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青木 森

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7.岐路の章_41

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 その頃シャーロットとナヤスは、取り囲む兵士達を相手に、素手で大乱闘を繰り広げていた。と言っても相手は生身の兵士。戦いは一方的で蹂躙行為に等しく、命まで奪ってはいないものの、二人は重傷者の山を築いていた。
 ビルから飛び出すジャックとマリア。
 未だ戦闘中の二人を見つけるや否や、
「いつまで(兵士と)じゃれてやがる、脳筋姉妹!」
「用は済みましたわ! 増援が来る前に、おバックレになりますわよ!」
 ナヤスは呼び声に振り返り、暴れ続けるシャーロットに仄暗い表情のまま、
「撤収ですよ、馬鹿姉」
「にゃあ!」
 シャーロットは満面の笑顔で振り返ると、片手で軽々掴み上げていた兵士を、対峙する兵士達に向かって放り投げ、
「「「「「「「「「「うわぁあぁっぁぁ!」」」」」」」」」」
 兵士達が将棋倒しになる中、
「分かったにゃ!」
 マリア達と基地からの脱出を図ったが、走り出した瞬間、
『フハハハハハハハハハ! 何処へ行くぅ!』
「「「「!」」」」
 行く手を塞ぐように仁王立ちする、高笑いの大男に四人は足を止め、
((((炎神ムムスカムア……))))
 揃ってウンザリ顔。
 シャーロット、ナヤスと同じ赤銅色の髪とブラウンアイを持ち、はち切れんばかりの大胸筋を見せ付ける様に立つ、暑苦しい笑みを浮かべた筋骨隆々の大柄な男は、二人の実の兄であり、マリアとジャックが以前に話していた、北アメリカ大陸のスティーラー兼国王であった人物である。
「久しいなぁ、我が最愛の妹達よぉ! そして誰かと思えば「二面の死神」と「狂気神」ではないかぁ!」
((((相変わらず、暑ウザイ……))))
 四人が足を止める間に、兵士達は増員に増員を加え、数を増し、
「ムムスカムア殿が、逃げ道を塞いでくれているぞ!」
「囲めぇ! 囲むぇ!」
 前門のムムスカムアに、後門の兵士達。
 前と後ろで挟まれた状況下であったが、ジャックは小馬鹿にした笑みを浮かべ、
「未だに妹の尻を追いかけ回してるのかぁ? この脳筋シスコンがぁ!」
 しかしムムスカムアは歯牙にかけた様子も見せず、
「フハハハハハ、黙れぇ最下位。皇太子の尻を追っていただけの、奥手な、万年片想いブラコンの貴様如きと一緒にするなぁ!」
「んだと、コラッ!」
 挑発したつもりが、逆に挑発に乗るジャックに、
「はぁ~」
 呆れ顔するマリア。
 ムムスカムアは鼻の下を伸ばしきった笑顔で、妹達を上から下まで舐め回すように見つめ、
「今日こそ良い返事を聞かせてもらえるかぁ? 「アム(シャーロットの旧名)」、「ルム」我が愛しの妹達よ。どちらが俺様のルムア(妻)になってくれるか結論は……なんなら二人一緒でも構わんぞぉ」
 暑苦しさを増す笑顔に、悪寒を感じるシャーロットとナヤス。
 シャーロットは引きつった満面の笑顔で、
「ウチの名はシャーロットにゃ! 脳まで筋肉の人となんてゴメンにゃあ!」
 ナヤスも引きつった仄暗い表情で、
「ウッチの名はナヤスでぇす。暑苦しいのはゴメンでぇす」
 求婚を断固拒否。
 しかしムムスカムはめげた様子も見せず、
「フハハハハ! 相変わらず二人は照れ屋だなぁ! 素直に! 俺様の胸に飛び込んでくれて良いのだぞぉ!」
((ひぃいぃぃぃぃぃ!))
 全身にジンマシンが出来る様な、おぞましい嫌悪感を感じる二人。
 すると呆れ果てたマリアが、
「相変わらずの妹大好き男ですわねぇ」
 皮肉を言ったつもりが、
「フハハハハ、妬くな妬くな二面の死神ぃ! 妾の枠なら空いておるぞぉ!」
 いたって本気の笑顔に、
 イラッ!
(こぉ、のぉ、自信過剰ナルシス脳筋はァ!!)
 ブッチ切れ寸前であったが、マリア以上に怒りを露わにする人物がいた。
「テメェッ、ざけんなァ!」
 ジャックである。
 自覚があるかは不明だが、マリアを軽い女の様に扱った発言に表情を一変させ、
「調子乗ってんじゃねぇ! 人さらいなんぞと手ぇ組んで、落ちぶれやがってぇ!」
「フハハハハハ、何を言い出すかと思えば! 人さらいなど、俺様の知った事ではないのだよ、最下位ィ!」
「あぁ? どう言う意味だ!」
「奴等には妹を探し出させ、俺様はその間、チカラを貸す。単なる利害の一致なのだよ!」
「「!」」
 ハッとするシャーロットとナヤス。
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