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5.愁嘆の大地の章-12

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 従来のレーダーは電波を飛ばし、返って来た反射波を受信する事により対象の存在の有無、対象までの距離と方位を知る事が出来たが、逆を言えば敵に「索敵しています」と言って歩いていると同意。
 しかも画像として得られる情報は少なく、モニタには「物標(ぶっぴょう)」と呼ばれる点の集まりとして表示され、極端、島や岩礁に偽装して誤認させる事も可能であった。
 核戦争で地形が変わり正確な海図も無く、漂流物の多い戦後のこの時代なら、尚の事である。
 しかしガルシア改になり、新たに搭載された3Dレーザーレーダーは別物。
 現行、敵側に察知する術はなく、しかも細かなレーザー束で立体的に測量される為、従来の偽装行為はほぼ不可能なのである。
 ただしガルシア側にもリスクはある。レーザーを三百六十度全方位に高密度で飛ばす為、エネルギー消費が激しく、現時点でのバッテリー技術レベルでは発電による供給が追い付かず、常時使用する事は実上不可能であった。
 監視レーザー発射後、数秒待たず、けたたましく鳴り響くアラート音と、モニタに映し出される漂流物達の陰に潜む、武装した無数のボート。
 従来のレーダーなら誤魔化せた偽装であるが、ガルシア改の新レーダーは、漂流物を偽装と見抜き即応したのである。
「総員戦闘配置に就けぇ!」
 しかし艦長が発令した途端、ガルシア改のステルス迷彩が突如解除、敵の前に全身をさらけ出してしまった。
「艦長どのぉ! ステルス迷彩モードシステムが、いきなりダウンしましたでぇす!」
 シセの叫びにジゼも即応、
「ウイルスや、人の手による操作は見受けられません!」
「クッ!」
 間の悪い原因不明のシステムトラブルに苛立ちながらも、
「構わん! 今は索敵と迎撃に集中ゥ!」
「「「「「「「「「「アイサァ!」」」」」」」」」」

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