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青木 森

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4.偽りの新天地の章-28

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 遠距離、近距離からの波状攻撃に、うろたえるばかりの虎の子パワードスーツ部隊。
 モニタに映る部下達の体たらくに、苛立つウィリアムは苦々し気に奥歯をギリギリ鳴らし、
「臨機応変に動けもしねぇのか! 平和ボケしやがって……こぉんの役立たず共がァ!」
 混乱が混乱を呼ぶ混沌とした戦場で、一台のワゴン車がヤマト達の下へ突っ込んで来て急停車。スライドドアが開け放たれ、
「早く乗ってぇ!」
 姿を現したのは戦艦ガルシアの副長、ソフィアであった。
 別れた時の感傷に浸る間もなく、全員車に飛び乗り急発進。
「久しぶりだな!」
 満面の笑顔でハンドルを素早く切るのは、操舵長のジョシュア。
「操舵長ォ! 良いから前見て、前ぇ!」
 助手席からせかすのは、監視長のアイザック。
 懐かしい顔触れである。
「みんな……じゃあ、あのバカ騒ぎしてる車は……」
 後方で銃をやたらと乱射し、簡易型バズーカーをぶっ放すワゴン車を見つめると、ソフィアが困惑顔で頭を抱え、
「マシューとルークよ……」
「「やっぱり!」」
 呆れ笑いのヤマトとジゼ。
 別車両で自動小銃を乱射するブレイクは、無線機を片手に、
「ガキ共ォ! 引き上げだよォ!」
「「ウィッス! 姐さぁん!」」
 ダニエルが運転する車に乗るマシューとルークは最後の景気づけにと言わんばかり、白煙を噴出させた缶を手当たり次第に放り投げ、
「「あばよぉおぉぉぉ!」」
 ヤマト達を乗せたワゴン車を先頭に、車列はスリ鉢の割れ目から外へと飛び出した。
 もうもうと白煙が立ち込める中、
「逃がすなッ! 追えぇーーーッ!」
 ダメージの影響で、油の切れたオモチャの様に動くパワードスーツで激高するウィリアムであったが、上空をリアルタイムで移すモニタの端に近づく何かを見つけ、
「!?」
 警戒警報は出ていない。
 慌ててモニタを手動で拡大表示。
「じゅ、巡航ミサイルぅ!?」
 血相を変え、残された左腕でライフルを構えてロックオン。
「させるかァ、クソがぁ!」
 引き金を引こうとした次の瞬間、ミサイルが空中分解。
「のぉうぅ!? く、クラスタァーだとぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 無数の子爆弾が雨霰の様にバラバラと降り注ぎ、
「く、くぅ、クソッタレがぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ウィリアムの恨み節の絶叫ごと掻き消す様に次々着弾、連続爆発炎上、採掘場は火炎地獄と化した。
 炎の海の中、爆炎を物ともせず、赤いフィールドに包まれ様子を窺う一つの人影が。
 小児の様な体格をした何者かは口元だけ小さく笑い、
「へぇ~あの兄さんが他人と共闘するなんて、意外ですねぇ。面白いモノが見れましたよ」
 愉快そうな声も中性的で、男児か女児かすら分からない。

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