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続章_37
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しかしヒカリはさも当たり前の様に笑顔のまま、
「驚いちゃったよね?」
「う、うん……少し……」
「これはね、移植手術の痕なんだぁ」
「移植……?」
「うん。心臓移植の」
この瞬間、サクラの中にあったモヤの様な物が一気に全て繋がった。
一見豪華に見える弁当、ハヤテが時折り見せるヒカリへ過剰な気遣い、そしてヒカリがふとした拍子にチラリと見せる複雑な表情。
それら全ては、ヒカリが何不自由なく暮らして来た訳ではない事を物語っていた。
途端にサクラに押し寄せる、ヒカリを嫉んだ事に対する「恥」と「後悔の念」。
(私は最っ低だァ!)
悲痛な表情を浮かべ、胸元で手を握り固める。
しかしヒカリは、サクラの心の内を知ってから知らずか、笑顔を絶やさず、
「この痕はね、整形手術で消せるそうなんだけど、ボクはハーくんが嫌悪しない限り、消すつもりはないんだ。だってこれは、ボクとハーくんの絆の証だから」
(私はなんて浅ましいだろぉ……自分だけが世界で一番不幸なつもりになって、友達になってくれたヒカリちゃんを嫉むなんて……)
自責の念に駆られて大粒の涙を落とし、両手で顔を覆った。
「ご、ゴメンねサクラちゃん! ビックリしたよねぇ!?」
慌てるヒカリの首元に、サクラは泣きながら抱き付き、
「違う、違うのぉ! 私の方こそごめんなさい! ごめんなさいヒカリちゃん!」
一瞬驚いた顔をするヒカリであったが、サクラの心の内に何かしらの葛藤があった事を感じ、あえて何も聞かず、
「人間だもん、色々あるよぉ」
軽やかに笑って見せ、
「だからって、ボクに同情して手を抜いたら承知しないからね」
「え?」
ヒカリから離れ、キョトンとする涙顔のサクラ。
「ハーくんの争奪戦だよ」
「へ?」
「好きなんでしょ? ハーくんのこと」
サクラに自覚は無かった。
今にして思えば、幾つか思い当たる節もあり、心の揺らぎを感じていたのも確かであったが、ヒカリの一言でサクラは気付いてしまった。ハヤテの事が好きになっている自身の事を。
途端にサクラは耳まで真っ赤に、
「な、な、な、な、なななななななな何言っちゅんずやぁぁぁあぁっぁあぁあ!」
「サクラちゃん方言出ちゃってるよ」
「!」
「違うのかい? だってサクラちゃんてば、ハーくんの事をよく目で追ってるよ?」
「そ、そんな事、私ぃ!」
反論しようとしたが、思い当たる節が数々と。
「ちっ! 違ぅ! あれは違うくてぇ! たまたま……そう! えと、たまたまなのぉ!」
「ふぅ~~~ん」
イジワルな笑みを浮かるヒカリは、しばしサクラを見つめ、
「まぁ良っか!」
「!」
(良かったぁ~ここで認めちゃったら、明日からどんな顔してハヤテくんと会えば良いか、分からなくなるところだったぁ~)
一先ずホッと胸を撫で下ろすと、
「サクラちゃん」
「?」
「譲らないからねぇ」
「だから違うってぇーーーーーーーーー!」
虚を突かれ、大慌てのサクラの姿に笑い出すヒカリ。
恥ずかしさから顔を真っ赤に、念を押す様に何度も何度も否定するサクラであったが、そんな懸命に全力否定する自身が、むしろ次第に可笑しくなり、ヒカリと共に笑い出した。
夜は、絆を深めた二人の少女の笑い声と共に更けて行く。
この日から数日後、サクラの住んでいたアパートを放火したとして、三十代の会社員の男が逮捕された。一階に住む二十代の女性にストーカー行為を行い警察から警告を受けていた人物であるが、アパート周辺をウロついている所を数度目撃され、放火のあった当日も近くのコンビニの防犯カメラの映像に姿が録画されていたからである。
「驚いちゃったよね?」
「う、うん……少し……」
「これはね、移植手術の痕なんだぁ」
「移植……?」
「うん。心臓移植の」
この瞬間、サクラの中にあったモヤの様な物が一気に全て繋がった。
一見豪華に見える弁当、ハヤテが時折り見せるヒカリへ過剰な気遣い、そしてヒカリがふとした拍子にチラリと見せる複雑な表情。
それら全ては、ヒカリが何不自由なく暮らして来た訳ではない事を物語っていた。
途端にサクラに押し寄せる、ヒカリを嫉んだ事に対する「恥」と「後悔の念」。
(私は最っ低だァ!)
悲痛な表情を浮かべ、胸元で手を握り固める。
しかしヒカリは、サクラの心の内を知ってから知らずか、笑顔を絶やさず、
「この痕はね、整形手術で消せるそうなんだけど、ボクはハーくんが嫌悪しない限り、消すつもりはないんだ。だってこれは、ボクとハーくんの絆の証だから」
(私はなんて浅ましいだろぉ……自分だけが世界で一番不幸なつもりになって、友達になってくれたヒカリちゃんを嫉むなんて……)
自責の念に駆られて大粒の涙を落とし、両手で顔を覆った。
「ご、ゴメンねサクラちゃん! ビックリしたよねぇ!?」
慌てるヒカリの首元に、サクラは泣きながら抱き付き、
「違う、違うのぉ! 私の方こそごめんなさい! ごめんなさいヒカリちゃん!」
一瞬驚いた顔をするヒカリであったが、サクラの心の内に何かしらの葛藤があった事を感じ、あえて何も聞かず、
「人間だもん、色々あるよぉ」
軽やかに笑って見せ、
「だからって、ボクに同情して手を抜いたら承知しないからね」
「え?」
ヒカリから離れ、キョトンとする涙顔のサクラ。
「ハーくんの争奪戦だよ」
「へ?」
「好きなんでしょ? ハーくんのこと」
サクラに自覚は無かった。
今にして思えば、幾つか思い当たる節もあり、心の揺らぎを感じていたのも確かであったが、ヒカリの一言でサクラは気付いてしまった。ハヤテの事が好きになっている自身の事を。
途端にサクラは耳まで真っ赤に、
「な、な、な、な、なななななななな何言っちゅんずやぁぁぁあぁっぁあぁあ!」
「サクラちゃん方言出ちゃってるよ」
「!」
「違うのかい? だってサクラちゃんてば、ハーくんの事をよく目で追ってるよ?」
「そ、そんな事、私ぃ!」
反論しようとしたが、思い当たる節が数々と。
「ちっ! 違ぅ! あれは違うくてぇ! たまたま……そう! えと、たまたまなのぉ!」
「ふぅ~~~ん」
イジワルな笑みを浮かるヒカリは、しばしサクラを見つめ、
「まぁ良っか!」
「!」
(良かったぁ~ここで認めちゃったら、明日からどんな顔してハヤテくんと会えば良いか、分からなくなるところだったぁ~)
一先ずホッと胸を撫で下ろすと、
「サクラちゃん」
「?」
「譲らないからねぇ」
「だから違うってぇーーーーーーーーー!」
虚を突かれ、大慌てのサクラの姿に笑い出すヒカリ。
恥ずかしさから顔を真っ赤に、念を押す様に何度も何度も否定するサクラであったが、そんな懸命に全力否定する自身が、むしろ次第に可笑しくなり、ヒカリと共に笑い出した。
夜は、絆を深めた二人の少女の笑い声と共に更けて行く。
この日から数日後、サクラの住んでいたアパートを放火したとして、三十代の会社員の男が逮捕された。一階に住む二十代の女性にストーカー行為を行い警察から警告を受けていた人物であるが、アパート周辺をウロついている所を数度目撃され、放火のあった当日も近くのコンビニの防犯カメラの映像に姿が録画されていたからである。
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