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5.愁嘆の大地の章-32
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一時間後―――
キャンベル島に到着したガルシア改はナクアの指示に従い、島内三分の二ほどの深さにまで切り込む二本の入り江のうち、南側の長く太い方へ進入した。
入り江を挟む様に両岸にそそり立ち、どこまでも続く急斜面。
特異な形状を成す内陸を、ブリッジの窓から興味深げに眺めるアイザックは、
「まるで巨大な「造船所」だなぁ~」
感嘆の声を漏らすと、陸地に数え切れない程の「黒くうごめく何か」を発見。
「何だアレ!? 鳥……じゃない?」
自席のパネルを操作し、ブリッジ内の大型モニタに拡大表示。
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
映し出されたのは、おびただしい数のアデリーペンギン達。
しかもガルシアに向かい「万歳三唱」しているかの様であった。
その愛らしい姿に、普段はお堅いソフィアとクリストファーが「ふやけ顔」して、
「「カワイイ(ですのぉ)~」」
思わず本音がポロリ。
しかし周囲の冷やかす様なニヤケ視線に慌てて咳払い。
平静を装った少し赤い顔で、
「ソフィア副長。この島にペンギンが居るのは、いささか奇異に思われますの」
「そうですね、クリストファー航海長。ここは慎重に」
今更かしこまって誤魔化す姿にクルー達は苦笑い。
するとナクアがモニタを指差し、
「アレ、みんな、ナクアの部下」
((((((((((なるほどぉ))))))))))
納得してしまってから、自分達の心根にギョッとした。
「普通に納得してる俺達って……」
「ははは……だいぶ染まってるよな……」
自嘲気味にガルシアクルー達が笑っていると、
「艦長、停船、して」
「? お言葉ですがミスナクア、ここは入り江の真ん中で、」
「大丈夫」
被せ気味に言い切るナクアに、艦長がマシューとルークに視線を送ると、二人から頷きが返り、
「分かりました、ミスナクア。操舵長! ガルシア両舷停止ィ!」
「両舷停ぇ~止ぃ、アイアイサァーーー!」
操舵長ジョシュアはスロットルを戻し、微速航行していたガルシア改は程なく停船した。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
静かな入り江のど真ん中、何をする訳でもなく、ただプカプカ浮かぶガルシア改。
すると油断していたアイザックより先、シセが何かに気付き、
「艦長殿ぉ! 下から何か来ます!」
声を上げるが、ナクアが落ち着き払った口調で、
「大丈夫。船、が来ただけ」
((((((((((船ぇ!?))))))))))
ガルシア改の真下から、無数の気泡を海面に上げつつ、何かが浮上して来た。海中から迫り来る影は、ガルシア改の躯体を上回る。
やがて巨大な影の一部と思われる二枚の分厚い壁が海面を突き破り、ガルシア改を挟み込む様に海上にそそり立ち始め、白波は立つも、不思議と船体はさほど揺さぶられない。
海面から完全に持ち上げらるガルシア改。
「こ、これは「ドライドック」なんじゃないのか!?」
クルー達が驚く間も無く、内壁から出て来たアームに固定された。
海面上に姿を現した船は海面下で見えない部分も含めて真横から見ると、ちょうどアルファベットの「C」を上向きにした様な、視力検査の「上向き記号」と言うより、上部に切れ目のある「巨大なチクワ」と言った方が想像し易いであろうか。
スケールの大きさにクルー達が言葉を失う中、ナクアは表情変化少なく満足気に頷くと、
「艦長、ナクア、「改造と補給」の指示、を出して来るぅ」
「わ、分かりました、ミスナクア。よろしく頼みます。此方は修理作業を開始します」
さしもの艦長も面食らい気味。
クルー達の戸惑いもどこ吹く風のナクア。変わらぬ無表情でマシューとルークの手を取り、
「行こぉう」
「「お、おう」」
気後れ気味の二人の手を引き、ブリッジを後にしようとした。
「!」
艦長の脳裏に引っ掛かる「改造」と言うキーワード。
「み、ミスナクア! 改造とはぁ!?」
慌てて引き止めたが、ナクアはいつも通りの無表情で振り返り、
「ナイショ」
一言だけ言い残すと、二人を連れ立ち行ってしまった。
「…………」
呼び止めようと伸ばした手が宙を泳ぎ、呆気に取られる艦長の傍ら、苦笑いのソフィアが歩み寄り、
「彼女には振り回されてしまいますね、艦長」
「う、うむ……」
気持ちを切り替える様に艦長帽の位置を直し、
「まぁ、頼りにはしているのだが……」
帽子のツバの下で武骨に小さく笑い、キャプテンシートに腰を沈めた。
キャンベル島に到着したガルシア改はナクアの指示に従い、島内三分の二ほどの深さにまで切り込む二本の入り江のうち、南側の長く太い方へ進入した。
入り江を挟む様に両岸にそそり立ち、どこまでも続く急斜面。
特異な形状を成す内陸を、ブリッジの窓から興味深げに眺めるアイザックは、
「まるで巨大な「造船所」だなぁ~」
感嘆の声を漏らすと、陸地に数え切れない程の「黒くうごめく何か」を発見。
「何だアレ!? 鳥……じゃない?」
自席のパネルを操作し、ブリッジ内の大型モニタに拡大表示。
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
映し出されたのは、おびただしい数のアデリーペンギン達。
しかもガルシアに向かい「万歳三唱」しているかの様であった。
その愛らしい姿に、普段はお堅いソフィアとクリストファーが「ふやけ顔」して、
「「カワイイ(ですのぉ)~」」
思わず本音がポロリ。
しかし周囲の冷やかす様なニヤケ視線に慌てて咳払い。
平静を装った少し赤い顔で、
「ソフィア副長。この島にペンギンが居るのは、いささか奇異に思われますの」
「そうですね、クリストファー航海長。ここは慎重に」
今更かしこまって誤魔化す姿にクルー達は苦笑い。
するとナクアがモニタを指差し、
「アレ、みんな、ナクアの部下」
((((((((((なるほどぉ))))))))))
納得してしまってから、自分達の心根にギョッとした。
「普通に納得してる俺達って……」
「ははは……だいぶ染まってるよな……」
自嘲気味にガルシアクルー達が笑っていると、
「艦長、停船、して」
「? お言葉ですがミスナクア、ここは入り江の真ん中で、」
「大丈夫」
被せ気味に言い切るナクアに、艦長がマシューとルークに視線を送ると、二人から頷きが返り、
「分かりました、ミスナクア。操舵長! ガルシア両舷停止ィ!」
「両舷停ぇ~止ぃ、アイアイサァーーー!」
操舵長ジョシュアはスロットルを戻し、微速航行していたガルシア改は程なく停船した。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
静かな入り江のど真ん中、何をする訳でもなく、ただプカプカ浮かぶガルシア改。
すると油断していたアイザックより先、シセが何かに気付き、
「艦長殿ぉ! 下から何か来ます!」
声を上げるが、ナクアが落ち着き払った口調で、
「大丈夫。船、が来ただけ」
((((((((((船ぇ!?))))))))))
ガルシア改の真下から、無数の気泡を海面に上げつつ、何かが浮上して来た。海中から迫り来る影は、ガルシア改の躯体を上回る。
やがて巨大な影の一部と思われる二枚の分厚い壁が海面を突き破り、ガルシア改を挟み込む様に海上にそそり立ち始め、白波は立つも、不思議と船体はさほど揺さぶられない。
海面から完全に持ち上げらるガルシア改。
「こ、これは「ドライドック」なんじゃないのか!?」
クルー達が驚く間も無く、内壁から出て来たアームに固定された。
海面上に姿を現した船は海面下で見えない部分も含めて真横から見ると、ちょうどアルファベットの「C」を上向きにした様な、視力検査の「上向き記号」と言うより、上部に切れ目のある「巨大なチクワ」と言った方が想像し易いであろうか。
スケールの大きさにクルー達が言葉を失う中、ナクアは表情変化少なく満足気に頷くと、
「艦長、ナクア、「改造と補給」の指示、を出して来るぅ」
「わ、分かりました、ミスナクア。よろしく頼みます。此方は修理作業を開始します」
さしもの艦長も面食らい気味。
クルー達の戸惑いもどこ吹く風のナクア。変わらぬ無表情でマシューとルークの手を取り、
「行こぉう」
「「お、おう」」
気後れ気味の二人の手を引き、ブリッジを後にしようとした。
「!」
艦長の脳裏に引っ掛かる「改造」と言うキーワード。
「み、ミスナクア! 改造とはぁ!?」
慌てて引き止めたが、ナクアはいつも通りの無表情で振り返り、
「ナイショ」
一言だけ言い残すと、二人を連れ立ち行ってしまった。
「…………」
呼び止めようと伸ばした手が宙を泳ぎ、呆気に取られる艦長の傍ら、苦笑いのソフィアが歩み寄り、
「彼女には振り回されてしまいますね、艦長」
「う、うむ……」
気持ちを切り替える様に艦長帽の位置を直し、
「まぁ、頼りにはしているのだが……」
帽子のツバの下で武骨に小さく笑い、キャプテンシートに腰を沈めた。
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