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青木 森

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3.旅立ちの章-10

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 頭を下げたまま小声で言い争う二人であったが、何もツッコまれない事に違和感を感じ、そ~っと顔を上げて周囲を見た。
「「「「「「「「「「なるほどなぁ~~~」」」」」」」」」」
 疑うどころか、むしろ得心がいった様に深くうなずくガルシアクルー達。
(もしかしてこの人達って、バカ?)
(しぃ~~~っ!)
 呆れるジゼに、ヤマトは慌てて静かにするようジェスチャーしつつ、
「こ、こんな突飛な話を……信じてもらえるんですか?」
 窺う様に尋ねると、ソフィアが凛とした表情まま、
「普通だったら信じないわね……でも、オーストラリアの新女王の事を知っていれば、疑う人は誰もいないわ」
「「オーストラリアの新女王?」」
 首を傾げる二人に、マシューは自慢気に、
「なんだ、そんな事も知らないのかよぉ。いいか、オーストラリアの新女王ってのは、」
 語り始めるも、ダニエルがしたり顔でマシューを押し退けジゼに歩み寄り、
「君と同じなんだよ、ジゼ。あの女王も遺伝子異常か何かで、歳を取らないそうなんだぁ」
「あ、てめぇ、ダニエル!」
 美味しい所を持っていかれ憤慨するマシューであったが、ダニエルは気にする素振りも見せず、
「ところでぇ……君達は兄妹? それとも恋人同士?」
「こっ、恋人ぉ!?」
 ジゼは湯気が出そうな程の真っ赤な照れ顔で、
「なっ、ななな何言ってるのォ! や、ヤマトは執事、小間使い、従者、そう私の下僕で!」
「なに言ってるんだジゼ……ツンデレが再発してるぞぉ」
「う、うるさいバカヤマトォ! ツンデレって言うなぁ!」
 するとダニエルはニコリと笑い、
「それなら僕が、名乗りを上げても良いんだねぇ?」
 手馴れた感じでジゼの手を握った。
 途端にダニエルファンと思しき女性陣から嫉妬の大ブーイングと、男性陣からは批判の大ブーイング。
 大騒ぎの中心地で、ジゼは喜怒哀楽の無い冷めきった表情をダニエルに向け、
「生理的に無理」
 握られた手を強引に引っこ抜いた。
 男性陣から上がる歓呼の声と、女性陣から上がる、先ほどと違う意味のブーイング。
 内心ホッとするヤマト。その理由を本人自身、未だ理解は出来ていない。
 しかしダニエルも然る者、めげた様子も見せず微笑みを浮かべ、歓声、罵声、ブーイングが飛び交う中、
「あきらめませんよ」
 止まぬ騒ぎの中、ソフィアは大きなため息を一つ、
「ブレイク隊長……もう良いですわねぇ……」
「おう! 中々面白かったぜぇ! ヤマト、ジゼ、またなぁ!」
 満足そうな笑顔と、収まる気配のない上甲板の大騒ぎを背に、ソフィアはヤマトとジゼを連れ、艦橋へ戻るハッチをくぐった。
 ソフィアの後に続きヤマトがハッチをくぐると、ジゼが指先で背をツンツン突き小声で、
(ねぇねぇ、ヤマト)
(?)
(ヤマトは私が誰かと付き合うの、どう思う?)
(どうって?)
(何も感じない?)
(分かんねぇ~よ、そんな事を言われてもぉ……)
 ヤマトが顔をしかめると、
(詰まらない反応)
 ジゼは少々ご機嫌斜めの御様子。
 そんな乙女の機微を知ってか知らずか、
(ただ……)
(ただ?)
(…………なんか面白くない)
 ヤマト自身、何故そう感じたのかは分からなかったが、不機嫌ジゼは急に表情を緩め、
(へぇ~~~そうなんだぁ。面白くないんだぁ)
(な、なんだよ……)
(別にぃ~~~)
 機嫌が上向いた。
 小声で言い合う二人であったが、実はこの会話、前を行くソフィアに丸聞こえ。
 聞いている方が恥ずかしい状況にソフィアは赤面、努めて聞こえないフリして前だけ向いて歩き続けた。

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