ヒレン、本当に良いの?」
「「?!」」

 振り返った笑顔から意味を察した二人は「またその話か」とでも言いたげに、

「何がしぃ~」
「またその話を蒸し返すの」

 辟易した顔を見せた。
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