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青木 森

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4.偽りの新天地の章-32

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 見た事の無い少女に驚きの視線が集まる中、
「「オマエ無事だったのかァ!?」」
 両目が飛び出るほどの驚きの声を上げる、マシューとルーク。
 ベールを上げ、色白の無表情の顔を、ほんのりピンク色に染め、嬉しさを滲ませる少女はナクアであった。
 思い出したソフィアも、
「あっ、アナタ浮島の!? いつ、どうやって乗艦したんですぅ!?」
 ガルシアクルーが驚くのも無理からぬ話ではあるが、最も驚いたのはマリアとジャック。
「「ナクスカムア!?」」
「「「「「「「「「「えぇーーーーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」
「オマエ、アドミスターなのか!?」
 驚愕するマシューに、無表情で頷くナクア。
「オマエ、南極の女王なのか!?」
 驚愕するルークに、ほんの少し照れ臭そうに頷くナクア。
「「マジかよぉ!?」」
 二人がユニゾンで驚きの声を上げると、ほんの少し自慢気なドヤ顔で大きく頷いた。
 しかし間髪入れずジャックが駆け寄り、
「テメェ、コラァ感情無しぃ! 弟が生きてるってのは本当なのかァ!」
 答えを聞く間もなく、マリアがジャックを突き飛ばし、
「アナタどうしてもっと早く動いて下さらなかったのォ! アナタがもっと早く動いて、」
 詰め寄るマリアを、今度はジャックが突き飛ばし、
「すっこめ落人(おちゅうど)! 俺のが先だァ!」
「誰が落人ですの、ブラコン! わたくしの方が先ですわ!」
「ブラコン言うんじゃねぇ!」
「何ですの!」
「ヤンのか!」
「やりますのォ!」
「「!!」」
 いがみ合う二人の真ん中で、無表情のナクスカムアはポッと頬を桜色に染め、
「ナクアの為、に争わないでぇ」
 さながら恋愛ドラマのヒロイン。
「「違うッ!!」」
 同時ツッコミにも無表情まま、
「ウフッ」
 小馬鹿にした様な顔に、イラッとする二人。
 猛り狂い、今にも飛び掛かりそうな二人を、ヤマトとジゼが後ろから羽交い絞め。
「まぁまぁジャック、ここは抑えて抑えてぇ」
「マリアも落ち着いてぇ」
「「うがぁーーー!」」
 腹の虫が治まらないのか、ナクアを睨みもがく二人であったが、ナクアは無視。
 マシューとルークの手を握ったまま、
「艦長」
「何でしょう……ミス……ミスアドミスター」
「最優先依頼」
「と、言いますと?」
「ナクア達スティーラーを、南極に連れてって」
「スティーラー?」
 無表情で頷くナクスカムアは、
「ナクア達五人と、プラスいち」
「?」
 ガルシアクルーの視線は自然と、ヤマト、ジゼ、ジャック、マリア、そしてシセに流れ、
「ミスアドミスター、それはいったい……いえ疑問は後ほど伺わせていただくとして、申し訳ありませんが、既に依頼主の方々が待っておりますので、依頼はその後に、」
「ダメ」
「しかし」
 食い下がる艦長に、ナクアがスッとジャックを指差し、
「アレの弟、が殺しに、やって来る」
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