ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
766 / 896
第十一章

11-60

しおりを挟む
 苦し紛れに放った一言でさえ老獪アブダには届かず、完敗のリンドウ。
 悔しさを隠しきれない彼女へのフォローの意味合いも含め、訊きたいことがあったラディッシュは好機とばかり、

「ねぇアブダ」
「なんじゃ?」
「アブダは知らない?」
「何をじゃ?」
「人造英雄の治療ができる施設が、天世の何処かにないか」
「「「「!」」」」

 彼が何を言わんとしているか、ハッと気付く仲間たち。
 訊ねられたアブダも即座に理解し、

「当代英雄のことじゃなぁ」

 真意の確認に、

「…………」

 彼は静かに頷き、一行の視線はある一点に、
「「「「「「…………」」」」」」
 自然と集まった。

 その先に居たのは言わずもがな、椅子車に座ったドロプウォート。
 呼気浅く、瞬きもせず、僅かな天法を全身に膜のように纏って身を守り、蝋人形のような佇まいをアブダは見つめたまま、

「チカラになれるか正直に言うて分からぬが、(ドロプウォートに)何が起きたか話してみるのじゃ」

 安易な気休めは口にしなかった。
 その対応はむしろ信頼を呼び、

「「「「「…………」」」」」

 ラディッシュは仲間たちから無言の同意を得ると、彼女の身に起きた悲劇を順に従い話して聴かせた。
 彼自身の不甲斐なさも含めて一語一句、包み隠さず。

 聴かされた一連の流れから、
「なるほどのぉ……」
 得心が行った様子で小さく頷く、年の功アブダ。

 知識量豊富な彼女の次なる言葉を待つラディッシュ達に対し、
「ワシの理解の及ぶ範囲で語るならば……」
 前置きをした上で、

「この者は、こうなるべくして「こうなった」のじゃ」
「「「「「?!」」」」」
「平たく言うならば保護機能が働いたのじゃ」
「「「「「ホゴキノウ?」」」」」
「そうじゃ」

 アブダは小さく頷き、

「限界を超えた負荷が体と精神に掛かり身を守る為に、一部を残し全ての機能を自動停止させたのじゃな」
「「「「「…………」」」」」
「なぁに、悪い事ばかりでは無いのじゃ」
「「「「「?」」」」」
「まかり停止しておらなんだら負荷に耐え切れず精神と肉体が崩壊して、塵と化していたやも知れぬのじゃから」
「「「「「!」」」」」

 ラディッシュ達はゾッとした。
 一歩違えばドロプウォートが消滅していた可能性を指摘され。

 しかし彼女は消えてはいない、ここに居る。
 一先ずの安堵と共にラディッシュは思わず、

「ブレーカーが働いたのか……」

 地球時代の記憶から引用して起きた事象を呟くと、

「ぶ、ぶれか?!」

 アブダは耳慣れぬ言葉に戸惑いを。
 中世人の想像も及ばぬほど長く生きて来た彼女が「生まれて初めて耳にした言葉」であり、意図せず口走ってしまった彼は、

(異世界の話を一から十まで説明してたら時間が幾らあってもぉ)

 数ある選択肢の中から「笑って誤魔化す」を選択。
 笑いでお茶を濁しながらも前のめりに答えを求め、

「き、切れたスイッチを、じゃなかった、意識を戻す方法は知らない?!」

 逸れかけた話を本題へ戻したが、彼女は申し訳なさげに表情を曇らせ、

「すまぬのじゃ……」
(((((!)))))
「そこまでの知識は、ワシも持ってはおらぬのじゃ……」
「「「「「…………」」」」」

 天世にまで来て「求めた答え」はフリダシに。
 堂々巡りで戻ってしまったが、

「じゃが」

 彼女は話の締め括りを前に、

「ワシら(八部衆)は「足を踏み入れる」を許されなんだが、元老院なら治療可能な設備があるやも知れぬのじゃ」
「「「「「!」」」」」

 色めき立つラディッシュ達。
 見えた「希望の光」に。

 とは言え、手放しで喜ぶ事は出来ない。
 何故なら彼女の口振りからして「可能性の一つ」に過ぎないから。

 平静を努め「根拠は何か」と問う勇者組を前に、アブダは「ぬか喜び」にならぬよう落ち着きを促しながら、
「ワシやニラブダが率いておった私兵を覚えておるかの?」
「「「「「…………」」」」」
 兵士と呼ばれておきながら、着ている服に統一が全く無かった無感情の一団を各々思い出す。

 すると彼女は想起の表情を見せる一行に、

「あの者らが何者であるか、ヌシらに分かるかのぉ?」
「「「「「?」」」」」

 時代、国籍、身分、全ての一致を感じさせない姿にラディッシュ達は一つの可能性に至り、

《元勇者!》

 返答にアブダは静かに頷き、
「そうじゃ。歴代勇者たちの中で突出した実力を有していた者達なのじゃ。あの者らは」
 正答を示しつつ、

「成れの果てじゃがのぉ……」

 その表情は憐れみに。
 そして当代勇者の生き残りであるラディッシュも、まるで「部品の一つ」のような人とは思えぬ戦いぶりを思い返し、

「どうしてあんな酷(むご)い事に……」

 表情を曇らせた。
 状況が少しでも違っていたら、出逢っていたのがラミウムでなければ、あの輪の中に自身も加わって可能性に恐怖し。

 すると彼女は朴訥と、感情を込めず
「元老院を守る為だけに存在する駒に、感情や個人の思考など不要じゃからのぉ……言うなれば、あの者らは人造英雄(ドロプウォート)の廉価版なのじゃ……」
 ありのままを語ったその心の内で、

(ワシとて、似たような者じゃがな……)

 先人の英知による排除のシステムから、何の気まぐれかコマクサに拾い上げられ、小間使いとして粗末な扱いの下、有無を言わさず馬車馬の如く働かされた自身の身とダブらせた。

 アブダの口振りからは、勇者たちの人格や肉体に対する「非人道的な改造処置」が施されたのが読み取れ、
「「「「「…………」」」」」
 ラディッシュ達が不快から顔を強張らせる中、彼女は話を続け、

「どれ程の元勇者が保管されているかまでは知らぬが、あの者らが深手を負った折などに治療する設備が「元老院内にある」と、以前に御館様から聴かされたことがあるのじゃ。それを使えばあるいは……」
「「「「「!」」」」」

 ラディッシュ達は希望の光を見たが、
(((((…………)))))
 困難な現実も。

 天世の世界と言う敵の只中に在りながら、更に敵陣の奥深く、本丸にまで乗り込まねば試せぬ現実に。

(でも僕は行かないと!)

 決意を新たにドロプウォートを見つめるラディッシュ。
((((…………))))
 その想いは仲間たちとて同じであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...