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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-45

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 余程のショックを受けているのか、チカラなく、床に手を付くジャック。
「アイツは……虫も殺せなかったんだ……。関係ねぇガキに手ぇ掛けるなんて……信じたくなかった……アイツを「あんな風」に変えちまったのは俺だ……俺の責任……」
 うつむいた顔を歪めると、苛立つマリアが床をガァンと踏み鳴らし、
「イライラしますですわぁ! 人に何を言われようが、結局最後に選択するのは本人で、その先に何があろうと、それは本人の責任ですわぁ! 貴方が事故に巻き込もうが、巻き込まいが、遅かれ早かれ弟ちゃんは「歪んだ愛情」に目覚めていましたですわよ!」
「!」
 ハッと顔を上げるジャック。
「な、何ですの、その顔は! べ、別に貴方の為に言ったのではなくてよ! 目の前でウジウジさると、イライラするからですわ!」
 少し赤い顔してプイッと横向くと、
(ツンデレだ、ツンデレ)
(青春だねぇ~)
(甘酸っぱいねぇ~)
 クルー達の聞こえる様なヒソヒソ話に、次第に耳まで赤く染め上げ、我慢がついに突破、
「わたくしデレてなんていませんですわぁーーーーーー!」
 必死過ぎる憤慨に、クルー達から笑いが起こった。
 かつて経験した事の無い、仲間たちの気遣い。
 ジャックはどんな顔をすれば良いのか分からず、照れ臭さを誤魔化す為、
「チッ」
 舌打ちして横向くと、艦長が凛然とした表情で見下ろしていた。
「…………」
「如何な理由があれど、襲撃者の逃走を手助けした件、本艦の長として、看過する訳にはいかない」
「へっ……わぁてるよぉ……」
 立ち上がり、ズボンの埃を払い落とすジャックと、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 事の成り行きを見守るしかないヤマト達とガルシアクルー達。
「申し訳ないが、ジャック君。君には軍律違反の懲罰が確定するまで、営倉に入ってもらうが、よろしいかね?」
「あぁ……好きにしな」
 背中に哀愁漂わすジャックはブレイクに連れられ船底へと姿を消し、その日のうちに開かれたガルシア幹部クラスの会議により、懲罰は情状を考慮、営倉送り二週間となった。

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